15年後に後悔しないために〜大学選びが子どもの人生に与える本当の影響

五十嵐校長コラム

「先生、あの時もっと真剣に大学を選べばよかった」

私がこの言葉を初めて聞いたのは、20年以上前のことです。当時の教え子が、社会人になって数年が経った頃、ふと私に連絡をくれました。決して不幸な人生を歩んでいるわけではない。でも、どこか満たされない気持ちを抱えている。そして彼女はこう続けました。「あの4年間、もっと本気になれる場所を選んでいたら、今の自分は変わっていたかもしれない」と。

その言葉が、ずっと私の胸に刺さっています。

今、受験を目前に控えている皆さんに、私は声を大にして伝えたいことがあります。大学選びは、人生の方向性を決める、最初の本当の意味での「自己決定」です。 そしてその選択は、15年後のあなたの子どもの姿に、確実に影響を与えます。


「どこでもいい」という言葉の恐ろしさ

受験生を長年見てきて、私が最も危機感を覚える言葉があります。それは「どこでもいい」という一言です。

疲れ果てた受験生が、あるいは追い詰められた保護者が、口にするこの言葉。気持ちはわかります。長い受験勉強の末、「合格さえすれば何でもいい」という感覚になるのは、人間として自然なことかもしれません。

しかし、考えてみてください。

大学の4年間は、単なる「勉強期間」ではありません。どんな友人と出会うか。どんな教授の言葉に心を動かされるか。どんな環境の中で、自分という人間が形成されていくか。その4年間の積み重ねが、就職活動での自己分析に直結し、最初のキャリア選択を左右し、30代・40代の生き方の土台になっていくのです。

「どこでもいい」は、「自分の人生はどうなってもいい」と言っているのと、実はそれほど変わらないのです。


大学は「ゴール」ではなく「スタートライン」

日本の受験文化には、ある根深い錯覚があります。それは、大学合格を「ゴール」として捉えてしまうことです。

親御さんの中には、「いい大学に入れさえすれば安心」と思っている方も少なくありません。偏差値の高い大学に入ることで、子どもの将来が保証されると信じている方もいる。気持ちはよくわかります。それは親として子どもを守りたいという、愛情から来るものだと知っているからです。

でも、現実はどうでしょうか。

私はこれまで数千人の受験生を指導してきましたが、偏差値の高い大学に入った子が必ずしも充実した人生を送っているわけではありません。一方で、第一志望ではない大学に進んだとしても、その場所で本気で向き合い、自分を磨き続けた子が、10年後・15年後に輝いている姿を、私は何度も目にしてきました。

大学は、ゴールではありません。スタートラインです。

そして、そのスタートラインをどこに設定するかが、その後のレースの展開を大きく変えるのです。


「なんとなく」で選んだ大学が生む、静かな後悔

15年後に後悔する人には、ある共通のパターンがあります。

偏差値だけで大学を選んだ。親に言われたから選んだ。友達が行くから選んだ。就職に有利だと聞いたから選んだ。

どれも「自分の意志」が希薄なまま、重大な選択をしてしまったケースです。

もちろん、入学後に目覚め、その大学で素晴らしい4年間を送る人もいます。しかし、自分で考え抜いた選択をしていないと、何か壁にぶつかったとき、人は「環境のせい」にしがちです。「もし別の大学に行っていれば」「もし別の学部を選んでいれば」という思考が頭をよぎり始める。そしてその思考は、じわじわと、しかし確実に、その人の自己肯定感と行動力を蝕んでいきます。

後悔というのは、派手な失敗から来るものばかりではありません。「なんとなく流された選択」の積み重ねから来る、静かで深い後悔こそが、人生を長期にわたって曇らせることがあるのです。


では、何を基準に大学を選ぶべきか

偏差値は重要です。しかしそれは「絶対的な基準」ではなく、「参考情報の一つ」に過ぎません。

私が受験生に必ず問いかける質問があります。

「その大学で、どんな4年間を過ごしたいですか?」

この質問に、具体的に答えられる子は強い。たとえば「この教授のゼミで研究したい」「この大学の留学プログラムを使いたい」「この環境で起業の準備をしたい」。理由は何でも構いません。大切なのは、自分の言葉で語れる理由があるかどうかです。

親御さんに対しても、同じことをお伝えしたい。「偏差値がいくつだから」「知名度があるから」という基準で子どもに大学を勧めるとき、一度立ち止まってみてください。「この大学で、うちの子はどんな4年間を送れるだろうか」 という問いを、親子で一緒に考えてほしいのです。

その会話こそが、実は最高の受験勉強です。


子どもの「本音」と向き合う勇気を

受験期間、親子関係が壊れそうになる家庭を、私は毎年何件も見てきます。成績のこと、志望校のこと、将来のことで衝突し、食卓が沈黙で満たされる。そんな家庭の話を聞くたびに、私は胸が痛くなります。

でも、衝突の多くは「本音のすれ違い」から来ています。

子どもは本当は言いたいことがある。「医学部より文学部に行きたい」「理系より文系が好き」「有名大学より、自分のやりたいことができる大学に行きたい」。でも、親を失望させたくなくて、言えない。

一方で親も、本当は子どもに幸せになってほしいだけ。ただ、その「幸せ」の定義が、子どもとずれていることに気づいていないことがある。

私からお願いがあります。受験の今こそ、子どもの本音を聞いてあげてください。「何のために大学に行くの?」「将来どんな人間になりたいの?」そんな問いかけを、怒らず、評価せず、ただ聞いてあげる時間を作ってほしい。

その会話の中に、大学選びの答えは必ずあります。

そしてその会話の積み重ねが、15年後、子どもが壁にぶつかったとき、「親は自分の気持ちをわかってくれた」という記憶となって、その子を支える力になるのです。


15年後の景色を、今選んでいる

私がスカイ予備校を作ったのは、偏差値を上げるためだけではありません。

「自分の人生を、自分で選べる人間を育てたい」という一心からです。

どんな難しい問題も解ける子よりも、「なぜ自分はこれを学ぶのか」を語れる子の方が、長い人生を力強く歩んでいける。そう信じています。受験勉強は、確かにしんどい。でも、その苦しさの中で磨かれるのは、学力だけではない。自分と向き合う力、諦めない心、選択に責任を持つ姿勢、そういった人間としての根っこの部分が鍛えられていくのです。

今、この瞬間、受験生の皆さんが机に向かって積み重ねているものは、単なる得点ではありません。それは、15年後の自分への投資です。

そして今、我が子を見守っている保護者の皆さん。合格という結果だけに目を向けるのではなく、この受験期間を通じて子どもがどう成長しているかを、ぜひ見届けてあげてください。受験は、親子で一緒に成長できる、人生でも数少ない貴重な時間です。

15年後、あなたの子どもが「あの受験があって良かった」「あの大学を選んで良かった」「あの時、親がそばにいてくれて良かった」と、笑顔で言える日が来るように。

私たちスカイ予備校は、その日のために、今日も全力で子どもたちと向き合い続けます。


スカイ予備校 校長 五十嵐


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