勉強しているのに責められる現実
親に勉強量を責められてつらいという悩みは、受験期の生徒の中でも特に多く聞かれるものです。自分なりに頑張っているつもりでも、「まだ足りない」「もっと勉強しなさい」と言われると、まるで努力が否定されたような気持ちになりますよね。中には、「どうせ自分はダメなんだ」と自己肯定感が下がってしまい、勉強そのものへの意欲を失ってしまう人もいます。
この悩みの根本には、「親と子の受験に対する温度差」と「価値観のすれ違い」があります。親にとっては、子どもの将来を心から心配するあまりの言葉かもしれませんが、受験生からすればそれは「追い詰められる一言」になってしまうのです。つまり、親の“愛”が“圧”に変わってしまう瞬間が、受験期には頻繁に起きるということです。
このプレッシャーは、勉強法や計画の問題以上に、メンタル面で大きな影響を及ぼします。勉強の効率が落ちるだけでなく、ストレスによって睡眠の質が下がったり、集中力が続かなくなったりと、学習全体に悪影響が出てしまうのです。

記事の監修者:五十嵐弓益(いがらし ゆみます)
【全国通信教育】最短合格オンラインのスカイ予備校 校長
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親の「心配」が「圧力」に変わる理由
まず理解しておきたいのは、親の言葉の多くは「悪意」ではなく「心配」から出ているという点です。受験は子どもだけでなく、親にとっても大きなイベントです。ときには「自分の育て方が悪かったのでは」と不安になったり、「将来を左右する大切な時期だからこそ後悔してほしくない」と焦ったりします。そうした感情が、「もっとやりなさい」という言葉になって表れてしまうのです。
しかし、受験生にとっては「もう頑張っているのに」と感じる瞬間が多く、親の言葉は“心配”ではなく“圧力”として届いてしまいます。ここで重要なのは、「親の意図」と「子の受け止め方」にズレがあるということです。このズレを放置すると、次第に関係は悪化し、親の声を聞くだけでストレスが溜まるようになります。
「努力の基準」が違うという落とし穴
このズレの根本的な原因のひとつが、努力の基準の違いです。親世代が受験した時代と現代の入試環境は大きく異なります。今の大学受験は科目数も出題形式も複雑化し、単純な勉強時間だけでは測れない部分が増えています。しかし、親は自分の経験を基準に考えがちで、「自分の頃はもっと勉強していた」「一日10時間やるのが当たり前だった」と言ってしまうのです。
また、親は「結果が出ていない=努力が足りない」と考えやすい傾向があります。しかし、受験勉強は“量”だけでなく“質”も重要です。同じ5時間でも、集中して計画的に取り組んだ勉強と、なんとなく机に向かっただけの勉強では効果がまったく違います。それでも親は「時間」でしか判断できず、「もっとやりなさい」と言ってしまうのです。
「やっているのに認められない」心の傷
最もつらいのは、「やっているのに認めてもらえない」という感覚です。努力をしている人ほど、否定されたときのダメージが大きくなります。「こんなに頑張っているのに、まだダメだと言われるのか」と感じると、やる気は一気に低下します。中には、「どうせ何をしても評価されない」と思い、努力する意欲そのものを失ってしまう人もいるのです。
このような“否定体験”が積み重なると、受験勉強そのものが「苦痛」と結びつき、机に向かうことが嫌になります。やがて「勉強=怒られるからやるもの」というネガティブな意識が定着し、学びに向かう姿勢自体が崩れてしまうケースもあります。
親子関係が勉強効率を左右する
心理学的にも、親との関係性は学習パフォーマンスに大きな影響を与えることが分かっています。ポジティブなサポートを受けている生徒は、そうでない生徒と比べて成績が伸びやすく、自己効力感(「自分ならできる」という感覚)も高くなります。逆に、否定的な言葉を頻繁に受ける生徒は、自信を失いやすく、集中力や粘り強さが低下しやすい傾向があります。
つまり、勉強量だけでなく、「どんな言葉を受けて勉強しているか」も大きな要素なのです。親子関係がギクシャクしていると、同じ努力をしても成果が出にくくなります。受験勉強は「孤独な戦い」と言われますが、実は家庭という“環境”が大きな土台を支えているのです。
「つらい」と感じるのは甘えではない
ここで強調しておきたいのは、「親に責められてつらい」と感じることは決して“甘え”ではないということです。受験はただでさえストレスが大きく、プレッシャーに敏感な時期です。その中で、最も身近な存在から否定的な言葉を浴びるのは、想像以上に大きな負担になります。
「親に何を言われても平気でいなければ」と無理をしてしまうと、心が疲弊してしまいます。むしろ、「自分は今、しんどい状況にいる」と自覚することが、問題を解決する第一歩です。つらさを否定せず、正面から向き合うことが、前に進む力につながります。
よくある親の言動パターン
ここで、受験期にありがちな“親のプレッシャー”の例をいくつか挙げてみましょう。
- 「○○くんはもっと勉強しているらしいよ」
→ 比較されることで自己肯定感が下がりやすくなります。 - 「そんな勉強量で受かると思ってるの?」
→ 努力が全否定され、モチベーションが一気に低下します。 - 「成績が悪いのは勉強しないからだ」
→ 原因を単純化され、思考力や戦略の重要性が軽視されます。 - 「もっと頑張れ。親は応援しているんだから」
→ “応援”の言葉であっても、受験生にとっては“圧力”に聞こえることがあります。
これらの言葉は、親に悪気がなくても、受験生の心に深く刺さるものです。「言われても平気な人もいる」と思うかもしれませんが、敏感に反応してしまうのは自然なことですし、それだけ真剣に取り組んでいる証拠といえるでしょう。
親のプレッシャーがもたらす心理的影響
親からの圧力は、単なるストレスにとどまらず、学習行動そのものの質を下げる危険があります。具体的には、次のような影響が見られます。
- 自己効力感の低下:「自分はダメだ」という思考が根付き、勉強への意欲が下がる。
- 完璧主義の強化:「怒られないために100点を取らなければ」と考え、行動が極端になる。
- 回避行動の増加:「勉強=ストレス」となり、机に向かうこと自体を避けるようになる。
- 親子関係の悪化:「何をしても文句を言われる」と思い、家庭での会話が減る。
このような心理的な副作用は、学力以前の問題として大きな壁になります。受験勉強を続けるためには、心のエネルギーが欠かせません。親との関係がそれを奪ってしまうようでは、本末転倒といえるでしょう。
親との向き合い方を考える
親に勉強量を責められてつらいという悩みを解決するために、まず意識してほしいのは、「親の言葉に自分の価値を委ねない」という姿勢です。どれだけ親が厳しい言葉を投げかけても、それは“あなたの価値”そのものではありません。親が口にする言葉の多くは、「不安」や「期待」という感情の裏返しであり、それをすべて真に受けてしまうと、自分を見失ってしまいます。
「自分の努力を知っているのは自分だけ」という意識を持ちましょう。たとえ親が理解してくれなくても、自分の中で「今日もここまで頑張れた」と認めることができれば、それは確かな成長です。自分を信じる力こそが、受験期を乗り越える大きな支えになります。
本音を「冷静に」伝える
とはいえ、「親の言葉は気にしない」と割り切るだけでは根本的な解決にはなりません。ときには、自分の本音をきちんと伝えることが必要です。ただし、感情的に反論してしまうと、かえって関係がこじれてしまいます。ポイントは「冷静かつ具体的に」話すことです。
たとえば次のような伝え方が効果的です。
- 「自分でも足りないと感じているけど、今のペースで進めないと集中が切れる」
- 「言われると焦って逆に手が止まってしまうから、少し信じて見守ってほしい」
- 「こういう勉強計画を立てていて、これだけは毎日やっている」
このように、「やっていない」と受け取られないよう、具体的な事実を交えて説明することが大切です。親も「自分の意見を否定された」と感じず、「この子なりに考えている」と納得しやすくなります。
プレッシャーを“力”に変える思考法
次に意識したいのは、親からのプレッシャーを“敵”ではなく“燃料”に変えるという考え方です。たとえば、「うるさいな」と感じる言葉も、「それだけ期待してくれている証拠」と捉え直すと、少しだけ受け止め方が変わります。「信じているからこそ口を出す」と考えれば、モチベーションの原動力になることもあるのです。
また、「言われたからやる」ではなく、「自分が選んでやる」という主体性を持つことも重要です。同じ勉強でも、「やらされている」と思うと苦痛になりますが、「自分で選んでやっている」と思えば、自信につながります。親の言葉は“きっかけ”にすぎず、“行動の主導権”は常に自分にあると意識してみましょう。
精神的な距離を保つ工夫
受験期はどうしても家庭内の空気が張り詰めやすくなります。そんなときこそ、意図的に精神的な距離を保つ工夫が大切です。たとえば次のような方法があります。
- 勉強時間を「見える化」する:一日の勉強記録をノートやアプリに残し、「どれだけやっているか」を親に見える形にすることで、口出しが減るケースがあります。
- 会話の時間を限定する:「勉強の話は1日10分だけ」とルールを決めると、お互いのストレスが軽減されます。
- 自習場所を変える:家庭の空気が重く感じるなら、塾や図書館、カフェなど外の環境を活用するのも一つの方法です。
親の言葉は完全にはコントロールできませんが、「受け止め方」と「距離の取り方」は自分で選べます。無理に我慢し続けるより、「適切な距離」を取った方が、勉強の質も心の安定も保ちやすくなるでしょう。
親に“味方”になってもらう工夫
最も理想的なのは、親を「プレッシャーの源」ではなく「応援者」に変えることです。そのためには、「感謝の言葉」と「共有の時間」が効果的です。たとえば、「いつもご飯ありがとう」「応援してくれてるのは分かってる」と一言伝えるだけで、親の態度が変わるケースは多いものです。
また、週に一度だけでも「今週の勉強の進捗」や「次の目標」を共有すると、親は安心し、口出しが減る傾向があります。「この子はちゃんと考えている」と思えば、親も無理に介入しようとしなくなるのです。受験は孤独な戦いですが、味方が一人増えるだけで、精神的な負担は大きく減ります。
「親の期待」と「自分の人生」は別物
ここで忘れてはいけないのは、「親の期待」と「自分の人生」は同じではないということです。親はあなたの将来を心配して言葉を投げかけているかもしれませんが、最終的に人生を生きるのはあなた自身です。どの大学に進み、どんな道を選ぶかは、親ではなく自分が決めるものです。
だからこそ、「親を納得させるための受験」ではなく、「自分の夢に近づくための受験」という視点を持ってください。親の声がどれだけ大きくても、その声が“主役”になってはいけません。主役は常に、努力を積み重ねているあなた自身です。
「完璧な関係」を求めすぎない
受験期の親子関係は、多かれ少なかれ摩擦が起きるものです。意見がぶつかるのは自然なことであり、それ自体が“悪いこと”ではありません。「何を言われても仲良くいなければ」と考えると、かえって息苦しくなってしまいます。少しくらい距離を置いても構いませんし、「今は衝突しても仕方ない」と割り切っても良いのです。
大切なのは、「受験が終われば関係は変わる」という視点を持つことです。実際、受験を終えた途端に親との関係が改善したというケースは珍しくありません。一時的な摩擦を「一生続く問題」と思い込まないようにしましょう。
まとめ
親に勉強量を責められてつらいという悩みは、ほとんどの受験生が通る道です。努力を否定されたように感じ、自己肯定感が下がるのは自然な反応です。しかし、そのプレッシャーにただ押しつぶされるのではなく、自分の努力を信じ、主体的に行動することが大切です。
冷静に本音を伝える、具体的な事実で安心させる、距離を保つ、勉強記録を見せる――こうした工夫で、親との関係は驚くほど変わります。そして、「親の期待」と「自分の人生」は別物であると理解し、自分の意志で道を選ぶ覚悟を持つことが、受験期のメンタルを強くしてくれます。
プレッシャーは、時に重くのしかかります。しかし、それを“力”に変えることができたとき、あなたは受験という大きな壁を乗り越える力を手にしているでしょう!



