はじめに――結論部分が合否を左右する理由
大学入試や推薦入試で求められる小論文において、多くの受験生が最も苦手とするのが「結論部分」です。序論で問題提起をし、本論で論拠を展開できても、最後の結論で失速してしまい、せっかくの良い内容が台無しになるケースは珍しくありません。
採点者は一日に何十枚、何百枚もの答案を読みます。その中で印象に残る答案とは、最後まで論理が一貫し、説得力のある結論で締めくくられているものです。結論部分は「答案全体の印象を決定づける最後のチャンス」であり、ここでの完成度が合否に直結すると言っても過言ではありません。
本記事では、小論文の結論部分に特化し、採点者の評価基準から逆算した実践的なテクニックを徹底解説します。単なる「書き方のコツ」ではなく、実際に合格答案を生み出すための具体的な戦略をお伝えします。
1. 結論部分の役割と評価基準を理解する
結論部分で採点者が見ているポイント
採点者が結論部分で重視するのは、以下の5つの要素です。
①論理的一貫性
序論で示した問題提起と、本論での論証が、結論でしっかりと回収されているか。話が途中で逸れたり、結論だけ別の主張になっていないかがチェックされます。
②簡潔性と明確性
冗長な表現や曖昧な言い回しを避け、端的に主張をまとめる力が問われます。「つまり何が言いたいのか」が一読で理解できることが重要です。
③発展性・展望の提示
問題解決の提案や、今後の課題への言及があるか。単なるまとめに終わらず、思考の広がりを示せているかが評価されます。
④客観性の維持
感情的な表現や独善的な主張に陥らず、論理的かつ客観的な姿勢を保っているか。
⑤文章としての完結性
結論を読んだだけで、論文全体の主旨が理解できる構成になっているか。
これらの基準を満たす結論を書くことで、採点者に「この受験生は論理的思考力がある」と評価されるのです。
2. 結論部分の文字数配分と時間配分の黄金比
全体の何割を結論に充てるべきか
小論文全体を100%とした場合、理想的な配分は以下の通りです。
- 序論:15〜20%
- 本論:60〜70%
- 結論:15〜20%
例えば800字の小論文なら、結論部分は120〜160字程度が適切です。1200字なら180〜240字、2000字なら300〜400字を目安にしましょう。
試験時間における結論作成の時間配分
60分の試験時間を想定した場合、以下のような時間配分が効果的です。
- 構想・メモ作成:10分
- 序論執筆:5分
- 本論執筆:30分
- 結論執筆:10分
- 見直し・推敲:5分
結論部分に10分程度を確保することで、慌てずに論理的なまとめを書くことができます。時間が足りなくなって結論を省略したり、雑に書いてしまうことは絶対に避けましょう。
3. 結論の基本構造――3ステップで完成させる
効果的な結論は、以下の3つのステップで構成されます。
ステップ1:結論の明示(1〜2文)
まず、論文全体の主張を簡潔にまとめます。接続詞「以上のことから」「これらの理由から」「したがって」などを用いて、結論部分であることを明確にします。
例文:
「以上のことから、地域医療の充実には、医療従事者の確保と地域住民の健康意識向上の両輪が不可欠である。」
ステップ2:論拠の要約(2〜3文)
本論で展開した主要な論点を簡潔に振り返ります。ただし、本論の繰り返しにならないよう、エッセンスだけを抽出することがポイントです。
例文:
「医師の地方勤務を促進する制度的支援と、住民自身が予防医療の重要性を理解し実践する環境整備が求められる。両者が相互に作用することで、持続可能な医療体制が構築できる。」
ステップ3:展望・提言(1〜2文)
今後の課題や、問題解決に向けた提言を示します。ここで「私たち一人ひとりが」といった抽象的な精神論ではなく、具体的な方向性を示すことが高評価につながります。
例文:
「今後は、ICT技術を活用した遠隔医療の拡充と、学校教育における健康リテラシー向上プログラムの導入が、実効性のある施策として期待される。」
4. テーマ別・結論の書き分け方
小論文のテーマによって、結論の書き方も変わります。代表的なパターンを紹介します。
【問題解決型】社会問題への対策を論じる場合
結論では「誰が・何を・どのように実行すべきか」を具体的に示します。
例:
「プラスチックごみ問題の解決には、企業による代替素材の開発、行政による規制強化、消費者の意識改革という三層のアプローチが必要である。特に行政は、使い捨てプラスチック製品への課税制度を導入し、企業のイノベーションを促すべきだ。」
【比較検討型】複数の立場を比較する場合
どちらの立場にも一定の妥当性を認めつつ、自分の立場を明確にします。
例:
「死刑制度の存廃については、犯罪抑止効果と冤罪リスクの両面から慎重な議論が必要である。現状では、終身刑制度の整備と司法制度の透明性向上を優先し、死刑適用を極めて限定的にする段階的アプローチが現実的であろう。」
【課題発見型】問題点の分析を求められる場合
問題の本質を指摘し、今後の研究や議論の方向性を示します。
例:
「若者の政治的無関心の背景には、政治教育の不足と実生活との乖離がある。この問題を解消するには、学校教育における主権者教育の充実と、若年層が政策形成に参画できる仕組みづくりが不可欠である。」
5. よくある失敗パターンと改善策
失敗例1:新しい論点を持ち込む
NG例:
「以上のことから、環境問題の解決が重要である。また、教育改革も同時に進めるべきだ。」
→ 結論で突然「教育改革」という新要素が登場しており、論理的一貫性が失われています。
改善策:
結論では本論で展開した内容のみを扱い、新しい論点は持ち込まないこと。
失敗例2:個人的感想で締めくくる
NG例:
「私はこの問題について考えることで、多くのことを学んだ。これからも学び続けたい。」
→ 採点者が求めているのは「あなたの成長物語」ではなく、「問題に対する論理的な結論」です。
改善策:
主観的な感想ではなく、客観的な提言や展望で締めくくる。
失敗例3:曖昧な表現で逃げる
NG例:
「この問題は複雑であり、簡単に答えは出せない。様々な立場から議論を深めることが大切だろう。」
→ 何も言っていないのと同じです。採点者は「逃げている」と判断します。
改善策:
たとえ難しいテーマでも、自分なりの明確な立場を示す勇気を持つこと。
6. 結論部分の推敲チェックリスト
結論を書き終えたら、以下の10項目をチェックしましょう。
- 序論の問いに対する答えになっているか
- 本論の内容と矛盾していないか
- 新しい論点を持ち込んでいないか
- 個人的感想に終始していないか
- 「〜と思う」「〜かもしれない」など曖昧な表現を避けているか
- 接続詞を適切に使用しているか
- 文字数配分は適切か(全体の15〜20%)
- 具体性のある提言や展望を示しているか
- 論理的な飛躍がないか
- 誤字脱字はないか
すべてにチェックが入れば、合格レベルの結論が完成しています。
7. 採点者が唸る「印象に残る結論」の作り方
テクニック1:数値や固有名詞で具体性を高める
「対策が必要だ」ではなく、「2030年までにCO2排出量を50%削減する目標を掲げ、再生可能エネルギー比率を40%に引き上げるべきだ」のように、具体的な数値を示すと説得力が増します。
テクニック2:対比構造で印象を強める
「〜ではなく、〜である」という対比構造を使うことで、主張が際立ちます。
例:
「問題の根本的解決には、一時的な支援策ではなく、持続可能な制度設計が求められる。」
テクニック3:問いかけで思考の広がりを示す
最後に問いかけで締めくくることで、読者(採点者)に思考の継続を促します。
例:
「この施策が真に効果を発揮するには、社会全体の価値観の転換が不可欠ではないだろうか。」
おわりに――結論部分の完成度が合否を分ける
小論文の結論は、単なる「まとめ」ではありません。それまでの論証を昇華させ、採点者に強い印象を残す、答案全体のクライマックスです。
本記事で紹介した「3ステップ構造」「文字数・時間配分の黄金比」「テーマ別書き分け」「推敲チェックリスト」を活用すれば、どんなテーマの小論文でも説得力のある結論を書けるようになります。
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