「先生、私、計画を立てるのが本当に苦手で……どうしたらいいですか?」
毎年、必ず何人かがこう言いながら私の前に座る。うつむき加減で、少し恥ずかしそうに。まるで自分に欠陥があるかのような顔をして。
私はそのたびに、同じことを思う。「ああ、この子は『計画が苦手』なのではない。計画の立て方を誰にも教わっていないだけだ」と。
これが、29年間この仕事を続けてきて私が確信していることだ。そして同時に、この誤解が受験生を深刻な失敗へと引き込む入口になっていることも、私は何度も目の当たりにしてきた。
今日はその話をしたい。耳の痛い話もある。でも、これを読んでいるあなたにこそ、知っておいてほしいことがある。
「計画が苦手」な受験生が陥る、最も危険なパターン
数年前、高校3年の春にスカイ予備校に入ってきたAさんという女子生徒がいた。志望は国立大学の教育学部。成績は悪くなかった。むしろ、地頭は十分にある子だった。
最初の面談で、彼女はこう言った。「計画を立てても、すぐ崩れちゃうんです。だから計画を立てるのをやめました」
私はその瞬間、正直に言えば、胸がざわりとした。「やめた」という言葉の重さを感じたからだ。計画を立てることが怖くなった子が使う言葉がある。「苦手だから」「意味がないから」「自分には向いていないから」。これらはすべて、失敗した経験から自分を守るための言葉だ。
Aさんは、計画を立てるたびにその通りにできない自分を責めていた。2日サボると「もう取り返しがつかない」と感じて、計画そのものを捨てる。また立てる。また崩れる。また捨てる。そのループが続いた結果、「計画なんて自分には無意味だ」という結論に辿り着いていた。
これは、Aさんだけの話ではない。29年間で見てきた現場だからこそ断言できるが、このパターンで失敗していく受験生は後を絶たない。そして恐ろしいのは、本人が「計画を立てる習慣がない」ことに気づいていない点ではなく、「計画が崩れること」を異常だと思い込んでいる点だ。
本質的な誤解――計画は「守るもの」ではない
ここで、私が受験生に必ず伝える逆説的な話をしよう。
計画は守れなくて当たり前だ。崩れることが前提で作るものだ。
計画が苦手な受験生の多くは、「完璧な計画を立てて、それを完璧に実行すること」がゴールだと思っている。だから、1日でもズレると「失敗した」と感じる。そして計画ごと捨てる。
違う。計画とは「現在地を確認するための地図」だ。道に迷ったとき、地図を破り捨てる人間はいない。現在地を確認して、また歩き始めるはずだ。受験の計画も同じだ。崩れたら修正する。それが計画の本来の使い方だ。
計画が苦手なのではありません。計画を「完璧に実行しなければならないもの」だと誤解しているだけです。
この一言で、表情が変わる生徒を私は何人も見てきた。Aさんもそうだった。「先生、それ、誰も教えてくれなかった」と彼女は言った。私はそのとき、少し悔しい気持ちになった。こんなに基本的なことが、受験生に届いていない現実に対して。
「計画を立てない」ことの本当のコスト
ではなぜ、計画を立てないまま受験に臨むと危険なのか。感情論ではなく、現実の話をしよう。
受験勉強には、大きく分けて「インプット」「アウトプット」「弱点補強」の3つのフェーズがある。これを試験日から逆算して配置しなければ、どこかが必ず間に合わなくなる。計画がない受験生は、「今日やりたいことをやる」という選択をし続ける。その結果、得意科目ばかりが伸びて、苦手科目が放置される。模試の点数を見て初めて気づく。でも、そのときには時間が残っていない。
Bくんという男子生徒のことも、ここで話しておきたい。彼は理系で、数学と物理は学校内でもトップクラスだった。英語が苦手で、「計画を立てると英語をやらなきゃいけないから、計画を立てない」と本人が後から打ち明けてくれた言葉が忘れられない。
11月の模試で英語の偏差値が40台に留まっていた。数学・物理では第一志望の判定がA判定近くまで来ていたのに、英語が足を引っ張って総合判定はD。センター試験(当時)本番でも英語で大きく失点し、志望校には届かなかった。
私は彼の結果を聞いたとき、怒りよりも悲しさが先に来た。防げた失敗だったからだ。計画があれば、英語の放置は3ヶ月以上続かなかった。計画があれば、誰かが「英語に時間を使っていない」と気づけた。
では、計画が苦手な人はどうすればいいのか
ここからは、私が現場で実際に使ってきた考え方を伝える。難しいことは言わない。
まず「週単位」で考えることから始める
1日単位の計画は崩れやすい。朝の体調、学校の突発的な行事、友人との会話で遅くなった夜。1日単位で計画を立てると、これらすべてが「計画崩壊」の原因になる。
週単位で「この週に終わらせること」を決める。1日の中でどのタスクをこなすかは、その日の状況に合わせて動かしていい。週の終わりに「できたこと・できなかったこと」を確認して、翌週の計画に反映させる。これだけで、計画の崩壊率は劇的に下がる。
「修正する時間」を最初から計画に組み込む
多くの受験生は、計画をびっしり埋めようとする。月曜から日曜まで、朝から夜まで。でも、これは最初から無理な計画だ。人間は、計画通りに動けない日が必ず来る。だから、週に1日は「バッファ日」として空けておく。遅れた分を取り返すための日だ。この1日があるだけで、計画を捨てずに済む場面が劇的に増える。
「なぜ計画が崩れたか」を必ず記録する
計画が崩れたとき、多くの受験生は自分を責めて終わりにする。違う。崩れた原因を記録することが重要だ。「睡眠不足で午前中が使えなかった」「想定より問題集の1単元に時間がかかった」「部活の後は集中できない」。これらが積み重なると、自分の行動パターンが見えてくる。そのパターンをもとに計画を修正すれば、次第に崩れにくい計画が作れるようになる。
「計画が苦手」と言える間は、まだ間に合う
最後に、これだけは伝えたい。
「計画が苦手」と自覚して、誰かに相談できている受験生は、まだ動ける状態にある。本当に危険なのは、苦手なことを自覚せず、計画のないまま走り続けて、試験3ヶ月前に初めて現実に気づく受験生だ。私はそういう生徒を何人も見てきた。そして、そのたびに「もっと早く来てくれれば」と思ってきた。
計画を立てることが苦手なあなたは、何も特別な欠陥を持っているわけではない。ただ、正しいやり方を知らないだけだ。そしてそれは、今日から変えられる。
スカイ予備校では、計画の立て方そのものから一緒に考える面談を行っている。「何から手をつければいいかわからない」という状態の受験生こそ、ぜひ一度話しに来てほしい。あなたの現在地を確認して、一緒に地図を作るところから始めよう。
(この記事を読んで思い出したこと、追加で伝えたいことをここに記入してください)



