就活でAIを使う学生が82%の時代に ―「あなた自身」の価値をどう高めるか

五十嵐校長コラム

はじめに――82.7%という数字が、新しい格差を生み出してい

2026年、就活の風景が静かに、しかし決定的に変わりました。

AI Smiley調査によると、2026年卒学生のAI利用経験率は82.7%。わずか2年前(2024年卒)の39.2%から、2倍以上に急増しています。 エントリーシート(以下、ES)の推敲に使っている学生が68.8%にのぼり、その理由の1位は「作業時間の短縮」(62.6%)。

今や就活において、AIを使うことは「ズル」でも「特別なこと」でもありません。ごく当たり前の日常風景になっています。

しかし私は、この数字を前にして、一つの強い確信を持ちます。82%が同じツールを使う時代に、同じことをしていては逆に埋もれる。 この逆説こそが、今の就活の核心です。

全員がAIでESを整え、AIで面接対策をする。すると何が起きるか。応募書類が均質化し、企業側の採用担当者は「どれも似たような文章ばかり」という状況に直面します。実際、一部の大手企業はAI作成ESの氾濫に対応するために、書類選考そのものを廃止する動きすら始めています(日本経済新聞・2025年12月)。

ならば、この時代に本当に輝くものは何か。AIには絶対に書けない「あなた自身の物語」を、どれだけ言語化できるか——それが、就活の新しい本質的な戦場になっているのです。

これは大学入試の面接試験でも同様に重要なことです。

今日は、受験生の皆さんと保護者の方々に、「大学受験の先にある就活という現実」を見据えながら、今から磨くべき「本物の力」について語ります。


AI就活の実態――ESは通るが、面接で撃沈する理由

まず、AI就活の実態をデータで正直にお伝えします。

ある調査では、生成AIを活用してESを作成した学生は書類選考の通過率が高いという結果が出ています。文章のクオリティが上がり、論理が整い、誤字脱字もなくなる。「ツールとして使う」という観点では、AIはESを磨く助けになります。

ところが、こんな逆説的な現象も同時に起きています。AIでESを書いた学生ほど、面接で苦戦する傾向がある。

なぜか。理由は単純です。AIが書いたES上には「完璧な自己PR」が並んでいるのに、面接で人事担当者から「なぜそう思ったんですか?」「具体的なエピソードを聞かせてください」と深掘りされた瞬間、言葉が出てこない。なぜなら、そのESに書かれていることはAIが生み出した「それらしい言葉」であって、自分の本当の体験や想いではないからです。

さらに衝撃的なデータがあります。AI作成ESを「見抜けるか」という実証実験では、AIによる審査は80%の正解率を叩き出す一方、人事のプロでも正解率は60%*に留まりました(東京新聞・2025年)。つまり、AIはAIが書いた文章を最もよく見抜くのです。

そして2026年には、AI面接官も急速に普及しています。AI面接官は表情の微細な変化、声のトーン、言葉の揺れを分析します。「対策マニュアルを頭に入れて、それを喋っている人間」と「本当に体験したことを、自分の言葉で語っている人間」の違いを、AIは驚くほど精度高く見抜いてしまいます。

つまり現在の就活の構図はこうです——AIを使うのは当たり前。しかし、AIに書かせたESで臨む学生は面接で詰められ、AIが見抜き、人事が見抜く。 最終的に残るのは「本物の自分」を語れる人間だけ、という厳しい現実があります。


「ガチエン」vs「とりエン」――企業が本当に見ているもの

ここで、就活界の重要な概念を整理します。

「ガチエン」(本気のエントリー)——その企業への深い理解と、自分の経験・価値観との真剣な接続を踏まえた、覚悟ある応募。

「とりエン」(とりあえずエントリー)——とにかく数を打つことで内定の確率を上げようとする、薄い志望動機のままの応募。

AI就活の普及は、「とりエン」を飛躍的に容易にしました。AIを使えば、どの企業の志望動機も30秒で「それらしい文章」に仕上げられる。エントリー数が100社を超える学生が珍しくなくなった今、採用担当者は毎年、膨大な数の「とりエン」ESを処理することになります。

しかし、経験豊富な採用担当者は言います。本気で来ている学生は、最初の一文でわかる。

「とりエン」ESには共通の特徴があります——一般論しか書かれていない、企業の特定の事業や文化への言及がない、エピソードが曖昧で「誰にでも当てはまる話」になっている。これはAIが生成した文章の典型的なパターンでもあります。

一方、「ガチエン」のESには、その学生にしか書けない具体性あります。「御社の〇〇事業部が2024年に取り組んだ△△というプロジェクトに、私が大学で研究してきた□□が直接活かせると感じた」——こうした一文は、AIには生成できません。なぜなら、「その学生が大学で研究してきたこと」を、AIは知らないからです。

企業が本当に見ているのは、あなたがどれだけ「ガチ」かどうかです。 AIが氾濫するからこそ、「ガチエン」の希少価値は今まで以上に高まっています。


自己分析は、AIにできない最後の砦

では、「ガチエン」のESを書くためには何が必要か。その核心は自己分析です。

自己分析とは、「自分はどんな人間か」「何を大切にしているか」「どんな経験が自分を形成したか」「何に喜びを感じ、何に怒りを覚えるか」——こうした問いに、徹底的に向き合うプロセスです。

これこそが、AIに代替できない最後の砦です。

AIはあなたの過去の体験を知りません。あなたが小学校のとき抱いた挫折感も、高校の部活で泣きながら乗り越えた壁も、友達との関係の中で気づいた自分の価値観も——そのすべては、あなたの中にしか存在しない、唯一無二のデータです。

多くの学生が「AIに自己分析を手伝ってもらっている」と言いますが、AIにできるのはあくまで「整理の補助」です。「あなたがこの経験をしたとき、本当はどう感じていたか」という問いに、誠実に答えられるのはあなた自身だけです。

私が長年の指導の中で出会ってきた受験生・学生たちを見てきて痛感することがあります。自己分析の深さが、就活の結果を最終的に左右する。 模試の点数が高くても、志望校対策が完璧でも、「なぜその大学に行きたいのか」「大学で何をしたいのか」という問いに言葉が出てこない受験生は、入学後の就活でも同じ壁にぶつかります。

逆に、受験の時点から「自分はなぜこの選択をしているのか」を深く考えてきた学生は、就活の自己分析においても圧倒的な強さを発揮します。受験と就活は、自己理解という一本の太い軸でつながっているのです。


「生身の体験と言語化力」が、最強の差別化武器になる

AI就活時代に最後に輝くものは何か。私は断言します。「生身の体験」と、それを言葉にする「言語化力」の掛け合わせです。

AI面接官は2026年、声のトーンや表情の変化から「本音か建前か」を見抜けるようになっています。どれだけ「それらしい言葉」を並べても、それが自分の本当の体験から出た言葉でなければ、どこかに「揺れ」が生まれます。その揺れを、AIは見逃しません。

しかし同時に、2026年卒の就活調査では興味深いデータも出ています「AIが普及したからこそ、リアルで会いたい、リアルな体験談が聞きたい」という学生の本音が増加しているというのです(マイナビ就活調査・2026年)。学生も企業も、均質化した情報に疲れ始めている。リアルな声、リアルな体験、リアルな人間の言葉に、価値が戻ってきているのです。

では、「生身の体験」はどこから生まれるのか。それは日々の選択の積み重ねです。勉強の中で感じた疑問を放置せずに追いかけた経験。部活やボランティアで、うまくいかなかった失敗とその乗り越え方。アルバイトで初めて「お客さんの役に立った」と感じた瞬間——。これらは全て、あなただけの「ガチエン」の素材です。

そしてその体験を「言語化する力」こそが、受験における小論文や面接対策で鍛えられるスキルです。「自分の経験を論理的に整理し、相手に伝わる言葉で表現する」——この能力は、受験においても就活においても、そして社会人になってからも、一生使い続ける最強の武器です。


今の受験勉強が「就活力」の土台になる、という事実

ここで、高校生と保護者の皆さんに、大切なことをお伝えしなければなりません。

「就活のことは大学に入ってから考えればいい」——この考え方は、今の時代においては危険です。

大学受験に真剣に向き合い、自分の志望校を「なぜその大学なのか」「そこで何を学びたいのか」と深く考えた学生は、就活の「ガチエン」に不可欠な「自分の軸」を受験時点ですでに鍛えています。

私がスカイ予備校で指導する中で常に問いかけることがあります。「なぜこの大学に行きたいのか?」「合格した先に、どんな自分がいるのか?」——この問いに答えられない受験生は、残念ながら合格後の大学生活でも、就活でも、同じ壁にぶつかります。

一方、この問いに真剣に向き合った受験生は違います。大学での学びへの明確な目的意識を持ち、その目的に沿って経験を積み、就活で語れる「本物のエピソード」を自然に積み上げていける。

大学受験の戦略設計と合格マップの考え方は、大学受験は戦略が重要――設計図なき受験勉強は、設計図のない家づくりと同じであるでも詳しく論じています。受験の設計図を持つことが、就活の設計図を持つことにも直結しているのです。


保護者の方へ、そして受験生の皆さんへ

最後に、保護者の方々へ一つお願いがあります。

「いい大学に入れれば就職は安心」という時代は、静かに終わりを迎えています。ブランドだけを看板にして就活に臨む学生が、AI作成ESの海に沈んでいく現実が、今の就活市場には確かにあります。

大切なのは学歴ではなく、「この学生には話を聞きたい」と思わせる、本物の人間的厚みです。

それは一朝一夕には生まれません。高校時代から「なぜ」を問い続け、自分の体験を言葉にする習慣を積み重ねた人間だけが持てる強さです。

受験生の皆さんへ。AIが82%の学生の就活を均質化する時代だからこそ、残り18%の「AIに頼らない本物の言葉を持つ人間」の価値は、歴史上最も高くなっています。

今、机に向かって格闘しているその時間が、あなた自身の「唯一無二の物語」を作っています。その物語は、将来必ず、あなたの最強の武器になります。設計図を持って、一歩一歩進んでください。


スカイ予備校 校長 五十嵐
「AIが書けるエントリーシート(ES)より、あなたにしか語れない一言が、人の心を動かす」


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