「家ではどうしても勉強にならない」
そう感じている受験生は、決して少なくありません。
机に向かっても数分でスマホに手が伸びる。
気づけば部屋を片づけ始めている。
勉強を始めるまでに、やたらと時間がかかる――。
そんな自分を見て、「自分は意志が弱いんだ」「やる気が足りないんだ」と責めてしまっていませんか?
でも実は、家で集中できない原因は意志の弱さではありません。
そこには、心理と環境が深く関係しています。
一方で、家でも毎日5時間以上集中して勉強できている受験生がいるのも事実です。
つまり、家が勉強に向かない場所なのではなく、「環境の作り方」と「思考の仕組み」 に違いがあるだけなのです。
この記事では、なぜ家だと集中できないのかを心理面から整理し、誰でも実践できる「集中できる環境の整え方」を具体的に解説します。

記事の監修者:五十嵐弓益(いがらし ゆみます)
【全国通信教育】最短合格オンラインのスカイ予備校 校長
■小論文指導歴27年
これまでに指導した生徒は4000人以上、独自のSKYメソッドを考案で8割取る答案の作り方を指導。
2020年4月から、完全オンラインの大学受験予備校となる。過去3年間で国公立大学合格125名。
高1から入会者は国公立大学合格率93%
高2から入会者は国公立大学合格率86%
高3の4月から入会者は国公立大学合格率73%。
スカイ予備校の指導方針は、「大人になっても役に立つ勉強法の習得」です。「自分の人生は自分で切り拓く」教育をします
集中できないのは「意志が弱いから」ではない
「集中できない=意志が弱い」と思い込んでいる人は多いですが、これは誤解です。
心理学では、集中力は意志力(ウィルパワー)だけで決まるものではなく、環境・習慣・認知の仕組みが大きく影響すると考えられています。
つまり、集中できないのは努力不足ではなく、集中しにくい状況に置かれているだけなのです。
特に家という空間は、食事・休息・娯楽など「リラックスする行動」が長年積み重なった場所。
そのため脳が「勉強モード」に切り替わりにくい特徴があります。
学校や自習室では集中できるのに、家だと続かないのは、意志の問題ではなく脳のスイッチ構造の違いによるものです。
家で集中力が途切れる心理的な理由
受験期は、「勉強しなければ」というプレッシャーと「本当は休みたい」という欲求が常にぶつかっています。
この内部の葛藤が、集中を妨げる大きな原因です。
勉強を始めようとすると、
「まだ時間がある」
「今日は疲れている」
といった言い訳が浮かぶのは、人が不快な行動を避けようとする現実逃避的回避という心理現象。
さらに、
「頑張っても結果が出るかわからない」
「昨日も集中できなかった」
といった自己効力感の低下も、集中力を奪います。
だからこそ、意志力に頼るのではなく、集中できる仕組みを先に作ることが必要なのです。
家という空間が持つ「甘さ」と「誘惑」
集中を妨げる最大の敵は、誘惑と習慣です。
そして家は、その両方が揃っています。
① 誘惑が多すぎる
スマホ、ゲーム、漫画、テレビ、ベッド…。
人は視界に入る刺激に注意を奪われる生き物です。
集中できないのは、意志が弱いのではなく、誘惑が強すぎるのです。
② 家=休む場所という記憶
家は長年「くつろぐ場所」として脳に刻まれています。
これは文脈依存記憶と呼ばれ、
環境と行動が強く結びつく現象です。
③ 家族からの刺激
生活音や会話、呼びかけも集中を分断します。
集中が途切れるたび、元に戻るまで15分以上かかるとも言われています。
環境と習慣はセットで変える
集中力は、「環境」と「習慣」が噛み合ったときに生まれます。
人の脳は
「いつ・どこで・何をするか」
というパターンを学習し、自動化します。
机に座る=スマホ
という結びつきができている限り、集中は生まれません。
逆に、
机に座る=勉強
という回路を作れれば、努力せずに集中できるようになります。
■ 集中できる環境を「設計」する
まず取り組むべきは、環境づくりです。
① 誘惑を物理的に遠ざける
スマホは別の部屋へ。
漫画・ゲームは視界から消す。
「見えない・触れない・すぐ使えない」が基本です。
② 集中専用スペースを作る
部屋の一角でも構いません。
「ここでは勉強しかしない」場所を決めましょう。
③ 視覚刺激と雑音を減らす
机の上は今使う教材だけ。
音が気になる人は耳栓やホワイトノイズも有効です。
集中スイッチを「習慣」で作る
集中は、意志ではなく条件反射で起こせます。
おすすめは、行動の儀式化。
・机を拭く
・深呼吸を3回
・タイマーを5分セット
こうした動作を繰り返すことで、「この行動=勉強開始」と脳が学習します。
5分ルールで最初の一歩を軽くする
集中できない人の最大の壁は「始めること」。
人は始めてしまえば集中できる生き物です。
だからこそ、「とりあえず5分だけ」 が最強のルール。
5分後には、自然と続けたくなります。
タイマーで時間を区切る
25分集中+5分休憩のように、時間を区切ることで集中力は最大化します。
ダラダラより、短く鋭く。
これが家勉強のコツです。
自分を責めず、仕組みで解決する
集中できないのは、性格でも才能でもありません。
仕組みの未完成なだけです。
環境を整え、習慣を作れば、家は「最強の勉強場所」に変わります。
まとめ
・家で集中できないのは自然なこと
・原因は意志ではなく環境と心理
・誘惑を減らし、習慣を作れば集中は再現できる
集中力は、生まれつきではなく鍛えられる技術です。
今日ひとつ環境を変えるだけで、明日の勉強は確実に変わります。
自分を責めず、仕組みを整える。
それが合格への、確かな一歩です。



