記事の監修者:五十嵐弓益(いがらし ゆみます)
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お茶の水女子大学 文教育学部 人文科学科の小論文対策
[令和5年度 学校推薦型選抜]
【問題1】 以下の文章を読んで、その後の問いに答えなさい。
課題の要約文です。
2020年12月、京都府、兵庫県、岡山県の3人の女子高校生が、ファミリーマートの「お母さん食堂」のネーミング変更を求める署名運動を起こし、7500人以上の賛同を集めた。これは「女性=家事・育児」といったバイアスが残る可能性を指摘し、賛否の声が起こった。一部では「お母さん食堂」の問題性が理解できないとの反発も見られたが、実はこのネーミングはフェミニズムの視点で「私的領域における女性の無償労働」と結びついている。新型コロナパンデミック下でケア労働の重要性が再評価され、その中でケアに従事する人々の過酷な状況と報酬の不足が問題となった。一部では「エッセンシャル・ワーカー」として賞賛されたが、その一方で労働環境や待遇の不十分が浮き彫りになった。これは長らく女性が再生産労働を担い、その報酬が適正でないことに起因しており、女性が再生産労働を担う構造は女性を公的領域から排除し、男性の支配を強めてきた。フェミニストたちは、資本主義社会において再生産労働が女性に不当に押し付けられ、その報酬が低いことが都合の良いものであると指摘している。この背景を踏まえ、ネーミング変更を求める声には理解を示す必要があり、これがより公正で平等な社会を築くための第一歩となるだろう。
出典:水晶子『フェミニズムってなんですか?』文春新書 二〇二二年より(一部改変)
問1 「お母さん食堂」の何が問題だと著者は指摘しているのでしょうか。200字以内で答えなさい。
問2 文中にあるような「女性が自然に担う役割」とされていることをめぐる状況について、あなた自
身の考えを、600字以内で論じなさい。
【問題2】次の文章を読み、問一、問二に答えなさい。
課題の要約文です。
日本と中国における文書資料の伝来についての比較を通じて、文書保存と伝来に影響を与える重要な要因が示されています。日本では、「家」が文書保存において中心的な役割を果たし、国家機構の解体や家産化により、文書が特定の「家」に相続され、公文書が膨大に保存されました。これに対照的に、中国では政治的理由から古代の文書が伝来せず、政権交代時に旧政権の文書が破壊された可能性が指摘されています。
中国の国家官僚制度が厳格であること、政治機構の特徴が文書保存と伝来に影響を与えたことが強調されています。国家官僚は厳格な選抜試験を通過し、政治的介入がないため、文書保存においても家産化が進行していなかった可能性が示唆されています。
この文書は、文書の性質だけでなく、社会や政治機構のあり方が文書保存と伝来において決定的な役割を果たすという視点を提示しています。文書の欠陥は単なる政治的な要因だけでなく、国家の特定の機能とその運用にも起因しているとされ、文書保存においては文書自体の価値よりも社会的・政治的背景が注目されています。
出典:岡崎敦 「古代・中世文書資料の日欧比較」河内祥輔ほか編『儀礼・象徴・意思決定 日欧の古代・中世書字文化思文閣出版、二〇二〇年。引用にあたり一部省略・改変した。
問一 なぜ傍線部のような状況が生じたと筆者は考えているか。本文中で述べられている中国の国家機構と官僚制という二つの面から、二〇〇字以内で説明しなさい。
問二 右の文章で筆者は、文書資料が現代にどのように遺されているのかを日本と中国で比較し、その背景や理由として国家機構や官僚制の違いを挙げている。もしあなたが比較を行うならば、どのようなテーマを取り上げたいと思うか、その理由や比較の論点をあげつつ、具体的に六〇〇字以内で述べよ。 なお、比較する対象は文書資料に限定せず、時代や地域も限定しない。
小論文過去問題解説
【問題1】
問1
- ジェンダーバイアスへの意識: 「お母さん食堂」のネーミングが、女性に対するジェンダーバイアスを強化しかねないという意識が重要です。女性が「お母さん=家事・育児」に固定されるステレオタイプなイメージが問題視されています。
- フェミニズムの視点: 著者はフェミニズムの視点から問題を指摘しているため、女性の社会的な位置づけや役割に関する歴史的背景や構造についての理解が求められます。
- アンコンシャス・バイアスへの懸念: アンコンシャス・バイアスが将来の世代にも残る可能性があるという懸念が根底にあります。これは言葉やイメージの影響が、社会の価値観に深く影響を与えることを考慮している点です。
問2
- ジェンダーロールの再検討: 自身の経験や見解を元に、「女性が自然に担う役割」についてどのように考えるかを明確に表現します。これには、家庭や職場での経験、個人の信念が関与します。
- 平等な機会への支持: ジェンダー平等な社会を築くために、再生産労働や家事の負担が男女で公平に分担され、その対価も適正に支払われるべきだという立場を構築します。
- 社会構造の変革への提案: 不平等な構造を改善するために、具体的な提案や行動が求められます。たとえば、仕事と家庭の両面で男女がより均等に参加できるような政策や文化の変革について考えます。
簡潔かつ論理的に意見をまとめ、自身の考えを堅実に展開することが求められます。
【問題2】
問一
- 本文のポイントを確認: 本文で傍線部のような状況が生じた理由は、政治的、社会的な側面から説明されている。これには革命時の旧政権資料の破壊や国家官僚制度の特徴が含まれる。
- 具体例の抽出: 本文から具体的な例や要因を抽出し、それがなぜ傍線部の状況を生じさせたかを整理。
- 論理的説明: 国家機構と官僚制に焦点を当て、これらの要素が文書保存と伝来にどのように影響したかを論理的に説明。
問二
比較テーマの選定: 文書資料の保存に影響を与える可能性があるテーマを選定。例えば、社会的な構造、政治体制、文化的背景などが考えられる。
- 具体的な論点: 選定したテーマに基づき、日本と中国の文書保存においてどのような違いが見られるかを具体的な論点で示す。例えば、日本の家産化が与えた影響と、中国の中央集権的な官僚制が与えた影響を比較する。
- 背景や理由の説明: 選定した論点が文書保存にどのように影響したかについて、背景や理由を具体的に説明。これには歴史的・文化的な要素も含める。
- 結びつけ: 最後に、選定したテーマや論点を通じて日本と中国の文書保存の違いについて総括的に結びつける。
お茶の水女子大学の所在地・アクセス
所在地 | アクセス |
東京都文京区大塚2-1-1 | 地下鉄丸ノ内線「茗荷谷」駅から徒歩約7分 有楽町線「護国寺」駅から徒歩約8分 |
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お茶の水女子大学の入試傾向
お茶の水女子大学の入試は非常に厳しく、高度な思考力や表現力が求められることで知られています。文教育学部人文科学の合格最低点が800点中588点であり、共通テストの得点率も7~9割と高い水準が要求されています。こうした厳しい条件に対応するためには、効果的な対策が不可欠です。
まず、記述式や論述問題に備えるためには、論理的思考力の向上が必須です。日常の問題に対しても積極的に論理的な思考を働かせ、自分の意見や主張を論理的かつ明瞭に表現できるように努めましょう。模擬試験も重要であり、過去の入試問題だけでなく模擬試験を通じて、本番同様の状況で問題に取り組むことが大切です。これにより、試験の雰囲気や時間配分に慣れることができます。
また、論述の練習も欠かせません。テーマに即した明確な立場を持ち、それを的確にかつ説得力をもって述べられるよう、継続的なトレーニングが必要です。過去問の分析も進んで行い、出題の傾向や重要なテーマを洗い出します。知識の幅と深さも拡充し、幅広い分野にわたる知識を備えることが求められます。
最後に、自己採点とフィードバックを徹底することも重要です。模範解答や解説を参考にして、自分の解答を客観的に評価し、課題を特定して改善していくことが、着実なスキル向上に繋がります。
お茶の水女子大学の入試に合格するためには、焦らず計画的なスケジュールで効果的な対策を進め、高度な思考力や表現力を身につけていくことが肝要です。自信をもって試験に臨み、合格を勝ち取るための努力を惜しまないことが重要です。
お茶の水女子大学の募集コース
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文教育学部(定員数:185人)
文教育学部 文学と教育の複合学部で、入学は学科単位、2年次に主プログラムを選択(芸術・表現行動学科は除く)。
人文科学科(定員数:50人)
人文科学科では、知の総合学の視点から人間活動の本質を多角的に追究するための教育と研究を行う。
哲学・倫理学・美術史プログラム
哲学・倫理学・美術史プログラムは、3領域からなり、哲学では多角的な思考力を養い、倫理学では人間のあり方を研究して現実の諸問題への対処を検討し、美術史では美術など視覚表象に実証的にアプローチする力を磨く。
比較歴史学プログラム
比較歴史学プログラムでは、史資料に基づき、歴史の実像を探る。美術・文化人類学・政治学・経済学・文学など関連分野とも連携しながら学ぶ。
地理環境学プログラム
地理環境学プログラムは、地理学の知識と方法(野外調査、地図、GISなど)を学び、地域に展開する人文・社会現象への理解力を高める。
言語文化学科(定員数:73人)
言語文化学科では、人間の言語活動とそれに基づく文化現象を総合的に把握することを目指す。
日本語・日本文学プログラム
日本語・日本文学プログラムでは、上代から現代にわたる日本文学・日本語を研究する実証的手法を学ぶ。
中国語圏言語文化プログラム
中国語圏言語文化プログラムでは、現代語学、現代文化・文学、古典文献・語学、古典文学の4分野について学ぶ。
英語圏言語文化プログラム
英語圏言語文化プログラムでは、英語学、英語圏の文学・文化を研究する方法論を学ぶ。卒業論文も英語で執筆する。
仏語圏言語文化プログラム
仏語圏言語文化プログラムでは、文学・芸術・文化から、その背景の社会問題まで、仏語圏の諸問題を学ぶ。
人間社会科学科(定員数:37人)
仏語圏言語文化プログラムでは、文学・芸術・文化から、その背景の社会問題まで、仏語圏の諸問題を学ぶ。
教育科学プログラム
教育科学プログラムは、教育に関する基礎的な科目群と実践的な科目群の学習を通じ、教育問題や人間発達上の課題に取り組む力を育成する。
社会学プログラム
社会学プログラムは、家族・マスメディア・コミュニケーション・高齢社会などに関わる社会問題について分析し、実践的な問題解決能力を養う。
子ども学プログラム
子ども学プログラムでは、「子ども」という境界領域から人間・社会・文化をとらえなおし、附属園などにおける子どもと関わる実践を生かして乳幼児~児童の育ち・教育について学ぶ。
芸術・表現行動学科(定員数:25人)
芸術・表現行動学科では、現代の多様化する芸術および身体の表現行動を実践的・実証的にとらえていく。
舞踊教育学専修プログラム
舞踊教育学専修プログラムは、舞踊およびスポーツのスペシャリストとしての基礎を修得し、かつ理論的・科学的知見を持つ人材を育成する。
音楽表現専修プログラム
音楽表現専修プログラムは、鍵盤楽器や声楽などの演奏実践に優れ、音楽表現文化への理解と認識を持つ人材を育成する。
理学部(定員数:120人)
湾岸生物教育研究所、ラジオアイソトープ実験センターなどの施設を活用した研究活動が行われている。
各学科の主プログラムを履修した後は、所属学科開講の強化プログラムを履修し、深い専門性を身につける。一方、所属以外の学科の副プログラムや、学部を横断する学際プログラムを履修することで、複合的な学識を修業することもできる。
数学科(定員数:20人)
数学科では、徹底した少数精鋭主義の専門教育が行われる。1年次の微分積分学・線形代数学にはじまり、2年次からは位相空間論・群論など抽象的理論・概論的講義が導入される。
物理学科(定員数:20人)
物理学科では、はじめの3年間で物理学の基本事項である力学・電磁気学・量子力学・熱力学・統計力学などについて学ぶ。4年次からは各研究室に所属し、第一線の研究に参加しながら、特定のテーマについて卒業研究を行う。研究分野は、素粒子物理・宇宙物理・物性物理・化学物理・ソフトマター物理・統計物理・数理物理などがある。
化学科(定員数:20人)
化学科では、物理化学・無機化学・有機化学・生物化学・分析化学の5分野を基幹としている。1~3年次に化学全般にわたる理論や知識を講義と実験によって学び、4年次は研究室に分かれ卒業研究を行う。研究分野は基礎化学からコンピュータ・ナノ材料・創薬化学・バイオまで多岐にわたる。
生物学科(定員数:24人)
生物学科では、はじめの3年間は野外実習や臨海実習を交えて、生物に対する知識を学ぶ。4年次の卒業研究では各研究室に所属し第一線の研究に参加。研究分野には動物生理学・植物生理学・植物系統学・発生生物学・遺伝学・細胞生物学・生命情報学などがある。
情報科学科(定員数:36人)
情報科学科では、より基礎科学的な立場から情報の教育・研究を行う。単なる情報技術者を養成するだけでなく、自然科学の素養を身につけた情報研究者・教育者の育成も目指す。特色ある授業科目として人工知能・コンピュータグラフィックスなどがある。
生活科学部(定員数:101人)
「生活する人間」を基軸に、「生活に関する応用科学としての実践知」を探究する。自然科学的分野を食物栄養学科で、社会科学・人文科学分野を人間生活学科および心理学科で、学際的に学ぶ。
食物栄養学科(定員数:36人)
食物栄養学科では、豊かな食生活や健康な社会の実現に向け、食物と栄養に関する科学的視点と実践力を身につけた社会のリーダーとなる専門家を育成する。卒業後は栄養士資格とともに、管理栄養士国家試験受験資格が得られ、栄養教諭免許も取得できる。
人間生活学科(定員数:39人)
人間生活学科では、生活の質に着目、人間生活の諸条件を研究し、多方面で活躍できる実践的専門家を養成する。
学科の教育研究部門は2系列からなる。生活者とジェンダーの視点を重視しつつ家族・子ども・高齢者・消費者の問題を社会科学の視点と方法で解明する生活社会科学、服飾・工芸・デザイン・民俗を対象に生活感情や美意識を比較文化学的に解明する生活文化学で、主・強化・副プログラムを自らの関心に即して主体的かつ複合的に選択できる。中学・高校家庭科教員免許が取得可能。
心理学科(定員数:26人)
心理学科では、人間の心理的プロセスを科学的に解明し、エビデンスに基づいて、社会的問題や課題の解決を目指す学問領域であり、人間生活のさまざまな場面で横断的に、さまざまな領域と学際的に関わる学問である。教育プログラムは、基礎・実証系心理学領域および臨床・実践系心理学領域の科目を融合した形で構成されており、Scientist-Practitioner(科学者-実践家)の養成を目的とする。公認心理師試験受験資格を得ることができる。
共創工学部(定員数:46人)2024年4月設置予定
2024年新設申請中の学部。
幅広い自然科学・人文学・社会科学的教養と、工学とデータサイエンスの専門性を協働させることで、新たな価値を創出し社会でその成果を実践することを学ぶ。これまで工学領域ではさまざまな技術が開発され、その成果として私たちの生活は豊かに便利になってきた。しかし、その一方で環境負荷の増大や格差の拡大など、さまざまな社会上、倫理上の課題も浮上し、現在は多様な人びとを包摂し、環境に優しい新発想の技術が社会で強く求められるようになっている。
人間環境工学科(定員数:26人)
人間環境工学科は社会課題の解決に向けて、主に社会科学知と工学・テクノロジを協働させることで社会イノベーションを推進する力の育成を目標とする。イノベーション推進には、技術開発に留まらず、ロジックモデルを用いることでプロセス全体を見通せることが求められ、この点が従来の工学とは異なる新しさとなる。
文化情報工学科(定員数:20人)
文化情報工学科は、人間の文化に関する知(人文知)をデータサイエンスや工学と協働し、文化のイノベーションを推進する力の育成を目標とする。文化情報工学は、人文知に工学を協働させることにより生み出される、人間の文化を尊重する新しいタイプの工学である。情報・工学技術を用いて、文学、言語、芸術、思想、歴史、地理などに関する多種多様な情報をデジタル化(収集・生成・可視化)し、分析を行い、新たな作品や価値を創出する。