「共通テストの古文で高得点をとるためにやるべきこと」(全10回)の第5回は、敬語を押さえるについて書きたいと思います。
記事の監修者:五十嵐弓益(いがらし ゆみます)
【全国通信教育】最短合格オンラインのスカイ予備校 校長
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第5回 敬語を押さえる
さて、今回はようやく敬語の登場です。暗記しなければならない主要敬語については、各自が持っている単語帳を参照してもらうとして、ここでは概要を簡単に押さえていきたいと思います。
敬語には、次の3種類があります。
〇尊敬語……話し手や書き手が、話題の中の動作主に敬意を示す。
〇謙譲語……話し手や書き手が、話題の中の動作の受け手に敬意を示す。
〇丁寧語……話し手や書き手が、聞き手(読者)に敬意を示す。
以下、練習問題です。尊敬語なのか、謙譲語なのか、丁寧語なのかを判断してみてください。
〈問題〉
①「申さむと思ひAたまふるやうは、この川に浮きてはべる水鳥を射Bたまへ」
②何をか奉らむ。
③宮は大殿籠りにけり。
④さまざま悲しきことのみ多く侍れば、
⑤女御、例ならずあやしと思しけるに
〈解答〉
①「たまふ(給ふ)」(補助動詞)は、四段活用動詞の場合は尊敬を、下二段活用動詞の場合は謙譲の意味になります。Aが謙譲、Bが尊敬です。
②「奉る」は謙譲語で、「差し上げる」という意味です。
③「おほとのごもる(大殿籠る)」は、「寝ぬ」「寝」の尊敬語で、「お休みになる」という意味です。
④「はべれ(侍れ)」は、「あり」「居り」の丁寧語で「あります」「ございます」「おります」などと訳します。
⑤「おぼす(思す)」は、「思ふ」の尊敬語で、「お思いになる」という意味です。
いかがでしたでしょうか。その他にも覚えるべき単語はあります。本動詞・補助動詞の区別もふくめて、単語帳などでしっかりとチェックをしましょう。
さて、敬語を読み解く上で大事なことは、その敬語が誰から誰への敬意を表しているのか、ということです。見分け方を以下に書いておきます。
☆誰からの敬意か
・地の文……書き手(=作者)から
・会話文や手紙文……話し手や書き手(=その手紙を書いた人物)から
☆誰への敬意か
・尊敬語……動作主へ
・謙譲語……動作の受け手へ
・丁寧語……聞き手や読み手へ
以下、練習問題です。
〈問題〉
①さまざま悲しきことのみ多く侍れば、
②(皇女が)「はや帰りておほやけに、このよしを奏せよ」
③親王は、あはれなる御物語(源氏に)A聞こえBたまひて、
〈解答〉
①地の文なので、「誰から」は作者からです。「侍る」は丁寧語ですから、読み手(=読者である私たち)への敬意を表します。答えは、作者→読者です。
②会話文なので、「誰から」は発し手である皇女からです。「奏す」は謙譲語で「(天皇・上皇に)申し上げる」という意味です。「申し上げられる」のは「おほやけ」ですから、天皇への敬意ということになります。答えは、皇女→天皇です。
③AもBも地の文なので、「誰から」は作者からです。Aの「聞こえ」は謙譲語ですから、「申し上げられている」源氏への敬意を表します。Bの「たまひ」は四段活用動詞なので尊敬の補助動詞です。「申し上げている」親王への敬意を表します。まとめると、A:作者→源氏 B:作者→親王です。
このように、古文では、一度に二方面に対して敬意を表すことがよくあります。
あとは、敬語に関する特別な表現について押さえていきましょう。
Ⅰ、最高敬語
下記の例のように、尊敬語が二重に用いられることがあります。敬意の対象は、天皇・上皇・皇后・中宮などの最高階級の人です。
(中宮が)「少納言よ。香炉峰の雪いかならむ。」と仰せ らるれば、
Ⅱ、自敬表現(自尊敬語)
自敬表現とは、身分の高い人が自分の行為に尊敬語を用いる敬語表現です。下記の例では、敬意の方向は、天皇から天皇となっています。
(天皇)「汝が持ちてはべるかぐや姫奉れ。」
(おまえが持っているかぐや姫を献上せよ。)
敬語を理解すると、動作主が誰なのかを読み解くヒントになります。ただ、敬語をいい加減に使っている文章も多くあります(中世以降の文章など)ので、敬語がないからといって、必ずしも身分の低い人の動作とは限りません。敬語があれば、身分の高い人が絡んでいるのは確定ですが、その逆はいえないのです。敬語がなくても、実は身分の高い人の動作だったりしますから、その点は注意が必要です。