入試前日に絶対やってはいけないこと——27年間で見てきた、毎年繰り返される後悔のパターン

入試前日に絶対やってはいけないこと——27年間で見てきた、毎年繰り返される後悔のパターン 五十嵐校長コラム

「先生、昨日ほぼ徹夜してしまいました……」

試験当日の朝、会場近くのコンビニで偶然出会ったTくん(当時高3)が、青ざめた顔でそう言った。目の下に濃いクマ。手にはエナジードリンクが2本。私はその瞬間、胸の奥が重くなるあの感覚を覚えた。指導者として何度経験しても、慣れることのない感覚だ。

結果は、志望校に届かなかった。模試では合格圏内だったTくんが。

あれから何年経っても、私はあの朝のことを忘れられない。なぜなら、Tくんの失敗は「実力不足」ではなかったからだ。「前日の過ごし方」が、すべてを台無しにした。

「前日くらい大丈夫」という油断が、受験を壊す

27年間、累計1万人を超える受験生を見てきた現場だからこそ断言できます。入試の合否を分けるのは、試験当日だけではありません。前日の24時間の使い方が、本番のパフォーマンスに直接影響する。これは感覚論ではなく、毎年繰り返されるパターンとして私の目の前に積み重なってきた事実です。

では、具体的に何がいけないのか。私が現場で見てきた「やってはいけないこと」を、今日は包み隠さず話します。

①新しい問題・参考書に手を出す

これが最も多い失敗です。前日になって「もう1冊やっておこう」「この分野だけ確認したい」と、これまで使っていなかった問題集や参考書を開く受験生がいます。

Uさん(女子・私立大志望)は、前日の夜に友人から「この問題集の最後の章が出やすい」という情報を聞いて、初めて見る問題集を夜中の2時まで解き続けた。当然、解けない問題にぶつかる。「こんな問題も出るのか」「自分は全然わかっていなかった」という不安が雪だるま式に膨らんで、本番は頭が真っ白になったと後から教えてくれた。

私はこう考える。前日に新しいものを入れるのは、大事な試合の直前にルールを変えるようなものだ。今まで積み上げてきたものを信じる勇気が、前日には必要です。

②夜更かしして「最後の詰め込み」をする

冒頭のTくんがまさにこのパターンだった。「もう少しだけ」「あと1時間だけ」と勉強を続けた結果、気づけば朝になっていた。

ここで逆説的な事実を伝えます。前日の夜に詰め込んだ知識は、試験本番ではほとんど使えません。睡眠不足の脳は、記憶の引き出しを開けるスピードが著しく落ちる。一方で、十分に眠った脳は、これまでの勉強で蓄積した知識を最大限に引き出せる状態になる。つまり、前日の夜更かしは「勉強している」のではありません。「これまでの勉強を無効化している」だけです。

受験勉強は、前日の夜ではなく、それまでの数百日で決まる。私はそう確信しています。

③SNSや動画で「受験情報」を漁る

これは近年、特に増えているパターンです。スマートフォンを手放せない受験生が、前日の夜にSNSで「〇〇大学 今年の予想問題」「〇〇大 前日 やること」などと検索し始める。

問題は、そこに流れてくる情報の質がまったく保証されていないことだ。根拠のない「今年は〇〇が出る」という投稿を見て信じてしまい、急にその分野を詰め込もうとする。あるいは「自分だけ準備が足りていないのでは」という焦りに火がつく。

私が見てきた限り、SNSの前日情報で合格した受験生はいない。しかし、SNSの情報に振り回されて崩れた受験生は、毎年必ずいる。スマートフォンは前日の夜、物理的に親に預けるか、別の部屋に置いてくることを私は強く勧めます。

④保護者との「激しい会話」

これは保護者の方にも読んでほしい項目です。前日の夜に「明日絶対に受かってね」「落ちたらどうするの」「あなたの将来がかかっているのよ」という言葉をかける親御さんが、残念ながらいます。

Vくん(男子・国立大志望)の場合、前日の夜に父親から「お前が落ちたら家族の恥だ」と言われた。Vくんはその言葉が頭から離れないまま試験会場に入り、第一問を見た瞬間に手が震えて止まらなくなったと話してくれた。

私はこう感じる。親の言葉は、子どもにとって世界中のどんな言葉より重い。前日の夜にかけるべき言葉はただひとつ、「今日まで本当によく頑張ったね」だけでいい。それ以上は要らない。

⑤会場の下見を「なんとなく」で済ませる

前日にやるべきことの話もしておきます。会場までのルートを、実際に歩いて確認する。これをやっていない受験生が、当日に「電車を乗り間違えた」「会場の建物がわからなかった」というトラブルを起こす。

地図アプリで確認しているから大丈夫、と思っている受験生に言いたい。当日の朝は、平常心ではない。慣れないルートを緊張した状態でたどる危険性を、甘く見てはいけない。前日の午後に一度歩いておくだけで、当日の朝の余裕がまったく変わります。

前日の夜にやるべきことは、実はシンプルだ

ここまで「やってはいけないこと」を話してきた。では、前日の夜は何をすればいいのか。

答えはシンプルです。これまで自分が使ってきたノートや問題集を、「読み返す」だけでいい。新しいことを入れるのではなく、今の自分の頭の中にあるものを整理して、確認する。それだけで十分です。

そして、いつもより30分早く布団に入る。眠れなくても構わない。横になって目を閉じているだけで、脳は休息をとっている。眠れないことへの焦りは無用です。受験生の多くは、試験当日の朝になれば自然と覚醒する。それが本番前の体の反応です。

27年間で見てきた合格者たちに共通していたのは、前日に「特別なこと」をしていなかったことです。淡々と、普段通りに過ごしていた。それが最強の前日の過ごし方だと、私は確信しています。

最後に、受験生へ

あなたがここまで読んでくれているということは、入試が近いということですね。

私からひとつだけ言わせてください。あなたがこれまで積み上げてきた勉強は、前日の一夜で消えることはない。消えないように、前日だけは自分を守ってほしい。

焦る気持ちはわかります。不安になる気持ちもわかります。でも、その不安に負けて「もう少しだけ」と夜更かしした受験生が、毎年涙をのんでいる現実を、私はずっと見てきました。

あなたにはそうなってほしくない。ただ、それだけです。

スカイ予備校では、受験直前期の過ごし方から本番当日のメンタルマネジメントまで、個別に相談できる環境を用意しています。一人で抱え込まずに、ぜひ声をかけてください。

【五十嵐より追記】
(この記事を読んで思い出したこと、追加で伝えたいことをここに記入してください)
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