「共通テストの古文で高得点をとるためにやるべきこと」(全10回)の第8回は、直訳に言葉を補うについて書きたいと思います。
記事の監修者:五十嵐弓益(いがらし ゆみます)
【全国通信教育】最短合格オンラインのスカイ予備校 校長
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第8回 直訳に言葉を補う
前回の記事で、直訳の作り方を紹介しました。今回は、直訳をベースに足りない言葉を補う作業について書きたいと思います。
日本語というものは厄介な言語で、書き言葉であっても、平気で主語や目的語が抜けていきます。文脈から分かるよね、といった具合です。他人から読まれることを想定していない日記文学などはその最たる例で、そこかしこで言葉が省略されたりするので大変です。和歌の解釈が難しく感じるのも、そのあたりが原因でしょう。
『蜻蛉日記』を例に挙げながら説明していきたいと思います。
さて九月ばかりになりて、出でにたるほどに、箱のあるを、手まさぐりに開けて見れば、人のもとにやらむとしける文あり。
(直訳:さて九月頃になって、出て行った後に、箱のあるのを、手すさびに開けて見ると、人のところへ贈ろうとした手紙がある。)
さあ、実際に言葉を補っていきましょう。基本的には、分かりにくいところにツッコミをいれていくというスタンスです。上の例文では、ツッコミポイントは2箇所です。下の答えを見る前に、少し考えてみてください。
①「出でにたるほどに」
②「人」
がツッコミポイントです。
②の「人」に関しては、ほとんどの人が知っているでしょう。古文の「人」は「人々」という意味で用いられる場合もありますが、誰か特定の人物を指すことが多いのでしたね。今回もそのパターンで、「他の女」という意味になります(上記の一文だけでは「他の女」だと断定はできませんので、そこは気にしないでください)。
①の「出でにたるほどに」については、さらに2箇所のツッコミポイントがあります。誰が、どこから出て行くのか、です(今回はツッコミをいれませんが、「どこへ出て行く」が重要である文脈の場合もあるでしょう)。正解は、「夫である兼家が」「道綱母(=筆者)の自邸から」です。
もう一例、同じく『蜻蛉日記』からです。
これより、夕さりつ方、「内裏の方ふたがりけり。」とて出づるに、心得で、人をつけて見すれば、
(直訳:これから、夕方、「内裏の方角が方塞がりになっていた。」と言って出て行くのに、納得できないで、人をつけて見させると、)
ツッコミポイントが多すぎて困ったのではないでしょうか。主なツッコミポイントは以下のようになります(方塞がりは古文常識ですので、今回はツッコミなしでいきます。簡単にいえば、筆者の家から宮中への方角が凶なので、今日は筆者の家には泊まれないと言っているのです)。
①「これより」
→「これ」とはどこか。答え:「私(=筆者)の家」
②「とて出づるに」
→誰の動作か。答え:「兼家」
③「心得で」
→誰の心情か。答え:「道綱母(=筆者)」
④「人」
→具体的に誰なのか。答え:「使用人」
⑤「をつけて」
→誰に「つけた」のか。答え:「兼家」
⑥「見すれば」
→何を「見させた」のか。答え:「兼家がどこに行くか」
現代語訳の完成版は、以下のようになります。
この私の家から、夕方、「内裏の方角が方塞がりになっていた。」と言って兼家が出て行くのに、私は納得ができないで、使用人を兼家のあとにつけてどこに行くかを見させると、
最後に、まとめです。古文の現代語訳を作るには以下の手順を踏みましょう。
1、品詞分解をする
2、直訳をつくる
3、ツッコミをいれる
4、直訳に言葉を補う
(5、読みにくい表現をこなれた表現に改める)
手順4までできれば共通テストはクリアできます!
とにかく数をこなして練習しましょう!