小論文の序論の書き方を解説|課題文型・資料型の導入から主張まで

小論文の序論の書き方を解説

小論文において序論は、論文全体の方向性を決定づける重要な部分です。しかし、多くの受験生が誤解しているのは、序論が必ずしも最初の段落とは限らないという点です。特に課題文読解型や資料分析型の小論文では、要約や資料の読み取りが第1段落となり、序論はその後に配置されます。本記事では、出題形式に応じた序論の書き方と、スカイ流PREP法における序論の位置づけを詳しく解説します。

1. 序論の前に来るもの:課題文要約と資料読み取りの役割

大学入試の小論文には、大きく分けて「テーマ型」「課題文読解型」「資料分析型」の3つの出題形式があります。このうち、課題文読解型と資料分析型では、序論の前に「要約」または「資料の読み取り」が必要となります。この構造を理解せずに、いきなり自分の意見から書き始めると、設問の要求に応えていないとして大きく減点されます。

課題文読解型における第1段落:要約の役割

課題文読解型の小論文では、通常「課題文を要約し、それについてあなたの意見を述べよ」という形式で出題されます。この場合、第1段落は課題文の要約となります。要約の役割は、採点者に「受験生が課題文の内容を正確に理解している」ことを示すことです。

要約では、筆者の主張を正確に抽出することが最重要です。具体例や補足的な説明は省略し、論旨の骨格だけを簡潔にまとめます。一般的に、要約は指定文字数の20〜25%程度が適切です。800字の小論文なら160〜200字程度が目安となります。

【要約の例】環境問題に関する課題文

課題文の主旨: 筆者は、環境問題の解決には個人の行動変容だけでなく、企業の生産システムの抜本的変革が不可欠だと主張している。

要約例(150字):
筆者は、環境問題を個人の責任に帰すことの限界を指摘している。確かに個人のエコ活動は重要だが、それだけでは不十分であり、大量生産・大量消費を前提とする企業の生産システム自体を変革しなければ、根本的な解決には至らないと論じている。環境保護には、消費者の意識改革と産業構造の転換という両輪が必要だと主張する。

資料分析型における第1段落:データの読み取り

資料分析型では、グラフ、表、統計データなどが提示され、「資料から読み取れることを述べ、それについて論じよ」という形式になります。この場合、第1段落は資料の客観的な読み取りとなります。

資料読み取りで重要なのは、数値の変化を正確に記述することと、意見と事実を混同しないことです。「増加している」「減少している」「横ばいである」といった客観的な変化を述べ、その原因や評価は第2段落の序論以降で論じます。

【資料読み取りの例】高齢化率の推移グラフ

提示された資料: 日本の高齢化率(65歳以上人口の割合)の推移を示すグラフ

読み取り例(120字):
資料によれば、日本の高齢化率は1990年の12.1%から2020年には28.6%へと急激に上昇している。特に2000年以降の上昇が顕著であり、わずか20年間で10ポイント以上増加した。この推移は、他のOECD諸国と比較しても極めて速いペースであり、日本が世界最速で高齢化が進む社会となっていることを示している。

要約・読み取りと序論の関係

要約や資料読み取りは、あくまで「事実の確認」です。ここでは自分の意見を入れてはいけません。序論はその後に配置され、要約・読み取りを踏まえた上で、「問題の所在」と「自分の立場」を明確にします。この二段階構成を理解することが、課題文型・資料型小論文の鍵となります。

2. スカイ流PREP法における序論の位置づけと機能

スカイ予備校が推奨するスカイ流PREP法では、序論は第2段落に配置されます。PREP法とは、Point(結論)→ Reason(理由)→ Example(具体例)→ Point(再結論)という構成ですが、課題文型・資料型の場合、これが以下のように展開されます。

このスカイ流PREP法はスカイ予備校独自の指導法です。

スカイ流PREP法の段落構成(課題文型・資料型)

段落内容役割
第1段落要約/資料読み取り課題文の主旨または資料から読み取れる事実を客観的に記述
第2段落(序論)Point(主張)問題の所在を明確にし、自分の立場・主張を明示
Reason(理由)なぜそう主張するのか、論拠を示す

第3段落
Example(具体例・考察)具体例、データ、独自の視点で論を補強
第4段落独自の論点ライバルと差をつける論点
この第4段落の差別化が小論文で8割を取れる秘密!
第5段落Point(結論)主張を再確認し、提言や展望を示す

第2段落(序論)で達成すべき3つの目標

スカイ流PREP法における序論(第2段落)には、明確な3つの機能があります。

①問題の所在を明確にする
要約や資料読み取りで示した内容を受けて、「何が問題なのか」「なぜそれが重要なのか」を明示します。例えば、高齢化率のデータを読み取った後の序論では、「この急速な高齢化は、社会保障制度の持続可能性と労働力不足という二つの構造的問題を引き起こす」というように、データの意味を解釈します。

②自分の立場・主張を明示する
課題文や資料に対して、「自分はどう考えるか」を明確に述べます。課題文に賛成なのか反対なのか、あるいは部分的に賛同するのか。資料が示す傾向をどう評価するのか。この立場表明が曖昧だと、論文全体の方向性が不明確になります。

③論の展開を予告する
これから何を論じるのかを簡潔に示します。「本稿では、〜という観点から〜を考察する」というように、論点の範囲を明示することで、採点者は論文全体の構造を理解しやすくなります。

【序論の例】課題文型:環境問題

第1段落(要約): 筆者は、環境問題の解決には個人の行動変容だけでなく、企業の生産システムの抜本的変革が不可欠だと主張している…(150字)

第2段落(序論・主張):
筆者の指摘は妥当である。環境問題は個人の努力だけでは解決できない構造的課題であり、企業と政府による制度改革が不可欠だからだ。しかし、企業の変革を促すには消費者の選択行動が重要な役割を果たす。本稿では、個人・企業・政府の三者が連携する環境保護の枠組みについて考察する。(140字)

この例では、筆者への評価(妥当である)→ 自分の立場(三者連携が必要)→ 論の展開予告という流れで序論を構成しています。

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3. テーマ型小論文における序論との違い

テーマ型小論文では、課題文や資料がなく、「〜について論じよ」という短いテーマだけが提示されます。この場合、序論は第1段落となり、課題文型・資料型とは異なる役割を持ちます。

テーマ型における序論の3つの機能

①問題の背景・現状を示す
テーマ型では、採点者と問題認識を共有するために、まず社会的背景や現状を示す必要があります。「少子化について論じよ」というテーマなら、「日本の出生率は1.26まで低下し…」というように、データで現状を示します。

②問題の重要性を示す
なぜそのテーマが重要なのか、無視できない問題なのかを明示します。「この少子化は、将来の労働力不足と社会保障制度の崩壊という深刻な問題を引き起こす」というように、問題の本質を指摘します。

③自分の立場と論点を提示する
どのような視点から論じるのか、どのような主張をするのかを明確にします。この点は課題文型・資料型と共通です。

【比較表】課題文型とテーマ型の序論の違い

項目課題文型・資料型テーマ型
序論の位置第2段落(第1段落は要約/読み取り)第1段落
前提条件課題文・資料の内容が共有されている背景知識を自分で示す必要がある
主な役割課題文・資料への評価と自分の立場表明問題の背景提示と立場表明
文字数配分100〜150字程度(全体の12〜18%)150〜200字程度(全体の18〜25%)
注意点要約・読み取りと重複しない背景説明が長くなりすぎない

【テーマ型の序論例】AI技術について

テーマ: 「AI技術の発展が社会に与える影響について、あなたの考えを述べよ」

序論(第1段落・180字):
AI技術は、医療診断、自動運転、言語処理など、あらゆる分野で急速に実用化されている。この技術革新は、生産性向上と利便性の飛躍的向上をもたらす一方で、大量失業、プライバシー侵害、倫理的問題という負の側面も持つ。AI技術の影響は、単なる技術的問題ではなく、社会構造全体に関わる問題である。本稿では、AIがもたらす恩恵とリスクを分析し、適切な社会的対応について考察する。

テーマ型では、現状提示→ 問題の両面性指摘→ 論点提示という流れで、読者に問題の全体像を示すことが重要です。

4. 効果的な主張の立て方:序論で差をつける5つのテクニック

序論において最も重要なのは、明確で説得力のある主張を提示することです。曖昧な立場表明は、論文全体をぼやけたものにします。ここでは、序論で差をつける5つのテクニックを紹介します。

テクニック①:二項対立を超える第三の視点を示す

多くの受験生が陥るのは、「賛成か反対か」という単純な二項対立です。しかし、社会問題の多くは、どちらか一方が完全に正しいということはありません。両者の主張を理解した上で、第三の視点を提示することで、思考の深さを示せます。

単純な主張:
私は安楽死に反対である。生命は何よりも尊重されるべきだからだ。

第三の視点を示す主張:
安楽死の是非は、「生命の尊厳」と「苦痛からの解放」という二つの価値の対立として論じられてきた。しかし、この問題の本質は、選択肢の有無ではなく、緩和ケアの充実度にある。十分な緩和ケアが提供される社会では、安楽死を選択する必要性は大幅に減少する。本稿では、安楽死の是非ではなく、緩和ケア体制の整備という視点から考察する。

テクニック②:条件付き賛成・反対を明示する

「〜という条件下では賛成だが、〜の場合は反対」というように、条件を明示することで論理的な思考力を示せます。これは単純な賛否よりもはるかに説得力があります。

条件付き主張の例:
AI技術の開発自体には賛成である。医療や災害予測など、人命救助に直結する分野での活用は積極的に推進すべきだ。しかし、顔認証技術を用いた市民監視や、自律型兵器への応用は、人権侵害と倫理的問題を引き起こすため、厳格な規制が必要である。本稿では、AI技術の適用領域を区分し、分野別の規制枠組みを提案する。

テクニック③:時間軸を導入する

「短期的には〜だが、長期的には〜」という時間軸の視点を導入することで、問題の複雑性への理解を示せます。

時間軸を示す主張:
経済成長と環境保護は、短期的には相反する目標のように見える。企業に環境規制を課せば、コスト増加により競争力が低下するからだ。しかし、長期的視点では、環境技術への投資が新たな産業を生み、持続可能な経済成長の基盤となる。本稿では、短期的コストと長期的利益のバランスを考察し、移行期の支援政策を提案する。

テクニック④:スケールの違いを明示する

「個人レベルでは〜だが、社会レベルでは〜」というように、分析のスケールを明示することで、多層的な理解を示せます。

スケールを示す主張:
少子化対策において、個人の選択の自由は最大限尊重されるべきである。子どもを持つかどうかは個人の権利だからだ。しかし、社会全体の視点では、急激な人口減少は経済成長と社会保障制度の維持を困難にする。本稿では、個人の自由を侵害せずに出生率を向上させる、環境整備型の政策について考察する。

テクニック⑤:優先順位を明確にする

複数の選択肢がある場合、「〜が最優先であり、〜は補完的である」というように、優先順位を明示することで、戦略的思考を示せます。

優先順位を示す主張:
高齢化社会への対応には、医療・介護体制の整備、高齢者の社会参加促進、出生率向上という三つのアプローチがある。この中で最も重要なのは、高齢者が健康で活躍できる社会の実現である。なぜなら、元気な高齢者が増えれば、医療費削減と労働力確保という二つの問題を同時に解決できるからだ。本稿では、予防医療と生涯現役社会の構築を中心に論じる。

5. 序論でやってはいけない5つの失敗パターン

効果的な序論の書き方を学んだところで、最後に絶対に避けるべき失敗パターンを確認しましょう。これらは多くの受験生が陥りがちな罠です。

失敗①:要約・読み取りと序論の区別がない

❌ 悪い例(第1段落で要約と意見が混在):
筆者は環境問題には企業の変革が必要だと述べているが、私もそう思う。個人の努力だけでは限界があるからだ。企業が変わらなければ意味がない。

✅ 改善例:
第1段落(要約): 筆者は、環境問題の解決には個人の行動変容だけでなく、企業の生産システムの抜本的変革が不可欠だと主張している…(客観的な要約のみ)

第2段落(序論): 筆者の指摘は妥当である。環境問題は個人の努力だけでは解決できない構造的課題であり、企業と政府による制度改革が不可欠だからだ…(ここで初めて意見を述べる)

失敗②:立場が曖昧で主張が不明確

❌ 悪い例:
少子化は難しい問題である。賛成意見も反対意見もあり、どちらも一理ある。様々な要因が絡み合っているので、簡単には言えない。

✅ 改善例:
少子化対策には、経済的支援と保育環境整備という二つのアプローチがあり、両者の優先順位が議論されている。私は、経済的支援を優先すべきと考える。なぜなら、出産・育児の直接的な経済負担が、最も大きな出生率低下要因だからだ。

失敗③:序論で結論まで全て述べてしまう

❌ 悪い例:
AI技術は規制すべきである。理由は三つある。第一に失業が増えるからだ。第二にプライバシーが侵害されるからだ。第三に倫理的問題があるからだ。したがって、AIは厳格に規制する必要がある。以上の理由から、私はAI規制に賛成である。

✅ 改善例:
AI技術の急速な発展は、雇用、プライバシー、倫理という三つの側面で深刻な懸念を生じさせている。この技術をいかに活用し、同時にリスクを管理するかは、現代社会の重要課題である。本稿では、規制の必要性とその具体的方向性について考察する。(詳細な論証は本論で展開)

失敗④:抽象的で具体性に欠ける

❌ 悪い例:
教育は大切である。現代社会には様々な問題があるが、教育はその中でも特に重要だと思う。教育について考えることは意義深い。

✅ 改善例:
日本の教育における最大の課題は、世帯収入による学力格差の固定化である。文部科学省の調査では、年収400万円未満と1200万円以上の世帯で、子どもの正答率に約20ポイントの差が生じている。この格差は、機会の平等という民主主義の根幹を揺るがす問題である。

失敗⑤:感情的・主観的な表現

❌ 悪い例:
環境問題は本当に深刻で、このままでは地球が大変なことになる。私たちは今すぐ行動しなければならないと強く感じる。一人一人が意識を変えることが何より大切だ。

✅ 改善例:
地球の平均気温は産業革命前と比べて1.1度上昇し、IPCCは2030年までに1.5度に達すると予測している。この気候変動は、異常気象の頻発や生態系の破壊という具体的被害をもたらしており、科学的根拠に基づいた対策が急務である。個人の行動変容と政策的誘導の両面からアプローチする必要がある。

まとめ:序論で論文の成否が決まる(平均には届く)

しかし、勝負は第4段落の独自の論点書くことで、さらに答案が完成し8割の点に届く

小論文の序論は、単なる導入部分ではなく、論文全体の方向性と質を決定づける重要な部分です。特に重要なポイントを以下にまとめます。

序論作成の5つの原則

  1. 出題形式を見極める – 課題文型・資料型では第2段落が序論、テーマ型では第1段落が序論
  2. 要約・読み取りと区別する – 第1段落では客観的事実のみ、序論で初めて意見を述べる
  3. 明確な立場を示す – 曖昧な表現を避け、自分の主張を明確に表明する
  4. 適切な長さを守る – 全体の12〜25%程度、100〜200字が目安
  5. 本論への橋渡しをする – 序論で全てを語らず、詳細な論証は本論に委ねる

スカイ流PREP法での序論の重要性

スカイ流PREP法において、序論(第2段落)はPoint(主張)として、論文全体の核(その1)となります。ここで明確な主張を立てられなければ、その後のReason(理由)もExample(具体例)も焦点がぼやけてしまいます。逆に、序論で力強い主張を示せば、採点者は「この受験生は問題を深く理解している」という好印象を持ち、以降の論証にも期待を持って読み進めます。

そして、答案が8割にいくためには、あのライバルよりも、若い論点を、第4段落で書き、さらに差別化合わせること重要となります。

序論は、採点者との最初の本格的な対話です。要約や資料読み取りで「理解力」を示した後、序論で「思考力」と「主張力」を示す。この二段階のアプローチが、課題文型・資料型小論文の成功の鍵です。

効果的な序論を書くには、繰り返しの練習が不可欠です。「書く→添削を受ける→改善する」というサイクルを通じて、自分なりの序論の型を確立しましょう。明確で説得力のある序論を書けるようになれば、小論文全体の質が飛躍的に向上します。

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