試験実施日:2023年11月18日(土)
試験時間:90分
解答形式:400字詰原稿用紙3枚(1,000字程度)

記事の監修者:五十嵐弓益(いがらし ゆみます)
【全国通信教育】最短合格オンラインのスカイ予備校 校長
■小論文指導歴27年
これまでに指導した生徒は4000人以上、独自のSKYメソッドを考案で8割取る答案の作り方を指導。
2020年4月から、完全オンラインの大学受験予備校となる。過去3年間で国公立大学合格125名。
高1から入会者は国公立大学合格率93%
高2から入会者は国公立大学合格率86%
高3の4月から入会者は国公立大学合格率73%。
スカイ予備校の指導方針は、「大人になっても役に立つ勉強法の習得」です。「自分の人生は自分で切り拓く」教育をします
📝 問題文(全文)
問題 次の文章を読み、問に答えよ。
鉄道の赤字線区の廃止や路線バスの減便など、ここ数年来、地方都市の公共交通は苦境に立たされている。交通事業者の利益が落ち込む中で、鉄道や路線バスといった公共交通の維持を民間の事業者の営業努力に委ねることの限界が明らかになった一方で、利用者減少が明らかな公共交通を公的助成によって維持することに地域社会の合意を得ることもまた容易ではない。高齢者や若者といった公共交通機関に頼らざるを得ない比較的少数の人々のために、地方公共団体の限られた財源を投じて、公共交通を維持することには、必ずしも市民全体の同意を得られないからである。この社会的合意に向けた考え方の一つとして、鉄道やバスといった公共交通の存在価値を、社会的便益に結びつけて考える議論がある。ここでいう社会的便益とは、公共交通機関の利用者にとって、安価であるとか、所要時間の短縮になるといった便益だけでなく、周辺地域や社会に対して、公共交通の存在が提供している価値のことを言う。
【設問】
社会的便益とは具体的にどんなものが考えられるかを示した上で、地方都市における公共交通の持続可能なあり方について、あなたの考えを1,000字程度で述べなさい。
🎯 出題意図の分析
この問題で問われている力
- 読解力:問題文から論点を正確に把握する力
- 知識・教養:地域課題や経済学的概念についての理解
- 論理的思考力:抽象概念(社会的便益)を具体化する力
- 課題解決力:持続可能な方策を提案する力
- 表現力:限られた字数で説得力ある文章を構成する力
経済学部の入試として重要な視点
- **外部経済効果(外部性)**の理解
- 市場の失敗と公共財の概念
- 費用便益分析の視点
- 地域経済・社会政策への関心
📊 問題構造の分解
第一課題:「社会的便益とは具体的にどんなものが考えられるかを示す」
ポイント
- 「具体的に」がキーワード → 抽象論ではなく実例を挙げる
- 複数の視点から列挙することが望ましい
- 問題文の定義を踏まえる(利用者便益 vs 社会的便益)
第二課題:「持続可能なあり方について、あなたの考えを述べる」
ポイント
- 「持続可能」= 長期的に維持できる仕組み
- 「あなたの考え」= 独自の視点・提案が求められる
- 第一課題で挙げた社会的便益と論理的につながっているべき
全体のバランス
- 第一課題:300~400字
- 第二課題:500~600字
- 序論・結論:合わせて100~200字
💡 社会的便益の具体例(必須知識)
1. 環境面の便益
- CO2排出量削減:自家用車に比べて一人当たり排出量が少ない
- 大気汚染の抑制:NOx、PM2.5などの削減
- 騒音の低減:鉄道は自動車よりも静か
- エネルギー効率:輸送効率が高い
使える具体例 「国土交通省のデータによれば、旅客1人を1km運ぶ際のCO2排出量は、自家用車が約130gに対し、鉄道は約20gと約6分の1である」
2. 経済面の便益
- 地域商業の活性化:駅・バス停周辺の商店街への集客効果
- 雇用創出:運転手、駅員、関連サービス業
- 労働力の確保:通勤手段の提供により企業の人材確保が可能
- 地価の維持:駅周辺の不動産価値
- 観光振興:観光客の移動手段、二次交通の確保
使える具体例 「駅が廃止された地域では商店街の売上が平均30%減少したという調査結果もある」
3. 社会面の便益
- 移動権の保障:高齢者、障がい者、免許非保有者の社会参加
- 医療アクセス:通院手段の確保、救急時の移動
- 教育機会の均等:学生の通学手段
- 社会的孤立の防止:外出機会の創出、コミュニティ維持
- 社会的公平性:所得に関わらず移動できる権利
使える具体例 「高齢化率30%を超える地域では、運転免許返納後の移動手段として公共交通が生命線となっている」
4. 都市計画面の便益
- コンパクトシティの実現:公共交通軸に沿った都市構造
- 道路渋滞の緩和:自動車交通量の削減
- 駐車場問題の軽減:都心部の土地有効活用
- 中心市街地の空洞化防止:人の流れの維持
- インフラコストの削減:市街地の無秩序な拡散防止
使える具体例 「富山市のLRT導入は、沿線居住人口の増加とコンパクトシティ政策の成功例として知られる」
5. 防災・安全面の便益
- 災害時の代替輸送:道路寸断時の移動手段
- 交通事故の削減:高齢ドライバーの事故防止
- 避難手段の確保:緊急時の大量輸送能力
- 緊急物資輸送:災害時のライフライン
📐 答案構成例(合格レベル)
【序論】(100~150字)
- 地方公共交通が直面する課題の確認
- 社会的便益の視点から考える必要性の提示
例文の方向性 「地方公共交通の維持には民間の営業努力だけでは限界があり、一方で公的支援への市民の合意形成も困難である。この課題を解決するには、公共交通がもたらす社会的便益を多角的に捉え、それを踏まえた持続可能な仕組みを構築する必要がある。」
【本論①:社会的便益の具体化】(300~400字)
構成パターンA:分野別に列挙
第一に、環境面では…
第二に、経済面では…
第三に、社会面では…
第四に、都市計画面では…
構成パターンB:直接的便益→間接的便益
直接的な利用者便益に加えて、
間接的には地域全体に…
さらに長期的には…
重要ポイント
- ✅ 3~5つの具体例を挙げる
- ✅ 各例に簡潔な説明を加える
- ✅ 可能なら数字・データ・事例を入れる
- ❌ 羅列だけで終わらない(それぞれ2~3文で説明)
評価されるポイント
- 多角的視点(環境・経済・社会など複数分野)
- 具体性(抽象論に終わらない)
- 経済学的概念(外部経済、公共財など)の理解
【本論②:持続可能なあり方の提案】(400~500字)
提案の切り口(以下から2~3つ選択)
① 財源確保の工夫
- 受益者負担の明確化(観光税、企業負担、駐車場税など)
- 国・県の補助金活用
- クラウドファンディング、ふるさと納税の活用
② 運営効率化・イノベーション
- デマンド交通の導入
- MaaS(統合型モビリティサービス)の活用
- AI・ICTによる最適運行
- 複数事業者の連携・統合
- 上下分離方式(インフラと運営の分離)
③ 利用促進策
- パーク&ライド、サイクル&ライド
- 運賃体系の見直し(定額制、高齢者割引)
- 観光客向けフリーパス
- 企業・学校との連携
④ まちづくりとの連動
- 公共施設の公共交通沿線への集約
- 居住誘導区域の設定
- 駅・バス停周辺の再開発
- LRT・BRTなど新交通システムの導入
⑤ 市民参加・合意形成
- 社会的便益の「見える化」
- 住民参加型の運営(地域運営交通)
- 交通政策への市民参画
- 教育・啓発活動
構成の型
持続可能な公共交通には、第一に〇〇が必要である。具体的には…
第二に△△の視点も重要である。例えば…
さらに、これらを実効性あるものとするため、□□が不可欠である。
重要ポイント
- ✅ 実現可能性のある提案
- ✅ 「どうやって実現するか」まで踏み込む
- ✅ 第一課題(社会的便益)と論理的につなげる
- ❌ 理想論だけで終わらない
- ❌ 「協力すべき」「努力すべき」など抽象的表現の多用
【結論】(100~150字)
盛り込むべき要素
- 社会的便益を踏まえた公共交通の意義の再確認
- 地域全体で支える必要性
- 将来世代への責任
- 前向きな展望
例文の方向性 「公共交通は単なる移動手段ではなく、地域社会を支える重要な基盤である。その社会的便益を正しく評価し、多様な財源と知恵を結集することで、地域全体で支える持続可能な仕組みを構築することが求められる。」
🏆 高得点答案のポイント
✅ 内容面
【必須】基本を押さえる
- 問題文の要求に正確に答えている
- 社会的便益の具体例が複数示されている
- 持続可能な方策が提案されている
- 論理的な流れがある
【加点】一歩進んだ内容
- 経済学的概念(外部経済、市場の失敗、公共財など)への言及
- 具体的な数字・データ・事例の引用
- 多角的視点(環境・経済・社会・都市計画など)
- 独自の視点・オリジナリティのある提案
- 旭川市や北海道の地域特性を踏まえた議論
✅ 構成面
明確な構成
- 序論・本論・結論の三部構成
- 本論は2つの課題に明確に対応
- 段落分けが適切(3~5段落)
- 各段落の役割が明確
論理的展開
- 接続詞の適切な使用(第一に、一方で、さらに、したがって等)
- 因果関係が明確
- 主張と根拠がセットになっている
- 第一課題と第二課題がつながっている
✅ 表現面
読みやすい文章
- 一文が長すぎない(60~80字以内)
- 主語と述語が明確
- 専門用語は適切に使用(使いすぎない)
- 同じ表現の繰り返しを避ける
適切な文体
- 「である調」で統一
- 口語表現を避ける
- 断定的すぎない表現(~と考えられる、~であろう)
- 感情的な表現を避ける
⚠️ よくある失敗パターン
❌ 内容面のNG
1. 社会的便益の具体化が不十分
- 「環境に良い」だけで終わる(どう良いのか説明がない)
- 抽象的な表現の羅列
- 例が1~2個しかない
2. 問題文の理解不足
- 利用者便益と社会的便益の区別ができていない
- 「社会的便益とは何か」の説明で終わり、具体例がない
3. 一面的な議論
- 「維持すべき」or「廃止やむなし」の二者択一
- 経済的側面だけ、または社会的側面だけに偏る
- 反対意見への配慮がない
4. 実現性のない提案
- 「みんなで協力すれば解決する」などの精神論
- 財源の裏付けがない施策
- 「国が全額負担すべき」など他力本願
❌ 構成面のNG
5. 構成の崩れ
- 序論がなくいきなり本論
- 結論がない(時間切れ)
- 第一課題と第二課題の区別が不明確
6. 論理の飛躍
- 主張と根拠がつながっていない
- 「したがって」の前後が論理的につながらない
- 第一課題で挙げた便益と第二課題の提案が無関係
❌ 表現面のNG
7. 文章表現の問題
- 一文が150字を超える長文
- 主語が不明確
- 「思います」「感じます」の多用
- 話し言葉(「やっぱり」「ちょっと」など)
8. 字数の問題
- 800字未満(内容不足と判断される)
- 1,200字超(指定を守れていない)
- 原稿用紙の使い方の間違い
📚 知識補強のための参考資料
押さえておきたいキーワード
経済学関連
- 外部経済効果(外部性)
- 市場の失敗
- 公共財
- 費用便益分析
- 社会的余剰
交通政策関連
- 交通権(移動する権利)
- 地域公共交通活性化再生法
- コンパクトシティ
- 上下分離方式
- LRT(次世代型路面電車)
- BRT(バス高速輸送システム)
- MaaS(Mobility as a Service)
- デマンド交通
社会政策関連
- 交通弱者
- 移動制約者
- 高齢化社会
- 持続可能な開発目標(SDGs)
- カーボンニュートラル
参考になる事例
成功例
- 富山市:LRT導入とコンパクトシティ政策
- 京都市:バス一日券による観光客利用促進
- 岡山県:デマンドバスの先進的導入
課題のある事例
- JR各社の赤字ローカル線問題
- 地方バス路線の撤退
⏰ 時間配分の目安(試験時間90分)
| 段階 | 時間 | 内容 |
|---|---|---|
| 問題読解・構想 | 15分 | ・問題文を2回読む ・設問を確認 ・アイデア出し ・構成メモ作成 |
| 下書き | 10分 | ・序論と結論を固める ・本論の骨子を確認 (時間がなければ省略可) |
| 清書 | 55分 | ・丁寧に書く ・字数を意識 ・段落を明確に |
| 見直し | 10分 | ・誤字脱字チェック ・論理の確認 ・字数確認 |
時間管理のコツ
✅ 構想段階を省略しない
- いきなり書き始めない
- 5分でもいいのでメモを作る
✅ 清書は60分以内に
- 1枚15~18分ペース
- 3枚で50~55分
✅ 見直し時間を確保
- 最低5分は残す
- 致命的なミスを防ぐ
💯 模範解答の構成例
パターンA:分野別・施策別構成
【序論】
地方公共交通の課題と社会的便益の視点の重要性(100字)
【本論①】
社会的便益の具体例
・環境面(CO2削減)
・経済面(地域活性化)
・社会面(移動権保障)
・都市計画面(コンパクトシティ)(350字)
【本論②】
持続可能なあり方
・財源確保の工夫
・運営効率化
・まちづくりとの連動(450字)
【結論】
社会的便益の認識共有と地域全体で支える必要性(100字)
パターンB:問題→解決型構成
【序論】
公共交通維持の困難さと本質的課題(100字)
【本論①】
なぜ維持すべきか=社会的便益の多面性
・環境・経済・社会の3視点から(300字)
【本論②】
どう維持するか=具体的方策
・短期的施策(利用促進)
・中長期的施策(まちづくり連動)
・合意形成の重要性(500字)
【結論】
持続可能な地域交通の実現に向けて(100字)
🎓 講師からのアドバイス
この問題の「解きやすさ」
難易度:中程度
- テーマは時事的で身近
- 専門知識がなくても常識で書ける
- 一方で、差をつけるには知識と論理力が必要
対策のポイント
1. 新聞・ニュースで時事問題に触れる
- 地方創生、人口減少、高齢化などの記事
- 実際の廃線・減便のニュース
- 成功事例の報道
2. 経済学の基礎概念を理解する
- 教科書の「市場の失敗」「外部性」の章を読む
- 公共財について学ぶ
3. 小論文の「型」を身につける
- 序論・本論・結論の基本構成
- 論理的な接続の仕方
- 具体例の盛り込み方
4. 実際に書いて添削を受ける
- 時間を計って書く練習
- 第三者に読んでもらう
- 複数パターンの構成を試す
📝 最後に:この問題から学べること
旭川市立大学のこの小論文問題は、単なる知識の暗記では対応できない、思考力と表現力を総合的に問う良問です。
地方都市が直面する現実的な課題を題材に、
- 経済学的思考(外部性、公共財)
- 多角的視点(環境・経済・社会)
- 課題解決力(具体的提案)
- 論理的表現力
これらすべてを求めています。
この問題に真摯に取り組むことは、入試対策だけでなく、大学での学びの準備、そして社会に出てからの問題解決力の基礎を築くことにつながります。
ぜひ何度も書いて、推敲して、自分なりの「最良の答案」を作り上げてください。


