ChatGPTが書いた自己PRと、自分で書いた自己PR ―面接官はどちらを選ぶか
スカイ予備校の五十嵐です。受験生の皆さん、そして保護者の皆様、いつもスカイ予備校の教育活動にご理解とご協力をいただき、誠にありがとうございます。
現在、ES(エントリーシート)作成において、AI、特にChatGPTのような生成AIの活用が急速に進んでいます。ある調査では、ES作成の80.7%にAIが使われているという驚くべきデータも出ています。このような時代において、大学入試の面接や、将来の就職活動における採用面接において、面接官が本当に見ているものは何でしょうか。AIが作成した「完璧な」自己PRと、学生自身が手塩にかけて書いた「人間味あふれる」自己PR、一体どちらが面接官の心を掴むのか。この疑問を解き明かすべく、私、五十嵐は最近、非常に興味深い実験を行いました。
「完璧」vs「不完全」―驚きの実験結果から見えた本質
私(五十嵐)は30年間教育現場に立ち、これまでに数千人、いや数万人もの学生たちの成長を間近で見てきました。その経験から、学生一人ひとりが持つ個性や潜在能力の尊さを誰よりも深く理解しています。今回の実験では、まさにその「人間らしさ」がAIの高度な文章作成能力とどのように比較されるのかを検証しました。
実験内容はこうです。まず、複数のスカイ予備校の生徒たちに、自己PRのテーマを与えました。 その後、一方のグループにはChatGPTを用いて自己PRを作成してもらい、もう一方のグループには自分自身の言葉で自己PRを書いてもらいました。もちろん、ChatGPTを利用したグループの学生には、AIが出力した内容をそのまま使うように指示しました。そして、この二種類の自己PRを、複数の企業の採用担当者の方々にご協力いただき、実際に評価してもらいました。
AIが作成した文章は、期待通り、いやそれ以上に完璧でした。文法的な誤りは一切なく、論理構成は非常に緻密で、使われている言葉も洗練され、時にはプロのライターが書いたかのような印象さえ受けました。語彙も豊富で、表現力も豊かです。一方、学生自身が書いた文章には、少し回りくどい表現や、時には文法的に完璧とは言えない部分もありました。誤字脱字こそありませんでしたが、表現に迷いや葛藤の跡が見て取れるような、まさに「生身の人間」が書いた文章という印象でした。
しかし、結果は私の予想、そして多くの人が抱くであろう一般的な期待を裏切るものでした。実に10社中8社の採用担当者が「学生本人が書いた文章の方に興味を持った」「学生本人と会ってみたいと感じた」と回答したのです。
ある採用担当者の方は、率直にこうおっしゃいました。「AIの文章は確かに美しいし、読んでいる分には何の不満もない。しかし、どこか他人事のような、紋切り型の印象を受けてしまう。まるでテンプレートに穴埋めしただけのような、人間味のない機械的な響きがある。一方で、学生本人の文章からは、その人の体温や息づかい、悩みながらも伝えようとする懸命さが感じられる。完璧ではないかもしれないが、その不完全さの中に『この人と一緒に働きたい』と思わせる、人間的な魅力と情熱がある。読む側としては、AIの文章よりも、泥臭くても本人の言葉で書かれた文章からの方が、その人の本質や潜在的な可能性を感じ取ることができる。」
また別の方からは、「AIが書いた文章は、内容が客観的で、どこか抽象的になりがちだ。もちろん、データや事実を整理するには非常に優れている。しかし、採用の場面で本当に知りたいのは、その人が何を経験し、何を感じ、何を考え、どのように行動してきたかという『一次情報』であり、その人独自の視点や感情だ。AIはあくまで既存の情報をもとに推論し、最適化された文章を生成するに過ぎない。つまり、オリジナリティや深層にある感情、価値観といった、人間ならではの深い洞察を表現することには限界がある。その点、学生自身の言葉で書かれた文章は、たとえ拙くとも、その学生の個性や情熱、そして成長への意欲がリアルに伝わってくる。それが面接官の心を強く揺さぶるのだ」という貴重なご意見もいただきました。
AI時代の新しいリテラシーとは?「AI活用と自分らしさの両立」の重要性
では、この実験結果は「AIを全く使わない方が良い」という結論を意味するのでしょうか?私は断じてそうは思いません。現代社会において、AIはもはや避けられない、強力なツールであり、私たちはそれを賢く使いこなすリテラシーを身につける必要があります。
大切なのは、「AI活用と自分らしさの両立」という新しいリテラシーを身につけることです。AIは、あなたの受験や将来のキャリアにおいて、強力なパートナーとなり得ます。文章構成のアドバイスをもらったり、自分の考えを整理するのに使ったり、語彙を豊かにするヒントを得たり、表現のバリエーションを増やす参考にしたりすることができます。例えば、膨大な情報を効率的に収集・整理したり、自分の考えを客観的に分析する手助けをしてもらったりするのに、AIは非常に有用です。
しかし、最終的に伝えるべき「あなたの想い」「あなたの体験」「あなたの価値観」は、あなた自身の言葉で表現しなければなりません。AIはあなたの「思考のアシスタント」にはなれますが、あなたの「心の代弁者」にはなれないのです。スカイ予備校では、AIの利便性を否定するのではなく、むしろその可能性を最大限に引き出しつつ、同時に人間ならではの創造性や感性、そして思考力を磨く教育に力を入れています。
「自己開示の3層構造」AI時代的進化版
私がこれまで長年提唱し、多くの学生の自己PR指導に活用してきた「自己開示の3層構造」を、このAI時代に合わせてさらにアップデートしました。
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第1層:基本情報層(AIが得意な領域)
学歴、資格、基本的なスキル、所属、受賞歴など、客観的な事実やデータを中心とした情報です。ここはAIを活用して効率的に、かつ網羅的に整理しましょう。 AIは情報の正確性や抜け漏れのチェック、表現の最適化において非常に優れています。例えば、自分の高校名や取得した資格、部活動の実績などを入力すれば、適切かつ簡潔な表現で文章を組み立ててくれます。ここでAIを上手に活用することで、手間と時間を節約し、次の重要なステップにエネルギーを集中させることができます。
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第2層:体験・経験層(人間とAIの協働領域)
部活動での具体的な役割、アルバイトでの困難とそれを乗り越えた経験、ボランティア活動を通じて学んだことなど、あなた自身の行動やそこから得られた学びに関する情報です。この層は、人間が核となり、AIがその表現をサポートする協働領域です。
まずは、あなたが実際に経験したこと、その時何を感じたのかを具体的なエピソードとして書き出しましょう。例えば、「文化祭実行委員として、予算管理と広報活動を担当し、過去最高の来場者数を達成した経験」といった具体的な事実です。その後、AIに文章構成の相談をしたり、より効果的な表現方法のヒントを得たりすることができます。例えば、「このエピソードを効果的に伝えるための構成案をいくつか提案してほしい」とAIに問いかけたり、「この経験から得られた学びを、より説得力のある言葉で表現するにはどうすれば良いか」とアドバイスを求めたりするのです。
しかし、重要なのは、その経験を通じて「あなたが何を考え、どう行動し、何を学んだのか」という内面的なプロセスは、あなた自身の言葉で語ることです。AIはあくまでフレームワークを提供するだけで、あなたの心に刻まれた真の学びや感情を表現することはできません。
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第3層:価値観・想い層(人間だけの領域)
「なぜその大学で学びたいのか」「なぜその学部・学科を志望するのか」「将来、どんな社会貢献をしたいのか」「どんな夢を持っているのか」といった、あなたの根本的な価値観、情熱、そして未来への展望に関する情報です。ここは、絶対に自分の言葉で、心から湧き上がる想いを表現してください。
面接官が最も知りたいのは、まさにこの「あなたの軸」です。AIは、あなたが過去に述べたことを基に、それらしい文章を生成することはできます。しかし、それは借り物の言葉であり、あなたの心の底から湧き出る本物の情熱や信念を伝えることは不可能です。この層こそが、あなたの個性を際立たせ、面接官の心を深く揺さぶる決定的な部分となります。例えば、「地域医療の課題を目の当たりにし、将来はAIを活用した新しい医療システムの構築に貢献したい」といった具体的な夢や、「多様な価値観が共存する社会の実現に貢献したい」といった強い信念は、あなた自身の経験と深く結びついた、唯一無二のものです。
この第3層は、あなたの人生哲学そのものです。過去の体験がどのように現在の価値観を形成し、それが未来の目標にどう繋がっているのかを、論理的かつ情熱的に語ることで、あなたの人間としての深みや魅力を最大限にアピールできます。
「使いこなす知性」と「輝く力」の両立
現代の学生に求められるのは、「ツールを使いこなす知性」と「人間として輝く力」の両方です。
AIを使いこなせることは、現代社会において疑いなく重要なスキルです。情報リテラシーの一環として、AIの特性を理解し、その恩恵を最大限に享受できる能力は、これからの時代を生き抜く上で不可欠でしょう。しかし、それ以上に大切なのは、AIでは決して表現できない「あなたらしさ」を磨き、それを自分の言葉で表現する力です。
失敗から学んだ教訓、友人との何気ない会話の中でふと気づいたこと、一人で悩み抜いた夜に見つけた自分なりの答え、あるいは、感動した映画や読んだ本から得た深い洞察―そうした、あなたの心に刻まれた体験や感情から生まれる言葉こそが、面接官の心を深く動かし、あなたという人間への興味を引き出すのです。これらの体験は、単なる事実の羅列ではなく、あなたの個性や価値観を形成したかけがえのないプロセスであり、AIには到底再現できないあなただけの「物語」です。
私の教え子の中に、ESの下書きはAIに手伝ってもらいながらも、最終的には自分の体験と想いを丁寧に織り込んで志望大学に見事内定した学生がいます。彼女はスカイ予備校の面談で、目を輝かせながらこう言いました。「AIは私の考えを整理する手助けをしてくれたけれど、本当に伝えたい、私の心の奥底にある揺るぎない想いは、私の中にしかありませんでした。だからこそ、自分の言葉で表現することに時間をかけ、心を込めることができたんです。面接官の方も、私の言葉の一つ一つに真剣に耳を傾けてくださり、その熱意が伝わったのだと思います。」 彼女はAIをあくまで「優秀な秘書」として活用し、肝心要の「想い」の部分は決してAIに委ねませんでした。
AI時代だからこそ、あなたの人間らしさが貴重な財産になります。表面的な完璧さや論理的な整合性だけを追求するのではなく、あなたらしい「不完全な完璧さ」を大切にしてください。不完全さの中にこそ、人間の魅力や成長の可能性が秘められているものです。あなたの個性、あなたの情熱、あなたの物語―そこにこそ、未来への扉を開く鍵があるのですから。
スカイ予備校では、単なる学力向上だけでなく、AIを賢く活用しながら、同時に「自分自身の言葉で考え、表現する力」を育む教育を重視しています。面接指導においても、学生一人ひとりの内面と深く向き合い、その人ならではの魅力や潜在能力を引き出すサポートを徹底して行っています。AI時代をたくましく生き抜き、自らの力で未来を切り開くことができる人材を育成することこそが、私たちの使命であると確信しております。
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