予備校講師が徹底解説:総合型選抜(ローカル型)集団討論課題を小論文形式でマスターする方法

記事の監修者:五十嵐弓益(いがらし ゆみます)
【全国通信教育】最短合格オンラインのスカイ予備校 校長
■小論文指導歴27年
これまでに指導した生徒は4000人以上、独自のSKYメソッドを考案で8割取る答案の作り方を指導。
2020年4月から、完全オンラインの大学受験予備校となる。過去3年間で国公立大学合格125名。
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スカイ予備校の指導方針は、「大人になっても役に立つ勉強法の習得」です。「自分の人生は自分で切り拓く」教育をします
はじめに:なぜ集団討論課題を「小論文」で練習するのか?
こんにちは。小論文対策専門予備校の講師です。
今回は、2024年度旭川市立大学経済学部・総合型選抜(ローカル型)の集団討論課題を取り上げます。
「集団討論なのに、なぜ小論文?」と思われるかもしれません。実は、集団討論の準備として小論文を書くことは、最も効果的な訓練法の一つなのです。
小論文練習が集団討論に効く3つの理由
1. 論点整理力が身につく
- 自分の意見を文章化することで、考えが明確になる
- 討論中に「何を言いたいか分からなくなる」ことを防ぐ
2. 根拠を示す習慣がつく
- 小論文では主張に根拠が必須
- 討論でも「なぜそう考えるか」を説明できるようになる
3. 時間内に考えをまとめる訓練になる
- 討論の準備時間は15分のみ
- 小論文の構想練習がそのまま活きる
さらに、小論文として書いた内容は、そのまま学校推薦型選抜(小論文試験)の練習にもなります。一石二鳥どころか三鳥の効果があるのです!
📋 問題文全文(OCR化完全版)
試験情報
試験名: 2024(令和6)年度 旭川市立大学 経済学部 総合型選抜(ローカル型)集団討論
実施日: 2023年9月15日(金)
準備時間: 15分(メモ取り可)
形式: 集団討論
討論テーマ(3つ)
① 課題文⑴について、「コミュニティ」問題の変化とは何か?また、その要因はどこにあると考えられるか?
② 課題文⑵について、ルールを「明文化」するメリットは何か?また、地域ルールを「策定・見直し」する際に気をつけなければならないことは何か?
③ 受入住民側と移住者とのミスマッチを防ぐために、コミュニティ・仕事・住宅について、どのような対策が考えられるか?
課題文⑴(全文)
都市部から農山村への移住者は着実に増加している。しかし、言うまでもなく、移住は簡単なことではない。それにはいくつものハードルがあり、特に大きなポイントは、「仕事」「住宅」「コミュニティ」である。これらはいずれも従来から指摘されてきたが、近年は、この「問題」自体に変化が表れはじめている。
〔中略〕
そして、第三の「コミュニティ」について。この問題は、農山村の地域社会の閉鎖性に対する都市住民の違和感やそれによる参入障壁を、どう緩和していけるかが焦点となっている。コミュニティの閉鎖性にかかわる問題は、複雑である。確かに、「濃密過ぎる人間関係」に対して、さまざまなところで都市住民の嫌悪感が表明されている。しかし、作家・画家の玉村豊男氏が言うように、「案外、都会の人が考えているより、田舎の人間関係には自由なところがあります」ということは事実であり、さらに「田舎の人たちは、都会から来る人たちが自分たちの「優しさと温かさ」を恐れていることが、わからない。このギャップが、一番の問題なのです」という指摘も、実態の一面を的確に捉えている(玉村豊男『田舎暮らしができる人できない人』集英社、二〇〇七年)。つまり、この問題の一部は、両者のコミュニケーションにより改善されることが期待できるものでもある。
他方で、この「優しさと温かさ」を求める都市の若者もいる。それが都市における人間関係の希薄さや匿名性がいき過ぎた結果であるとすれば、むしろ、濃密な人間関係こそが、今後の農山村移住を促進する、農山村の重要な「地域資源」となる可能性もある。
しかし、徹底的に閉鎖的な農山村コミュニティもないわけではない。筆者が訪れた東日本のある集落では、そこに住み込んだ地域おこし協力隊による地域づくりの提案に対して、「それは君の仕事ではない。そんなことには口を出すな」と言い放ち、草刈りや住民移送の仕事を押しつけていた集落の代表者もいた。地域に愛着を感じて、地域づくりのために何とかしたいと思う若者に、そうした下働きだけを押しつけるようなことは残念なことである。
しかし、そのような集落でも、都市農村交流の経験とそこでの外部の人々とのつきあいによる「気づき」が集落を変えていく可能性も十分にある。現在では、地域を磨き、移住者を集める集落の中には、少し前までは閉鎖的な様相を見せていたところも少なくないからである。その点でこの問題もまた固定的なものでなく可変的と言える。むしろ、このような集落が都市農村交流や外部サポート人材の導入に乗り出しやすくするために、どのようなプロセスを踏むべきか、行政や実践的研究の喫緊の課題であろう。
出典:小田切徳美『農山村は消滅しない』(岩波書店、2015)pp.207-211
※問題作成のために一部改変
課題文⑵(全文)
集落の住民と移住者の共存を巡る問題が表面化する中、注目される取り組みがある。地域活性化に取り組む京都府南丹市のNPO法人「テダス」が考案した「集落の教科書」だ。地域の歴史やルールをまとめたガイド本で、葬儀の慣習や共同作業など集落ごとに異なる情報も盛り込む。移住者向けの「教科書」だが、住民が話し合いながら地域のルールを明文化する作業は、集落自体に大きな効用をもたらした。
集落の教科書の一番の特徴は「良いことも、そうでないことも」きちんと伝えていくという姿勢だ。テダスの田畑昇悟・事務局長は「良くない情報も載せることで移住者とのミスマッチを事前に防げる。ただし教科書ができたことでルールが固定化してしまう恐れがある。集落は時代や状況で変わるものだから教科書も更新し続けることが大前提だ」と話す。教科書はテダスが2015年に1冊目を完成させ、今年4月現在、全国21地域に広がっている。
〔中略〕
住民らでつくる地区の活性化協議会のメンバーらはまず、地域の空き家を一軒ずつ回って状態を確認し、移住者向けに貸してくれるよう家主と交渉。宿泊体験なども催して移住希望者を募った。
そんな時に地区内に移住してきた地域おこし協力隊員の発案で取り組んだのが「集落の教科書」作りだ。地区を構成する9町ごとの役員の決め方や自治組織、町会費などの額を明文化し、19年以降、A4判フルカラーの冊子を計1500部作ったほか、ホームページでも公開し、積極的に情報を提供した。
ただ、受け入れ当初は移住者とコミュニケーションがうまくいかず、トラブルになるケースもあった。そこで協議会を中心に、どんな人に来てほしいかを話し合い、「一緒に地区を盛り上げてくれる人」という移住者の”人物像”を明確にした。協議会などに相談してきた移住希望者と、協議会メンバーや町会長らが事前に複数回顔を合わせて”マッチング”。トラブルを未然に回避し、移住者の定着にもつながった。協議会の宮崎吉春会長は「人口をただ増やすための移住は必要ない。目的は仲間を増やすこと」と強調する。
「教科書」作成は別の効果もあった。高階地区の9町は、それぞれで町内組織やイベント、町会費などもまちまちだった。それが明文化されたことで互いの理解が進み、地域を盛り上げようという機運も高まったという。
〔中略〕
地区にはほかにも、古民家を改装してゲストハウスを開いたり、高齢者の田畑を継いだり、英会話やそば打ちなどの教室を開いたりと、自分たちのスキルや経験を生かして活動する移住者も多い。宮崎会長は「地域には何もないと思っていたが、移住してきた人たちに自然や住環境など地域の魅力に気づかせてもらった。移住者は地域を盛り上げるのに欠かせない存在だ」と説明した。
出典:連載 北陸・移住最前線「集落の教科書 自治会費まで明文化 住民も地域見直す機会に 富山・氷見市」「先進地 目的は仲間を増やすこと スキル生かし地域盛り上げ 石川・七尾市」毎日新聞 2023年6月16日、17日 地方版
※問題作成のために一部改変
🎯 課題の論点完全分析
この問題で問われている本質
表面的なテーマ: 農山村への移住とコミュニティ問題
本質的なテーマ:
- 地方創生における課題解決思考
- 多様な主体間の調整・合意形成
- 情報の透明性と柔軟性のバランス
- 持続可能な地域社会のデザイン
旭川市立大学が求める学生像:
- 地域課題に関心を持つ
- 論理的に分析・提案できる
- 多様な視点を持つ
- 実践的な解決策を考えられる
📊 3つのテーマの構造分析
テーマ①:コミュニティ問題の「変化」と「要因」
問題の構造
従来の認識(Before)
農山村 = 閉鎖的
↓
都市住民 = 嫌悪感
↓
参入障壁
現在の認識(After)
都市住民の思い込み ←→ 農山村住民の善意
↓
相互理解の不足(ギャップ)
↓
双方向のコミュニケーション課題
重要な論点
1. 問題の「可変性」
- 固定的ではなく変わりうる
- 都市農村交流による「気づき」
- 閉鎖的だった集落も開放的に変化
2. 「地域資源」への転換
- マイナス(閉鎖性)→プラス(濃密な関係性)
- 都市の希薄な人間関係への反動
- 若者が「優しさと温かさ」を求める
3. 多様化する移住者
- 濃密な関係を避けたい層
- 濃密な関係を求める層
- 画一的な対応では不十分
変化の要因(社会的背景)
都市側の変化
- 人間関係の希薄化
- 匿名性の過度な進展
- 孤独・孤立問題の深刻化
- コロナ禍による価値観変化
農山村側の変化
- 人口減少の危機感
- 地域おこし協力隊などの外部人材
- 都市農村交流の経験蓄積
- 成功事例・失敗事例の共有
社会全体の変化
- 地方創生政策の展開
- 移住促進の制度整備
- SNSによる情報発信
- ライフスタイルの多様化
テーマ②:ルールの「明文化」
明文化の多面的メリット
【移住者側】
情報の獲得
↓
不安の軽減
↓
ミスマッチ防止
↓
定着率向上
【受け入れ側】
「当たり前」の言語化
↓
自己認識・地域の再発見
↓
住民間の相互理解
↓
地域への愛着醸成
【地域全体】
透明性の向上
↓
トラブル防止
↓
外部へのPR
↓
持続可能な受け入れ体制
注意すべき「落とし穴」
1. ルールの固定化・硬直化
- 課題文の警告:「ルールが固定化してしまう恐れ」
- 対策:定期的な見直しの仕組み
- 「〇年〇月版」と明記、暫定性の強調
2. 作成プロセスの偏り
- 一部の人だけで決めるリスク
- 世代間・新旧住民のバランス
- 移住者の視点の欠如
3. 情報選択のジレンマ
- 良い面だけ→ミスマッチ発生
- 悪い面も→移住者減少?
- 「良いことも悪いことも」の勇気
4. 形骸化・お飾り化
- 作っただけで満足
- 実際には使われない
- 更新されない
5. 排他性の正当化
- 「教科書に書いてあるから従え」
- 過度な選別
- 多様性の軽視
課題文から学ぶ成功の秘訣
石川県七尾市高階地区の事例
- ✅ A4フルカラー1500部作成
- ✅ ホームページでも公開
- ✅ 「一緒に地区を盛り上げてくれる人」という人物像明確化
- ✅ 複数回の事前マッチング
- ✅ 「人口を増やす」→「仲間を増やす」への転換
- ✅ 副次効果:住民間の相互理解も促進
テーマ③:ミスマッチを防ぐ総合対策
3つの分野の相互関連性
コミュニティ ←→ 仕事 ←→ 住宅
↓ ↓ ↓
相互に影響し合う
↓
総合的アプローチが必要
例:古民家ゲストハウス経営
- 住宅:古民家改装
- 仕事:ゲストハウス経営
- コミュニティ:宿泊客・住民との交流
📝 小論文化:3つのテーマ別 完全攻略
【テーマ①】コミュニティ問題の変化と要因
小論文設問(作成例)
「課題文⑴を読み、農山村への移住における『コミュニティ』問題がどのように変化してきたか、その変化の要因は何かを分析した上で、今後の望ましいコミュニティのあり方について、あなたの考えを800字程度で述べなさい。」
答案構成(800字)
序論(100字)
盛り込む内容
- 移住における三大課題の確認
- コミュニティ問題の重要性
- 問題認識の変化の概観
例文
農山村への移住には「仕事」「住宅」「コミュニティ」という三つの
大きなハードルがある。中でもコミュニティ問題は、近年その認識
自体が大きく変化しており、この変化を正しく理解することが、
今後の地方創生にとって重要な鍵となる。
本論①:問題の変化(250字)
段落の役割 従来の問題認識と現在の問題認識を対比させる
盛り込む要素
- 従来の問題認識
- 現在の問題認識
- 何が「変化」したのか
模範的な展開例
従来、農山村のコミュニティ問題は、地域社会の閉鎖性に対する
都市住民の違和感という、一方向的な構図で捉えられてきた。
「濃密過ぎる人間関係」に対する都市住民の嫌悪感が前面に出され、
農山村側の改善が求められる形であった。
しかし現在では、問題の本質が変化している。課題文で玉村豊男氏が
指摘するように、「田舎の人たちは、都会から来る人たちが自分たちの
『優しさと温かさ』を恐れていることが、わからない」というギャップ
こそが問題の核心なのである。つまり、都市住民の思い込みと農山村
住民の善意のすれ違いという、双方向のコミュニケーション不足が
本質的課題として認識されるようになった。
さらに重要なのは、濃密な人間関係が「障壁」から「地域資源」へと
転換しうるという認識である。都市における人間関係の希薄化に
疲れた若者にとって、農山村の濃密な関係性はむしろ魅力となり、
移住を促進する要因になりうるのだ。
使える表現・接続詞
- 「従来~であったが、現在では~」
- 「一方向的な構図から双方向的な理解へ」
- 「マイナスからプラスへの転換」
- 「課題文で○○氏が指摘するように」
本論②:変化の要因(250字)
段落の役割 なぜこのような変化が起きたのか、社会的背景を分析
盛り込む要素
- 都市側の変化
- 農山村側の変化
- 制度・政策の変化
模範的な展開例
この変化の背景には、複数の社会的要因がある。
第一に、都市部における人間関係の希薄化と匿名性の進展である。
孤独や社会的孤立が深刻化する中で、「つながり」への渇望が生まれ、
農山村の濃密な関係性を肯定的に捉える価値観が広がった。
第二に、移住者の増加による経験の蓄積である。成功事例や失敗事例が
共有されることで、双方の相互理解が深まり、問題の本質が明らかに
なってきた。
第三に、地域おこし協力隊などの外部人材の導入である。彼らは
都市と農山村の橋渡し役となり、「気づき」を促す存在として機能
している。課題文でも、都市農村交流によって閉鎖的だった集落が
変化する可能性が指摘されており、問題の「可変性」が認識されて
いる。
第四に、情報発信手段の多様化である。SNSなどを通じて移住者の
リアルな声が可視化され、ステレオタイプな認識が崩れてきた。
使える表現
- 「第一に~、第二に~、第三に~」
- 「~という背景がある」
- 「~が明らかになってきた」
- 「課題文でも~と指摘されている」
本論③:望ましいあり方(150字)
段落の役割 分析を踏まえた上で、今後の方向性を提案
盛り込む要素
- 相互理解の促進策
- 柔軟な対応
- 外部人材の活用
模範的な展開例
今後のコミュニティのあり方として、三つの視点が重要である。
一つ目は、双方向のコミュニケーション促進である。移住前の体験
プログラムや事前マッチングにより、相互の期待値をすり合わせる
ことが不可欠だ。
二つ目は、移住者の多様性への対応である。濃密な関係を求める層と
避けたい層の双方に配慮し、画一的でない受け入れ方を模索すべきだ。
三つ目は、地域おこし協力隊などの外部人材を積極的に活用し、
「気づき」を促すことである。コミュニティの可変性を活かせば、
閉鎖的な集落も開放的に変わりうるのだ。
結論(50字)
盛り込む内容
- 全体のまとめ
- 前向きな展望
例文
コミュニティ問題は固定的ではなく可変的である。相互理解に基づく
新しい関係性の構築こそが、持続可能な地方創生の鍵となる。
評価ポイント
✅ 高評価される要素
- 「変化」を明確に対比構造で示している
- 課題文を効果的に引用している
- 複数の要因を論理的に整理
- 独自の視点・提案がある
❌ 減点される要素
- 変化の内容が不明確
- 要因分析が浅い
- 課題文を読んでいない印象
- 抽象論に終始
【テーマ②】ルールの明文化
小論文設問(作成例)
「課題文⑵で紹介されている『集落の教科書』の取り組みについて、地域ルールを明文化することのメリットと注意すべき点を整理した上で、このような取り組みが地方創生に果たす役割について、あなたの考えを800字程度で述べなさい。」
答案構成(800字)
序論(100字)
例文
農山村への移住において、受け入れ側と移住者のミスマッチは
深刻な問題である。この解決策として注目されるのが、課題文で
紹介されている「集落の教科書」のような、地域ルールの明文化
である。この取り組みは、単なる情報提供を超えた多面的な効果を
もたらしている。
本論①:明文化のメリット(300字)
三層構造で整理
- 移住者側のメリット
- 受け入れ側のメリット
- 地域全体のメリット
模範的な展開例
ルールの明文化には、三つの層でメリットがある。
第一に、移住者にとってのメリットである。課題文では「良いことも、
そうでないことも」伝えるという姿勢が示されているが、これにより
移住者は事前に地域の実情を把握し、「こんなはずではなかった」
というミスマッチを防ぐことができる。暗黙のルールへの不安が
軽減され、心理的な参入障壁が下がるのだ。
第二に、受け入れ側住民にとってのメリットである。「当たり前」を
言語化する作業は、地域の自己認識を促す。課題文の石川県七尾市
高階地区では、9つの町それぞれのルールが明文化された結果、
「互いの理解が進み、地域を盛り上げようという機運も高まった」
という。住民自身が地域の魅力を再発見する契機となるのである。
第三に、地域全体にとってのメリットである。透明性が高まることで
トラブルが未然に防がれ、移住者の定着率が向上する。また、
「一緒に地区を盛り上げてくれる人」という人物像を明確にする
ことで、「人口を増やす」のではなく「仲間を増やす」という
持続可能な移住促進が実現する。
本論②:注意点(250字)
模範的な展開例
一方で、明文化には注意すべき点もある。
最も重要なのは、ルールの固定化・硬直化の危険性である。課題文で
田畑事務局長が警告するように、「教科書ができたことでルールが
固定化してしまう恐れがある」。集落は時代や状況で変わるものであり、
一度作った教科書を不変のものとしてはならない。定期的な見直しの
仕組みを組み込み、「〇年〇月版」と明記するなど、暫定性を強調
すべきである。
また、作成プロセスにも配慮が必要だ。一部の長老だけで決めるので
はなく、若い世代や移住者の視点も取り入れることで、多様性を
尊重したルール作りが可能になる。
さらに、明文化が排他性の正当化につながらないよう注意すべきだ。
「教科書に書いてあるから従え」という硬直的な運用ではなく、
個々の移住者の個性を尊重するバランス感覚が求められる。
本論③:地方創生への役割(100字)
例文
このような取り組みは、地方創生において重要な役割を果たす。
情報の透明性が信頼を生み、持続可能な移住促進の基盤となる。
さらに、住民自身が地域を見つめ直すことで、内発的な地域活性化
にもつながるのである。
結論(50字)
例文
ルールの明文化は、透明性と柔軟性のバランスが鍵である。この
バランスを保つことで、真の地方創生が実現する。
【テーマ③】ミスマッチを防ぐ総合対策
小論文設問(作成例)
「課題文⑴⑵を踏まえ、農山村への移住において、受け入れ住民側と移住者とのミスマッチを防ぐために、コミュニティ・仕事・住宅の3つの面から、どのような対策が考えられるか。具体的な提案を含めて1,000字程度で述べなさい。」
答案構成(1,000字)
序論(150字)
盛り込む内容
- 三大課題の相互関連性
- ミスマッチの構造的要因
- 総合的アプローチの必要性
例文
農山村への移住には、「コミュニティ」「仕事」「住宅」という三つの
課題がある。これらは独立した問題ではなく、相互に深く関連している。
ミスマッチが生じる根本的な要因は、情報の非対称性と相互理解の不足
にあり、これを解消するには三つの面を統合した総合的アプローチが
不可欠である。本稿では、課題文の事例を踏まえながら、具体的な
対策を提案したい。
本論①:コミュニティ面の対策(300字)
移住前・移住後に分けて整理
例文
コミュニティ面では、移住前と移住後の両面で対策が必要である。
移住前の対策として、第一に「集落の教科書」のような地域ルールの
明文化が有効だ。課題文では「良いことも悪いことも」伝える姿勢が
示されており、これにより移住者は地域の実情を把握できる。第二に、
お試し移住や体験プログラムにより、実際の地域の雰囲気を体感する
機会を設けるべきだ。第三に、課題文の石川県の事例にあるように、
複数回の事前マッチングを実施し、「一緒に地区を盛り上げてくれる人」
という人物像を共有することで、相互の期待値をすり合わせることが
重要である。
移住後の対策としては、地域おこし協力隊OBなどの経験者をメンター
として配置し、困った時の相談窓口を設けるべきだ。また、いきなり
すべての地域活動への参加を求めるのではなく、移住者のペースに
合わせた段階的な関わり方を認めることで、過度な負担を避けられる。
さらに、移住者同士の横のつながりを作ることで、孤立を防ぐことも
重要である。
本論②:仕事面の対策(250字)
情報提供・仕事創出・支援制度の3軸
例文
仕事面では、情報提供の充実、仕事創出の支援、制度的支援の三つが
重要である。
まず、地域内の雇用情報を詳細に提供し、給与水準や労働条件を
現実的に示すことで、「思っていたより収入が少ない」といった
ミスマッチを防ぐべきだ。
次に、移住者のスキルと地域のニーズをマッチングさせる仕組みが
有効である。課題文では、英会話教室やそば打ち教室など、都市で
培ったスキルを活かす事例が紹介されている。このように、移住者の
専門性を地域の課題解決に結びつけることで、Win-Winの関係を
構築できる。また、テレワーク環境を整備し、都市部の仕事を継続
しながら移住できる選択肢を提供すべきだ。
さらに、農業研修制度や初期投資への補助など、新たな仕事を始める
ための支援制度を充実させることも重要である。
本論③:住宅面の対策(200字)
例文
住宅面では、空き家バンクの充実が基本となる。課題文の事例では、
地域の空き家を一軒ずつ回って状態を確認しているが、このような
丁寧な情報収集が重要だ。改修の必要性や費用を明示することで、
移住後の「こんなはずじゃなかった」を防げる。
また、お試し住宅を提供し、短期滞在を通じて実際の生活を体験
できるようにすべきだ。さらに、改修・リノベーションへの補助や
DIY支援により、移住者が自分で住宅を整える過程を支援することも
有効である。
北海道や旭川のような寒冷地では、冬季の雪対策や暖房費用など、
地域特有の課題についても事前に十分な情報提供が必要である。
本論④:3分野の連動(50字)
例文
これら三つの分野は連動している。課題文にある古民家ゲストハウスの
事例のように、住宅・仕事・コミュニティを統合した取り組みが
理想的である。
結論(100字)
例文
ミスマッチを防ぐには、情報の透明性、段階的な支援、そして「人口を
増やす」のではなく「仲間を増やす」という視点の転換が不可欠である。
三つの分野を統合し、移住者と地域がともに成長する関係を構築する
ことが、持続可能な地方創生への道である。
💡 小論文執筆の実践テクニック
✅ 課題文の効果的な引用方法
パターン1:直接引用
良い例
課題文で玉村豊男氏は「田舎の人たちは、都会から来る人たちが
自分たちの『優しさと温かさ』を恐れていることが、わからない」
と指摘している。このギャップこそが問題の本質である。
悪い例
課題文に書いてあった。
パターン2:要約引用
良い例
課題文では、石川県七尾市高階地区の事例が紹介されている。
この地区では「集落の教科書」を作成し、各町のルールを明文化
した結果、住民相互の理解が進み、移住者の定着にもつながった
という。
パターン3:概念の引用
良い例
小田切徳美氏が指摘するように、コミュニティ問題は「固定的な
ものでなく可変的」である。都市農村交流による「気づき」が
集落を変える可能性があるのだ。
✅ 論理展開の型(使えるフレームワーク)
型1:時系列型
従来は~であった
↓
しかし現在では~になっている
↓
この変化の背景には~がある
↓
今後は~すべきである
型2:問題解決型
~という問題がある
↓
その原因は~である
↓
解決策として~が考えられる
↓
これにより~が実現する
型3:多角的分析型
第一に、~の視点から見ると~
第二に、~の視点から見ると~
第三に、~の視点から見ると~
これらを総合すると~
型4:対比型
A(移住者)にとっては~
一方、B(受け入れ側)にとっては~
双方の視点を統合すると~
✅ 説得力を高める具体例の挙げ方
課題文からの具体例
効果的な使い方
課題文で紹介されている石川県七尾市高階地区では、「集落の教科書」
をA4判フルカラーの冊子として1500部作成し、ホームページでも
公開している。さらに、移住希望者と協議会メンバーが事前に複数回
顔を合わせる「マッチング」を実施することで、トラブルを未然に
回避している。
一般的な事例の挙げ方
例えば、地域おこし協力隊制度は、都市と農山村の橋渡し役として
機能している。任期終了後も地域に定住する隊員は約6割に上り、
外部人材が地域活性化に果たす役割は大きい。
旭川・北海道への言及
特に北海道や旭川のような寒冷地では、冬季の雪対策が移住の
大きなハードルとなる。除雪機の共同利用や、暖房費用の補助など、
地域特性に応じた支援が不可欠である。
✅ 接続詞・論理マーカーの使い方
順序を示す
- 第一に、第二に、第三に
- まず、次に、さらに、最後に
- 一つ目は、二つ目は、三つ目は
対比を示す
- 一方で、他方で
- しかし、ところが
- それに対して
- 従来は~、現在では~
理由を示す
- なぜなら
- というのも
- その理由は
- ~からである
結果を示す
- したがって
- その結果
- このように
- それゆえ
具体化する
- 例えば
- 具体的には
- とりわけ
- 特に
まとめる
- 以上のように
- このように見てくると
- 総じて
- 要するに
⏰ 時間配分の実践モデル
90分での小論文作成(1,000字想定)
| 時間 | 段階 | 具体的作業 | コツ |
|---|---|---|---|
| 0-5分 | 課題文1回目 | 通読・全体把握 | 急がず丁寧に |
| 5-10分 | 課題文2回目 | 精読・キーワード抽出 | 下線を引く |
| 10-15分 | 設問確認 | 何が問われているか明確化 | 設問を2回読む |
| 15-25分 | 構想 | ブレインストーミング | メモを取る |
| 25-30分 | 構成 | 序論・本論・結論の骨子 | 字数配分も決める |
| 30-35分 | 序論 | 清書 | 問題提起を明確に |
| 35-60分 | 本論 | 清書 | 最も時間をかける |
| 60-70分 | 結論 | 清書 | 簡潔に |
| 70-80分 | 見直し1回目 | 論理・内容チェック | 削除・追加 |
| 80-90分 | 見直し2回目 | 誤字脱字チェック | 最終確認 |
時間管理のコツ
✅ 構想段階を省略しない
- 「いきなり書く」は失敗の元
- 10分かけても構想をしっかり
✅ 本論に時間を集中
- 序論・結論は簡潔でOK
- 本論の厚みが評価を分ける
✅ 見直し時間は必須
- 最低10分は確保
- 致命的ミスを防ぐ
✅ 字数調整の余地を残す
- 800字なら700字で一旦完成
- 余裕があれば加筆
📚 背景知識の補強(必須)
小論文の説得力を高めるために、以下の知識を押さえましょう。
1. 地方創生の基礎知識
日本の人口動態
- 総人口減少(2008年ピーク)
- 東京一極集中の加速
- 地方の人口減少・高齢化
- 限界集落の増加(人口の50%以上が65歳以上)
地方創生政策
- まち・ひと・しごと創生総合戦略(2014年~)
- 地域おこし協力隊(2009年~、累計7,000人超)
- 移住支援金制度
- 関係人口の創出
2. 移住の現状
統計データ
- 移住相談件数:年間約50万件(2022年)
- 20-30代の若年層が中心
- テレワーク普及により増加傾向
移住先の傾向
- 長野県、山梨県、静岡県などが人気
- 完全移住よりも二拠点生活も増加
- 北海道は広大な自然が魅力
3. 社会学的概念
コミュニティの類型
- ゲマインシャフト(共同社会):伝統的・情緒的紐帯
- ゲゼルシャフト(利益社会):近代的・機能的紐帯
- 都市=ゲゼルシャフト、農山村=ゲマインシャフト
ソーシャルキャピタル(社会関係資本)
- 信頼・互酬性・ネットワーク
- 地域の結束力
- 移住者の受け入れと社会関係資本
情報の非対称性
- 情報を持つ側と持たない側の格差
- 市場の失敗の一因
- 明文化による解消
4. 経済学的視点
市場の失敗
- 民間だけでは最適な資源配分ができない
- 公的介入の必要性
外部経済効果
- 移住者が地域にもたらす波及効果
- 直接的便益を超えた社会的便益
マッチング理論
- 需要と供給の適切な組み合わせ
- 情報の重要性
5. 北海道・旭川の特性
自然環境
- 広大な土地(北海道は日本の約22%)
- 豊かな自然資源
- 四季がはっきりしている
気候
- 冬の厳しさ(旭川の最低気温は-30℃以下も)
- 積雪量が多い
- 雪対策が生活の必須スキル
産業
- 農業(米、小麦、野菜)
- 林業
- 観光業
- 食品加工業
課題
- 人口減少が深刻
- 若者の道外流出
- 高齢化率の上昇
💯 評価される小論文の特徴(チェックリスト)
内容面(50点)
問題理解(10点)
- 設問の要求を正確に理解している
- 課題文の論点を把握している
- テーマの本質を捉えている
論理性(15点)
- 主張と根拠が明確
- 論理の飛躍がない
- 因果関係が適切
- 反論への配慮がある
具体性(15点)
- 課題文の事例を効果的に引用
- 独自の具体例を挙げている
- 抽象論に終わっていない
- 数字・データがある
独自性(10点)
- 自分なりの視点がある
- オリジナルの提案がある
- 単なる要約でない
- 旭川への言及がある
構成面(30点)
全体構成(10点)
- 序論・本論・結論が明確
- 段落分けが適切(3-5段落)
- 各段落の役割が明確
- 論理的な展開
段落構成(10点)
- 各段落にトピックセンテンスがある
- 一段落一主題の原則
- 段落の長さが適切
- 段落間のつながりが自然
字数(10点)
- 指定字数±10%以内
- 序論・本論・結論のバランス良好
- 本論が最も充実している
表現面(20点)
文体・語彙(10点)
- 「である調」で統一
- 一文が適切な長さ(60-80字程度)
- 主語・述語が明確
- 専門用語を適切に使用
- 同じ表現の繰り返しを避ける
文法・表記(10点)
- 誤字脱字がない
- 送り仮名が正しい
- 句読点の使い方が適切
- 原稿用紙の使い方が正しい
- 漢字とひらがなのバランス
❌ よくある失敗パターンと対策
失敗1:課題文を読んでいない印象
症状
- 課題文への言及がない
- 引用が一切ない
- 一般論だけで書いている
対策
- 必ず課題文から引用
- 「課題文では~」という表現を使う
- 具体的な事例名を挙げる
失敗2:設問に答えていない
症状
- テーマ①なのに「変化」を述べていない
- テーマ②なのに「注意点」がない
- テーマ③なのに3分野のうち1つしか書いていない
対策
- 設問を2回読む
- 設問の要素をメモする
- 書きながら設問を確認
失敗3:抽象論に終始
症状
- 「相互理解が大切」だけ
- 「協力すべき」「努力すべき」の連発
- 具体例がゼロ
対策
- 「例えば~」を必ず入れる
- 課題文の事例を活用
- 「具体的には~」で補足
失敗4:論理の飛躍
症状
- 「したがって」の前後がつながらない
- 主張に根拠がない
- 因果関係が不明
対策
- 「なぜなら~」を意識
- 主張→根拠のセットで書く
- 接続詞の誤用に注意
失敗5:時間配分ミス
症状
- 結論が書けなかった
- 見直し時間がない
- 序論に時間をかけすぎ
対策
- タイムテーブルを作る
- 本論から書く方法も
- 最低10分は見直し時間確保
失敗6:字数不足・超過
症状
- 600字しか書けなかった
- 1,300字書いてしまった
対策
- 構成段階で字数配分
- 700字で一旦完成させる
- 削る箇所を想定しておく
🎓 予備校からの実践アドバイス
練習方法のステップ
Step1:まずは時間無制限で書く
- 辞書・資料を見ながらOK
- 納得いくまで推敲
- 「完璧な答案」を目指す
Step2:模範解答と比較
- どこが良いか、悪いか分析
- 表現を学ぶ
- 構成を学ぶ
Step3:同じテーマで書き直し
- より良い答案を目指す
- 別の構成で試す
- 複数バージョン作成
Step4:時間制限をつける
- 最初は90分
- 慣れたら80分、70分
- 本番想定の訓練
Step5:添削を受ける
- 予備校講師に見てもらう
- 客観的評価を受ける
- 改善点を明確化
添削で見るポイント(講師目線)
A評価(90点以上)の特徴
- 課題文を深く理解
- 論理的で説得力がある
- 具体例が豊富
- 独自の視点がある
- 表現が洗練されている
B評価(80-89点)の特徴
- 課題文を理解している
- 論理的に書けている
- 具体例がある
- 標準的な答案
C評価(70-79点)の特徴
- 基本は押さえている
- やや抽象的
- 具体例が少ない
- 独自性に欠ける
D評価(60-69点)の特徴
- 理解が不十分
- 論理が弱い
- 具体例がほとんどない
- 設問に答えていない部分がある
E評価(59点以下)の特徴
- 課題文を読んでいない
- 論理が破綻
- 設問に答えていない
- 字数不足
📝 練習用:3つのテーマを書いてみよう
課題1(初級)
テーマ①を600字で書いてみましょう。
- 制限時間:60分
- 「変化」と「要因」を明確に
課題2(中級)
テーマ②を800字で書いてみましょう。
- 制限時間:80分
- 「メリット」と「注意点」の両方を
課題3(上級)
テーマ③を1,000字で書いてみましょう。
- 制限時間:90分
- 3分野すべてに言及
🎯 最後に:合格への道
この集団討論課題を小論文として書く練習は、以下の3つの効果があります:
1. 集団討論の準備
- 自分の意見が明確になる
- 論点整理ができる
- 15分の準備時間で何を考えるべきか分かる
2. 小論文試験の対策
- 学校推薦型選抜(小論文)の練習になる
- 地域課題への理解が深まる
- 論述力が向上する
3. 大学での学びの準備
- 経済学部で学ぶテーマの予習
- 論理的思考力の養成
- 地域貢献への意識
旭川市立大学が求めるのは、地域に根ざし、地域課題に真摯に向き合い、論理的に考え、実践的に行動できる人材です。
この課題に真剣に取り組むことで、あなたはその資質を磨くことができます。



