小論文でよくあるミス|減点を避けるポイント

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小論文でよくあるミス|減点を避けるポイント

小論文試験では、内容や発想そのものが良くても、基本的なミスが重なることで「読みにくい」「論旨が不明確」「設問に答えていない」と判断され、想像以上に大きく減点されることがあります。特に小論文は、限られた時間の中で評価者に“伝わる形”で書き切る試験です。そのため、知識や意見の質だけでなく、文章の型・論理の通り道・日本語の精度が点数に直結します。

本記事では、多くの受験生が犯しがちな典型的ミスを、①設問理解 ②構成・論理 ③根拠・具体性 ④表現・日本語 ⑤見直し・形式の5カテゴリーに整理し、それぞれ「なぜ減点されるのか」「どう直せば点が伸びるのか」を、ありがちな失敗例と改善例を交えながら具体的に解説します。読むだけで終わらせず、最後には自分の答案をそのままチェックできる改善ポイントも提示するので、今書いている小論文にすぐ反映できるはずです。

基本に戻る場合は、こちらも読もう 小論文の基本構成を押さえよう

1. 形式面のミス:原稿用紙の使い方と文体の誤り

【ミス①】段落の一字下げ忘れ

段落の始まりは必ず一字下げ(一マス空ける)が原則ですが、これを忘れると読みにくい答案になります。特に、行頭から書き始める場合も一字下げが必要です。

❌ 誤った例:
少子化は深刻な問題である。
その原因は複数ある。

✅ 正しい例:
□少子化は深刻な問題である。
□その原因は複数ある。
(□は一マス空けることを示す)

【ミス②】文体の混在

「だ・である調」と「です・ます調」を混ぜて使うことは、小論文では最も避けるべきミスの一つです。必ずどちらかに統一し、小論文では原則として「だ・である調」を使います。

❌ 誤った例:
少子化対策が必要です。なぜなら、労働力が減少するからである。政府は支援を拡充すべきです。

✅ 正しい例:
少子化対策が必要である。なぜなら、労働力が減少するからである。政府は支援を拡充すべきである。

【ミス③】句読点の誤用

句読点(、。)の打ち方にもルールがあります。行頭に句読点が来ることは避け、前の行の最後のマスに文字と一緒に収めます。また、読点(、)を打たずに一文が長くなりすぎると、読みにくくなります。

❌ 誤った例:
少子化の原因は経済的不安や長時間労働による仕事と育児の両立困難さや結婚観の変化や地域コミュニティの衰退など複合的な要因が絡み合っている。(読点なし、118字の一文)

✅ 正しい例:
少子化の原因は複合的である。経済的不安、長時間労働による仕事と育児の両立困難、結婚観の変化、地域コミュニティの衰退など、様々な要因が絡み合っている。

2. 構成面のミス:論理展開の問題

【ミス④】序論で主張が不明確

序論では「何について論じるのか」「自分の立場は何か」を明確に示す必要がありますが、曖昧な書き出しのまま本論に入ってしまうケースが多く見られます。

❌ 誤った例:
現代社会には様々な問題がある。環境問題もその一つである。私たちはこれについて考える必要がある。

✅ 正しい例:
地球温暖化対策として、個人の努力と政策的規制のどちらを優先すべきか。私は、両者は相互補完的であり、個人の行動変容を促す政策設計こそが最も実効性が高いと考える。

【ミス⑤】本論で根拠が不足

主張だけを述べて、それを裏付ける具体例やデータを示さないと、説得力のない答案になります。「なぜそう言えるのか」を常に示す必要があります。

❌ 誤った例:
教育格差は深刻な問題である。これを解決する必要がある。政府は対策を講じるべきだ。

✅ 正しい例:
教育格差は深刻な問題である。文部科学省の調査によれば、世帯年収400万円未満と1200万円以上の世帯では、子どもの学力テスト正答率に約20ポイントの差が生じている。この格差は、低所得世帯の子どもが塾に通えないなど、経済的理由による学習機会の不平等に起因する。したがって、政府は給付型奨学金の拡充など、経済的支援を強化すべきである。

【ミス⑥】結論が本論と矛盾

序論で示した主張と、結論で述べる内容が一貫していないと、論旨が不明確になります。本論で論じた内容を踏まえて、序論の主張を再確認することが重要です。

❌ 誤った例:
序論:「個人の努力が環境問題解決の鍵である」
結論:「結局、政府の規制がなければ環境問題は解決しない」

✅ 正しい例:
序論:「環境問題解決には個人の努力と政策的規制の両方が必要である」
結論:「以上のように、個人の行動変容を促す政策設計により、環境問題への実効性ある取り組みが可能となる」

3. 表現面のミス:言葉の使い方の誤り

【ミス⑦】主語と述語のねじれ

一文が長くなると、主語と述語が対応しなくなる「ねじれ」が発生しやすくなります。特に「〜は〜が」という構造には注意が必要です。

❌ 誤った例:
少子化の原因は、経済的不安や育児と仕事の両立困難が挙げられる。

✅ 正しい例①:
少子化の原因としては、経済的不安や育児と仕事の両立困難が挙げられる。

✅ 正しい例②:
少子化の原因は、経済的不安や育児と仕事の両立困難である。

【ミス⑧】「〜たり」の不完全使用

「〜たり」を使う場合は、必ず「〜たり、〜たりする」と対にする必要があります。一つだけで終わらせることは誤用です。

❌ 誤った例:
教育格差は、学力低下を招いたり、将来の所得格差につながる。

✅ 正しい例①:
教育格差は、学力低下を招いたり、将来の所得格差につながったりする。

✅ 正しい例②:
教育格差は、学力低下を招き、将来の所得格差につながる。

【ミス⑨】曖昧な指示語の多用

「これ」「それ」「あれ」などの指示語が何を指すのか不明確だと、読み手は混乱します。特に、複数の事柄を述べた後の「これ」は避けるべきです。

❌ 誤った例:
少子化対策として経済的支援と保育環境整備が提案されている。これは重要である。それにより、これが解決する。

✅ 正しい例:
少子化対策として経済的支援と保育環境整備が提案されている。これらの施策は、子育て世帯の負担を軽減するため重要である。経済的支援により出産をためらう要因が解消され、保育環境整備により仕事と育児の両立が可能になる。

4. 論理面のミス:思考の問題

【ミス⑩】論理の飛躍

前提と結論の間に論理的なつながりがない「論理の飛躍」は、小論文で最も致命的なミスです。「AだからB」という主張をする際、その因果関係を説明する必要があります。

❌ 誤った例:
日本は少子化が進んでいる。だから、移民を受け入れるべきである。

✅ 正しい例:
日本は少子化が進んでおり、労働力人口が減少している。この労働力不足を補う方法として、女性や高齢者の活用、AI技術の導入、移民の受け入れなどが考えられる。その中でも、移民受け入れは即効性があり、多様性による社会の活性化も期待できる。ただし、言語教育や文化的摩擦への対応など、受け入れ体制の整備が前提となる。

5. 内容面のミス:設問理解の誤り

【ミス⑪】設問に答えていない

「〜について述べよ」という設問に対して、関連する別のテーマについて書いてしまうミスは意外に多く見られます。必ず設問を正確に読み、何を問われているのかを確認しましょう。

設問例: 「少子化の原因について、あなたの考えを述べよ」

❌ 誤った答案:
少子化は深刻な問題である。対策として、保育所の増設や経済的支援が必要だ。政府は予算を増やすべきである。(原因ではなく対策を述べている)

✅ 正しい答案:
少子化の原因は複合的である。第一に、経済的不安が挙げられる。非正規雇用の増加により、若者が将来への見通しを持てず、結婚や出産をためらう。第二に、長時間労働による仕事と育児の両立困難がある。特に女性にとって、出産はキャリアの中断を意味することが多い。第三に、地域コミュニティの衰退により、子育てを支援する社会的ネットワークが失われている。これらの要因が相互に関連し、少子化を加速させている。

【ミス⑫】一般論だけで終わる

誰でも言えるような一般的な内容だけを述べ、自分なりの視点や深い考察がない答案は、高評価を得られません。問題の本質に踏み込んだ分析が求められます。

❌ 誤った例:
環境問題は重要である。一人ひとりが意識を持つことが大切だ。みんなで協力して地球を守ろう。

✅ 正しい例:
環境問題への取り組みには、「個人の意識改革」と「構造的変革」という二つの次元がある。確かに個人のエコ活動は重要だが、それだけでは限界がある。なぜなら、CO2排出の大部分は産業活動に起因するからだ。したがって、企業の生産システムそのものを変革する政策的誘導が不可欠である。具体的には、炭素税の導入により、環境負荷の高い製品のコストを上げ、消費者の選択を環境配慮型製品へと誘導する仕組みが有効だと考える。

まとめ:減点を避けるための5つのチェックポイント

小論文を書き終えたら、以下の5つのポイントを必ず確認しましょう。

  • ①形式チェック: 段落の一字下げ、文体の統一、句読点の位置は正しいか
  • ②構成チェック: 序論で主張を明示し、本論で根拠を示し、結論で再確認しているか
  • ③表現チェック: 主語と述語のねじれ、指示語の曖昧さ、接続詞の誤用はないか
  • ④論理チェック: 論理の飛躍、根拠不足、矛盾はないか
  • ⑤設問チェック: 問われていることに正確に答え、独自の視点を示しているか

これらの典型的なミスを避けることで、答案の完成度は大きく向上します。「書く→見直す→改善する」というサイクルを繰り返し、減点されない答案作成力を身につけましょう。

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