あなたは今日、誰かのSNSを見て落ち込みましたか?
スカイ予備校で30年間、数千人の生徒たちを見てきた私(五十嵐)は、最近特に気になることがあります。それは、SNSが原因で自分に自信を失う生徒が急激に増えていることです。模試の成績が上がっているにもかかわらず、他人の投稿を見て「自分なんてダメだ」と感じてしまう。そんな声を、面談のたびに耳にするようになりました。この問題は、もはや一部の生徒だけのものではありません。スマートフォンを持つすべての受験生が直面している、現代特有の深刻な課題です。
SNSの「合格報告」が心に与えるダメージ
受験シーズンになると、TwitterやInstagramには合格報告が溢れます。「〇〇大学合格しました!」「第一志望校に受かった!」といった投稿を見て、まだ受験中の生徒たちが深く傷ついている様子を、私は何度も目にしてきました。
心理学の研究では、他人の成功体験を見ることで、自分の価値を過小評価してしまう現象が確認されています。これは「社会的比較理論」と呼ばれるもので、人間は無意識のうちに自分と他者を比べてしまう生き物なのです。特にSNSでは「良いこと」だけが切り取られて投稿されるため、現実とのギャップが大きく、比較による心理的ダメージも深刻になりがちです。
ある生徒は私にこう言いました。「先生、友達がみんな合格していて、自分だけが取り残された気分です」。でも実際には、その生徒の周りには同じように頑張っている仲間がたくさんいたのです。SNSという窓から見える世界は、決して全体像ではありません。合格した人は声高に報告しますが、不合格だった人や、まだ結果が出ていない人は沈黙しています。つまり、あなたが見ている世界は「成功した人だけが映し出されたハイライト映像」にすぎないのです。
さらに問題なのは、こうした比較が無意識に行われるということです。SNSを開くたびに、私たちの脳は自動的に「自分と他人」を比較し始めます。意識していなくても、スクロールするだけで自己評価が少しずつ削られていく。これは意志の強さとは無関係で、人間の脳の仕組みそのものに起因しています。だからこそ、仕組みで対処する必要があるのです。
本当に大切な比較対象は「昨日の自分」
私が生徒たちに必ず伝えるのは、「比べる相手は昨日の自分だけ」ということです。
他人と比較することに意味がない理由は明確です。育った環境、持っている才能、家庭の状況、使える時間、得意・不得意の分野、すべてが違うからです。偏差値70の高校に通う生徒と偏差値50の高校の生徒が同じスタートラインに立っているわけではありません。そもそもの出発点が異なる人同士を比べること自体が、根本的に不公平なのです。
しかし、昨日の自分との比較なら完全に公平です。条件はまったく同じだからです。「昨日は数学の問題を3問しか解けなかったけど、今日は5問解けた」「先週は英単語を覚えるのに30分かかったけど、今週は20分で覚えられた」「1か月前は長文読解で時間切れになっていたけど、今は最後まで読み切れるようになった」。この小さな成長の積み重ねこそが、本当の進歩の指標なのです。
私はスカイ予備校の生徒たちに、「成長記録ノート」をつけることを強く推奨しています。毎日たった3行でいいので、その日の学習で「昨日の自分より進歩した点」を書き出してみてください。最初は「そんな進歩なんてない」と思うかもしれません。でも、意識して探すようになると、必ず見つかります。そして1か月後にノートを振り返ったとき、自分がどれだけ成長したかに驚くはずです。
実際にこの方法を実践した生徒の多くが、「自分は着実に前に進んでいる」という実感を持てるようになり、結果としてモチベーションの維持にもつながっています。数字では測れない成長もたくさんあります。集中力が続くようになった、苦手な科目に向き合えるようになった、分からないことを質問できるようになった。そのすべてが、かけがえのない成長です。
「上位校合格者」より「幸せに生きる人」を目指そう
30年間で多くの卒業生を見送った私の経験から言えることがあります。それは、有名大学に合格した人が必ずしも幸せな人生を送っているわけではないということです。
むしろ、自分らしい道を見つけて充実した毎日を送っている卒業生たちの方が、生き生きとした表情で近況を報告してくれます。専門学校から夢の職業に就いた生徒、地方の大学で好きな研究に没頭している生徒、就職してから自分の適性を見つけた生徒。彼らは皆、「自分の人生を生きている」という共通点があります。
逆に、偏差値だけを追いかけて有名大学に入ったものの、入学後に「自分は何がしたかったのだろう」と燃え尽きてしまう卒業生も少なくありません。目的なく入った大学では、学ぶ意欲を維持することが難しいのです。「合格」はゴールではなく、あくまでスタート地点にすぎません。
目標を「誰かに勝つこと」ではなく「自分らしく幸せに生きること」に設定すれば、人生の方向性が大きく変わります。勝ち負けで考えている限り、たとえ勝っても次の比較対象が現れ、永遠に満たされることはありません。しかし「自分らしさ」を軸にすれば、進むべき道が明確になり、日々の努力にも意味を感じられるようになります。
承認欲求とうまく付き合うコツ
「他人に認められたい」という気持ちは、人間として自然なものです。完全になくす必要はありません。大切なのは、承認欲求を否定するのではなく、コントロールすることです。
私が生徒たちに勧めているのは、「承認欲求の多様化」です。SNSでの「いいね」だけに依存するのではなく、もっと多くの場所から承認を受け取る意識を持つことが重要です。具体的には次のような承認の形があります。
- 家族からの「頑張ってるね」「応援してるよ」という言葉
- 友達からの「ありがとう」「一緒に頑張ろう」という励まし
- 先生からの「成長したね」「この調子で続けよう」という評価
- 自分自身からの「今日もよくやった」「昨日より前進した」という自己承認
特に最後の「自己承認」は見落とされがちですが、最も大切なものです。他人からの承認は状況によって得られないこともありますが、自分で自分を認めることは、いつでも、どこでもできます。この力を育てることが、長い人生を支える土台になるのです。
また、週に一度は「SNSデトックス」の日を作ることも強くお勧めします。他人の投稿を一切見ない日を意識的に設けることで、自分の心と向き合う時間が生まれます。実際にこれを始めた生徒からは「日曜日にSNSを見ない日を作ったら、驚くほど勉強に集中できた」「自分が何をしたいのかを考える余裕ができた」という声が上がっています。情報を遮断することは、現代においては積極的な自己防衛なのです。
親世代のSNS投稿が与える意外な影響
ここからは保護者の皆さんに向けてお話しします。最近気づいた問題があります。それは、保護者の方々のSNS投稿が、お子さんにプレッシャーを与えているケースです。
「うちの子が〇〇大学に合格しました!」という投稿は、親としては自然な喜びの表現でしょう。お気持ちは十分に理解できます。しかし、それを見た他の保護者の方が不安になり、その不安が食卓での会話や態度を通じてお子さんに伝わってしまうことがあります。「〇〇さんのお子さんは合格したのに、うちの子は……」。そんな思いが、無意識のうちに言葉や表情に表れてしまうのです。
また、まだ受験中の生徒が親のスマートフォン画面をふと目にして、親の友人のお子さんの合格報告を見てしまい、深く落ち込むケースも珍しくありません。デジタル時代では、情報は意図しない形で届いてしまうものです。
親世代の皆さんにお願いしたいのは、次の3点です。
- 合格報告のSNS投稿は、受験シーズンが完全に終わってからにする配慮を持つこと
- 他の家庭の結果と自分のお子さんを比較しないこと
- お子さんの前でSNSの合格報告について話題にしないこと
お子さんが一番求めているのは、「結果に関わらず、自分を応援してくれる親の存在」です。その安心感があるからこそ、受験という困難な挑戦に立ち向かえるのです。
比較の罠から抜け出すための具体的な行動指針
ここまでお読みいただいた皆さんに、明日からすぐに実践できる行動指針をお伝えします。
- 朝起きたらSNSを見る前に、今日の目標を一つだけ紙に書く
- 勉強の合間にSNSを開く習慣をやめ、代わりに5分間の深呼吸やストレッチを行う
- 寝る前に「今日の自分が昨日より成長した点」を3つ書き出す
- SNSのアプリを、ホーム画面の2ページ目以降に移動させる
- 受験に関する情報収集は、SNSではなく信頼できる情報源に限定する
小さなことに見えるかもしれませんが、こうした習慣の積み重ねが、あなたの自己評価を根本から変えていきます。環境を整えることは、意志の力に頼るよりもはるかに効果的です。
まとめ:自分だけの成長物語を大切に
SNS時代だからこそ、「自分だけの成長物語」を大切にしてほしいと私は心から思います。他人の物語と比較するのではなく、昨日よりも少しでも前進した自分を認めて、褒めてあげてください。
30年間で何千人もの受験生を見てきて確信していることがあります。それは、自分のペースで着実に歩み続けた人が、最終的には自分らしい居場所を必ず見つけるということです。その道のりは、他の誰とも比べる必要のない、あなただけの大切な物語です。
人生は競争ではありません。一人ひとりが主人公の、かけがえのない物語です。あなたの物語は、あなたにしか作れない素晴らしいものなのですから。焦らず、他人に惑わされず、自分の足で一歩ずつ前へ進んでいきましょう。スカイ予備校は、あなたの成長物語をこれからも全力で応援し続けます。
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