「共通テストの古文で高得点をとるためにやるべきこと」(全10回)の第2回は、助動詞について書きたいと思います。
記事の監修者:五十嵐弓益(いがらし ゆみます)
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第2回 助動詞を押さえる
さて、現代語訳をつくるための第一歩、「助動詞」を押さえていきましょう。これが最大の難関です。
助動詞とは、いったいどういうものなのでしょうか。「動詞」を「助ける」と書いて「助動詞」ですが、動詞以外にも付属します。用言(動詞・形容詞・形容動詞)や体言(名詞や代名詞)、一部の助動詞に付属して意味を加える、という働きをします。たとえば、「読む」に過去の助動詞「けり」が付属すると、「読みけり」となって「読んだ」と訳します。
助動詞の勉強法としては、古文の文章を読みながら学んでいくのがオススメです。文法のテキストばかりを眺めていてもイメージがつかみづらく、なかなか覚えにくいもの。文章のなかで助動詞が出てくるたびに、辞書や文法のテキストで逐一確認するとよいでしょう。
ただ、どれが助動詞なのか分からないという人もいるでしょう。助動詞を見分けるためには、用言(動詞・形容詞・形容動詞)がどれなのかを押さえておく必要があります。下に三つの文を挙げてみましたが、助動詞をすべて抜き出せますか。
はしれり。 みめこそよからめ。 浮くる涙なりけり。
正解は、「り」・「め」・「なり」・「けり」です。「浮くる」の「る」は助動詞ではありませんが、引っかかってはいないでしょうか。「はしれ」がラ行四段活用動詞「走る」の命令(已然)形、「よから」がク活用形容詞「よし」の未然形、「浮くる」がカ行下二段活用動詞「浮く」の連体形であることが分かっていれば、一気に正解しやすくなります(「浮く」は、カ行四段活用動詞もあります)。ちなみに、「なり」は体言に付属していて、「けり」は助動詞に付属しています。
ある程度助動詞の知識が身についてきたら、文法のテキストの細部を読むようにしましょう。たとえば、助動詞「る・らる」だと、「受身の意味で用いる場合は、主語が無生物主語になることは少ない」とあります。こうした細かい知識を蓄えていき、実際の文章で確認していくとよいでしょう。
ここまでくれば、仕上げです。問題集に取り組み、存分にアウトプットをしましょう。少し難しめの問題もありますが、『ステップアップノート30 古典文法基礎ドリル』(河合出版)がオススメです。
最後に、覚えておくべき事項をまとめておきます。一気に覚えようとせず、じっくりと時間をかけて暗記しましょう。高校1年生のうちに覚えてしまうと、後がラクですよ!
〇基本
①各助動詞の意味
②各助動詞が何に接続するか(用言の活用形・体言など)
③各助動詞の活用表
〇細部
▢「る・らる」
①「受身」で用いられる場合、主語が無生物主語になることは少ない。
②敬語動詞+「る・らる」の場合は「尊敬」の意を表し、最高敬語となる。
(朱雀院は)あはれにらうたしと御覧ぜらる〈尊敬〉。
③下に打消や反語を伴う場合は、「可能」の意を表すことが多い。ただし、鎌倉時代以後は、打消や反語を伴わなくても「可能」で用いられる。
恋しからむことの堪へがたく、湯水飲まれ〈可能〉ず、同じ心に嘆かしがりけり。
④「る・らる」+「給ふ(尊敬を表す補助動詞)」の場合は、「受身」や「自発」の意を表す(「尊敬」にはならない)。
⑤思惟動詞+「る・らる」の場合は「自発」の意を表す。
めざましと思ふ心も引き返し、うち泣かれ〈自発〉給ひぬ。
▢す・さす・しむ
尊敬語を伴う場合は、「尊敬」の意、尊敬語を伴わない場合は、「使役」の意を表す(例外あり)。
主上笑はせ〈尊敬〉たまひ〈尊敬語〉て、
餅を食はする〈使役〉に、うち食ひてけり。
▢き・けり
「き」は直接経験の過去、「けり」は間接経験の過去を表す。
▢つ・ぬ
「てむ」「なむ」「つべし」「ぬべし」の場合は、ほとんどが「強意」の意である。
髪もいみじく長くなりな〈強意〉む。
海をさへ驚かして、波立てつ〈強意〉べし。
▢む
主語が一人称の場合は「意志」、二人称の場合は「適当」か「勧誘」、三人称の場合は「推量」の意になることが多い。
「む」の直後に体言がある場合は、「婉曲」か「仮定」の意を表す。
「(私は)いかでその宮の琴聞かむ〈意志〉。」
子といふものなくてありなん〈適当〉。
「我なからむ〈婉曲〉世に、忘れず思ひ出ださむずらむや。」
▢べし
主語が一人称の場合は「意志」、二人称の場合は「適当」か「命令」、三人称の場合は「推量」の意になることが多い。
毎度ただ得失なく「この一矢に定むべし〈意志〉」と思へ。
汝が煩悩さながら捨つべき〈適当〉なり。
風雨強かるべし〈推量〉。
▢まし
反実仮想の形として、「未然形+ば~まし」「…せば~まし」「…ましかば~まし」「…ませば~まし」がある。
雨降らば、花も散らまし〈反実仮想〉。
世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし〈反実仮想〉
鏡に色、形あらましかば、うつらざらまし〈反実仮想〉。
▢めり・なり
「めり」は視覚による推定、「なり」は聴覚による推定を表す。 (根拠のある推量が推定である。推量は根拠が弱い場合が多い)