大学入学試験における学校推薦型選抜。その中でも多くの高校生が利用する形式が「公募推薦」と「指定校推薦」です。これらは総合型選抜と並ぶ特別選抜の一種です。推薦受験での志望校を決めるにあたって、どちらの受験方式にするか決めるために、まずその違いをしっかり理解し、早くから計画的に準備を進めることが重視されます。
この記事では公募推薦と指定校推薦の違いとそれぞれの流れ、合格する確率の違い、また、推薦をもらうためにはどうしたらいいのかを、メリット・デメリットも加えて解説します。
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推薦受験での大学進学を考えている場合、早くから方向性を決めておくことが大事です!

記事の監修者:五十嵐弓益(いがらし ゆみます)
【全国通信教育】最短合格オンラインのスカイ予備校 校長
■小論文指導歴27年
これまでに指導した生徒は4000人以上、独自のSKYメソッドを考案で8割取る答案の作り方を指導。
2020年4月から、完全オンラインの大学受験予備校となる。過去3年間で国公立大学合格85名。
高1から入会者は国公立大学合格率93%
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高3の4月から入会者は国公立大学合格率73%。
スカイ予備校の指導方針は、「大人になっても役に立つ勉強法の習得」です。「自分の人生は自分で切り拓く」教育をします
推薦入試の種類は?

学校推薦型の推薦入試には「公募推薦」と「指定校推薦」の2種類があります。 主な違いは
- 合格する確率
- 高校での校内選考(審査)があるかないか
- 各大学の選択の幅 の3つになりますが、そのほかにもいくつか異なる点があります。一方で、どちらの推薦方式でも、高校時代の学習への取り組みが評価のもとになる点は共通しています。
の3つになりますが、そのほかにもいくつか異なる点があります。
公募推薦の仕組みについて
公募推薦は、大学が出している基準を満たし、高校の学校長から推薦をもらえば、出願が対象となる高校生は、どの高校からでも受験できる推薦入試の形式です。指定校推薦とは異なり、出願できる大学や学部の選択肢が広いのがメリットです。
実際の流れとしては次のようになります。
- 大学の公式サイトなどで2025年度の募集要項を確認し、出願条件(評定平均・出席日数・英語資格検定のスコア等)を満たしているか確認
- OKなら受験を希望する旨を高校側に伝え、推薦書を作成してもらう(資料請求をして詳細を確認することもおすすめです)
- 大学に出願書類(調査書・推薦書・自己推薦書等)を提出
- 受験(面接や小論文に加え、口頭試問や基礎学力試験等が課される場合があります)
- 合格発表
また、公募推薦は指定校推薦と違い併願可能な大学も多くあります。各大学の受験日程をよく確認してみましょう。
指定校推薦の仕組みについて
指定校推薦は、大学と高校の長年の信頼関係に基づいて実施される推薦入試の制度です。大学が特定の高校に推薦枠を与え、高校側は推薦基準を満たした自校の希望者から推薦するにふさわしい生徒を選びます。選ばれた生徒のみが出願できるタイプの入試です。
流れとしては次のようになります。
- 自分の高校が推薦枠を持つ指定大学の中から志望校を決める
- 出願条件(評定平均・出席日数等)を満たしているか確認
- OKなら受験を希望する旨を高校側に伝え、書類を提出
- 高校内で校内審査(選考)が行われる
- 校内審査で選ばれたら大学に出願書類(調査書・推薦書等)を提出
- 受験(面接や小論文、口頭試問等が行われます)
- 合格発表

大学側が元々その出身高校の分の入学者枠を用意しているので、合格する確率は非常に高いです。しかし逆に言うと指定校推薦は「合格したら必ずその大学に行く」ことが前提の専願制です。そのため、他の大学を受験することはできません。
気になる大学や学部があれば、オープンキャンパス等のイベントに参加するなどして、そこで学ぶ内容をよく調べてから志望校を決めるようにしてくださいね。
公募推薦と指定校推薦の合格率は?

公募推薦の合格率は一般的に約30~60%と言われています。しかし、国公立や難関私立大学の合格率は低く、かなり厳しい戦いになるケースもあります。一方で、中堅以下の大学であれば倍率が1~2倍の比較的合格しやすい大学もあります。最終的な合否判定は、提出書類や当日の試験結果を総合して決まるため、油断はできません。
一方、指定校推薦は校内審査にさえ通ってしまえば、合格する確率はほぼ100%と言われています。これは高校と大学側の信頼関係に基づいた「毎年良い学生を安定して進学/入学させるための受験システム」なので、その信頼をよほど崩すような事態(不祥事等)や、採点不可能な状況(大幅な遅刻や欠席等)にならない限りは基本的に合格します。 しかし、人気の大学・学部だと希望者が重なることが多く、指定校推薦の場合はむしろ「校内審査で選ばれるのが一番の難関」とも言えます。高校が持っている指定校推薦の枠の中に自分の受けたい大学がない、または校内審査で選ばれなかった場合は、公募推薦や一般選抜を検討することになります。
ほぼ100%の合格率の指定校推薦と比べると公募推薦の合格率は低くなりますが、その数字は大学や学科によって大きく変わります。「公募推薦だから受かりにくい」と決めつけず、自分の受けたい大学の偏差値や募集人数等の状況をしっかり調べてみてくださいね。
公募推薦をもらうためには?

「コンクールや大会で入賞した」「部活動等のスポーツ活動や文化活動で中心的な立場だった」等、学力以外にも課外活動でアピールできるような優れた活動実績がある場合は、一般選抜の前に公募推薦での受験を検討するのもいいでしょう。 公募推薦をもらうためには、2つの段階をクリアする必要があります。
評定平均などの大学が求める出願条件を満たす
推薦試験ではまず出願条件を満たさなければ出願自体ができません。まずは評定平均や出席日数、一部の大学では大学入学共通テストの成績等、各大学が課す出願条件をクリアしましょう。 推薦で求められる評定平均は低くて3.5以上、できれば4.0以上は取っておきたいところです。他の受験生に勝つためには出願条件ぎりぎりの評定平均では難しいため、基礎的な知識を固め、苦手教科の学習にも力を入れ、全体の平均を落とさないことを意識しましょう。
高校の校長から推薦を得ること
基本的には出願条件を満たしていれば推薦書はもらえるはずです。しかし、日頃の生活態度も重視されるため、注意が必要です。高校側に「この生徒は推薦できない」と判断されれば推薦書をもらえず、受験することができません。高校内での推薦基準がある場合がありますし、そのほかにも、
- 謹慎や停学等の処分を受ける
- 遅刻欠席があまりに多い
等の理由があると推薦がもらえない可能性があります。遅刻欠席はもちろんですし、友だちとちょっと羽目を外したら思わぬ大ごとに、といった場合もありますので集団での行動にも普段から気を付けておきましょう。高校内の推薦基準については、早くから担当の先生に質問・確認しておくと安心です。先輩に聞いてみるのも良いでしょう。
指定校推薦をもらうためには?

指定校推薦をもらうためには、公募推薦の「出願基準を満たす」「高校の校長から推薦をもらう」の他に、「校内審査で選ばれる」必要があります。 出願基準を満たしていても、枠の人数以上に希望者がいたらそのライバルよりも総合的に良い評価を取らなければ出願できないので受験するチャンスすらありません。 校内審査で選ばれるためには、次の2つのポイントが重要です。
校内での定期テストで総合的に良い成績を得ること
「総合的に」ということが重要です。3年間、苦手科目も含めてよい成績を取り続けるのは難しいです。しかし、だからこそ「真面目で推薦するにふさわしい生徒である」ということを成績が証明してくれます。学習への意欲や継続する能力が評価されるのです。
もし1年生の時の成績があまり良くなくても、今から成績を上げれば「努力して改善した」というアピールになりますので「無理かもしれない」等と諦めないでくださいね。 逆に良い成績を取っていて3年生で下がると悪印象なので、油断せず「更に上げてやる!」くらいのつもりでいきましょう。 また、成績もですが、遅刻欠席も出願条件に入る場合があり、校内審査にも影響しますので気を付けましょう。
部活や生徒会などの学校生活への積極的に取り組むこと
校内審査で選ばれるためにもちろん一番大事なのは評定平均です。 しかし成績が同じくらいであるならば、部活や生徒会等に積極的に取り組んだ生徒の方が校内審査で有利になります。 部活や生徒会等で特に活躍がない…といった場合は、資格を取得する、ボランティア活動をする、評定平均をとにかく上げる等の作戦もアリです。
また、成績や学校活動の他にも、大学が求める人物像に合っているかどうかも見られる場合があります。 私の身内が指定校推薦を希望した大学は、同じくらいの成績な上に部活で活躍している同級生の希望と第1・第2志望共かぶってしまい、「これは勝てない…どうしよう」と思っていました。
しかし第1志望の学風が身内の方が適していそうなことと、第2志望の大学の方がその同級生の部活の強豪校だったこともあり無事に第1志望の校内審査に選ばれたことがありました。 同じくらいの評価のライバルがいる場合、学力や実績以外の選考要素もあるということも参考にしてみてくださいね。
まとめ

学校推薦型入試の「公募推薦」と「指定校推薦」について解説しました。
指定校推薦で確実に早い時期に希望通りの進路を決めて進学準備に時間を使いたい、どうしても行きたい大学があるけど高校が指定校ではないので公募推薦と一般受験で挑戦したい…
それぞれ希望があると思います。
推薦受験は3年間の長期戦になるので一般受験とはまた別の面で大変ですが、学校や塾・予備校も利用しながら大学や受験形式についてよく調べて、後悔のない進路を選べるようにしましょう。