2024年度東京都立新宿高校の入試では、漢字の読み書き・文学的文章・論理的文章・論理的文章(和歌含む)の4題構成になっています。
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記事の監修者:五十嵐弓益(いがらし ゆみます)
【全国通信教育】最短合格オンラインのスカイ予備校 校長
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大問1(漢字の読み書き)
〈解説〉
「雑炊」・「累卵」・「更迭」・「玩弄」の読み、「裏腹」・「朗報」・「師事」・「一陽来復」の書き取りが出題された。
大問2(文学的文章)
木内昇『かたばみ』からの出題です。
〈解説〉
〔問1〕語句の意味(選択肢)
「やみくもに」と「太鼓判を捺した」の語句の意味が出題された。
〔問2〕内容読解(選択肢)
「啓太と清太が野球の話をしている」様子を見て「悌子の胸は、光の粒でいっぱいにな」っている。
さらに「戦中のつらい日々を越え」たことを喜びつつ、「自分が歩んできた道は、きっと誰にも真似できない尊いものなのだという妙な自信」を抱いている。
そして、「笑っている権蔵を見詰め」て「自然と笑みをこぼ」しているのである。
アは、「啓太と清太」に触れていない。また、「家族を明るく引っ張っている」が誤り。イは、本文からは読み取れない。
エは、悌子自身のことしか書いていない。また、「過去の自分に別れを告げることができた」は誤り。
〔問3〕理由説明(選択肢)
悌子が「権蔵に目を向け」ると、その意図を汲み取ったかのように権蔵は「引き締まった表情」で清太をキャッチボールに誘っている。
権蔵は、「清太が家に戻ったのちも、早朝に近くの空き地まで行って練習を続け」ていたのである。
〔問4〕心情理解(選択肢)
「キャッチボール、朝子さんたちも呼びましょうか」と提案する悌子に対し、権蔵は「親子でしっかり投げ合いたい」と返答している。
また、「こそばゆ」いというのは、ここでは照れくさそうにする様子を表している。
〔問5〕心情理解(選択肢)
「元からこのくらい投げられた」と言う権蔵が「虚勢を張」っていることを、悌子も清太もわかっている。清太が「笑って」悌子の方を見たのに合わせて、同じように「笑って」いることから考える。
〔問6〕心情理解(選択肢)
傍線部の「父さんとキャッチボールしたい」という思いに近いのはアとウである。ウは、清太が父を単なる練習相手としか思っていないことになるので、誤り。
〔問7〕本文の内容と表現(選択肢)
アは、「様々な登場人物の心の動きを詳しく描くことで、物語を多面的に表現している」が誤り。イは、「茶々を入れて」が誤り。「茶々を入れて」いるのは権蔵である。
エは、「戦後の解放感」が誤り。
大問3(論理的文章)
池上俊一『歴史学の作法』からの出題です。
〈解説〉
〔問1〕内容読解(選択肢)
歴史的事実は、「『想起の共同体』に支えられて個人的記憶の欠落や記憶違い」が「補填・修正され、またこうした共同作業を通じて構成され」る。
また、歴史的事実が確定するのは、「同一過去には多様な相・現れがあると皆が意識してそれらが調和的に統一されるとき」である。そして、傍線部直前の「普遍性と抽象性を獲得し、独立し」ている点を押さえればよい。
アは、「複数の歴史家」・「『事実』が同一過去をもつ」・「村や国の私的領域」がそれぞれ誤り。イは、「最も妥当な『事実』を選び出していく」が誤り。
ウは、「インパーソナルな次元を超えた」が誤り。
〔問2〕内容読解(抜き出し)
「歴史家」が「公的な歴史を描」くときに問題になるのが、「歴史観」であると筆者は述べている。歴史観は「同時代人に共有されうる装置」であり、「必ずしも固定したものではなく、時間の経過とともに過去との個人的・集団的対話を介して変容していく」ものである。
第七段落で述べられているように、「歴史は予見できる未来や目標に向かっているとはもはやいえなくなったとしても、~その上で出来事を読み解き評価していくしかない」のである。
〔問3〕理由説明(選択肢)
「発展段階説や進歩史観に則った法則」には「イデオロギー性」があり、それを「批判するのが現在の大方の歴史学者の態度である」と述べられている。そうした「イデオロギー性」をもつ歴史とは「国民国家やエリート層、そしてその発展の段階を画する政治的事件や制度をテーマとする発展史」にほかならず、そのなかで「無視されたり阻害要因と位置づけられたりした」のが、女性史や民衆史であった。
〔問4〕内容読解(選択肢)
傍線部4の段落内容を押さえればよい。
①「歴史はいつの時点を取っても偶然性に満ちてい」る
②それでも歴史家は「過去が現在と未来へと意味深く結ばれるよう、その叙述によって組織化しなければならない」
③「そうすれば、その時々の出来事の発展の様が~明瞭に洞察されたものになる」ウは「偶然性」を歴史そのものではなく、歴史家の営為に見出している点が誤り。
〔問5〕理由説明(選択肢)
筆者は、「『パースペクティブ』の考え方によりふさわしいのは、『進歩』ではなく『発展』という概念・カテゴリー」であると述べた直後、それが「一筋の糸ではなく、もろもろの糸が初段階を経て~出来事の意味と価値を吟味する」ことだと説明している。
つまり、単一的な物事を相手にするのではなく、複層的な物事を相手にする必要があるということである。
〔問6〕内容読解(選択肢)
アは、「個人の具体的な例を挙げ」が誤り。
イは、「歴史家に共通して見方としての『歴史観』というものを否定し」が誤り。
ウについて、「使ってはならない」とまでは筆者は述べていない。また、「歴史を『道筋』とする考え方にも難点があって成立しない」も誤り。
〔問7〕作文(200字記述)
設問文にある「ここでの『進歩』」とは、「時間の経過とともに価値が向上する」という意味である。直後で挙げられている「技術や自然科学のもたらす恩恵」について具体例を挙げつつ、点線部の筆者の考えに同意する方向でまとめるのが書きやすい。
大問5(論理的文章+俳句)
小川靖彦『万葉集と日本人』からの出題です。
〈解説〉
〔問1〕内容読解(選択肢)
Aで述べられているように、「『万葉集』を『読む』ためには、漢字で書かれた原文(漢字本文)を解読して、歌の〈ことば〉を再現することがまず必要とな」る。
そしてその「読む」行為は、Bで述べられているように、「『解釈』を伴う創造的な行為」である。
Cで述べられているように、「『新古今和歌集』の撰者たち」は、「時間性を強く持つとともに、その時間を、鮮やかな空間表現が生き生きと感じさせるような読み下しを意識的に選」んだ。
その読み下しによって『万葉集』の解釈がなされた、ということである。
〔問2〕内容読解(選択肢)
「たをやめの~」の歌を取り上げ、筆者は「定家にとって、〈古代〉の情景ははるか遠くにあって偲ぶものであった」と評している。
〔問3〕現代かなづかい(記述)
「たをやめの 袖かもみぢか 明日香風 いたづらに吹く 霧の遠方」が出題。
「を」を「お」に、「ぢ」を「じ」に、「づ」を「ず」に改めればよい。
〔問4〕理由説明(選択肢)
「書写を繰り返す中で、これを自分の見解に基づく新しい姿に変えて」いき、「常にその時の自分の最新の見解を加えて、これらの『古典』の本文を定めていった」と述べられている。
〔問5〕内容読解(抜き出し)
定家が『万葉集』の編纂についての「『栄花物語』の説(=諸兄が編纂に携わっているとする説)」を批判したのは、「『万葉集』そのものに当た」った結果、「『万葉集』には諸兄没後の歌も収められている」ことがわかったからである。
〔問6〕内容読解(選択肢)
傍線部4の次の段落に着目しよう。 「定家は、宮廷や貴族が武士に政治的実権を奪われてゆく中で、『古典』を精神の拠り所としたのであり、『古典』を完備することによって文化の源泉であろうとした」と説明されている。