スカイ予備校・五十嵐校長が過去問の傾向を分析し、東北大学医学部保健学科 放射線技術科学専攻の出題可能性が高いテーマを厳選した予想問題です。
予想テーマ:AIと医療画像診断の未来
【このテーマを予想する根拠】
東北大学は画像診断・AIの先端研究拠点であり、放射線技術科学専攻ではAI活用が重要課題。近年の入試では医療技術の倫理・社会的意義を問う傾向が強く、AIと放射線技師の役割分担は現代的かつ本専攻に直結するテーマである。
課題文(約1802字)
医療の現場において、人工知能(AI)技術の導入は急速に進んでいる。とりわけ放射線医学の領域では、CT・MRI・PET検査などによって得られる膨大な画像データをAIが解析し、疾患の検出・分類・予後予測を行う試みが世界規模で展開されている。2016年にDeep MindがAIを用いた眼科画像診断において専門医と同等以上の精度を達成したことを皮切りに、胸部X線における肺結節検出、乳房超音波画像における悪性腫瘍の鑑別、脳MRIを用いたアルツハイマー病の早期診断など、AI活用の範囲は飛躍的に拡大してきた。こうした技術革新は、医療の効率化と診断精度の向上という二つの恩恵をもたらす可能性を秘めている一方で、放射線技師を含む医療専門職のあり方そのものを根底から問い直すものでもある。
AIによる医療画像診断の最大の強みは、その処理速度と一貫性にある。熟練した放射線診断医であっても、長時間の読影作業や夜間勤務における疲労によって見落としが生じるリスクを完全には排除できない。これに対し、AIは疲労も感情的揺らぎもなく、一定の基準で画像を解析し続けることができる。米国食品医薬品局(FDA)は2020年までに100件以上のAI医療機器を承認しており、日本においても2021年以降、厚生労働省がAIを用いた医療機器の薬事承認を相次いで実施している。国立がん研究センターが実施した研究では、ディープラーニングを用いた大腸内視鏡画像のAI解析がポリープ検出において専門医と同等の感度(約90%)を示したことが報告されており、AIの臨床的有用性は統計的にも裏付けられつつある。
しかし、AIの導入が直ちに医療の質を均一に向上させるわけではない点にも注意が必要である。AIモデルの性能は、学習に用いたデータセットの質と量に依存しており、特定の人種・年齢層・撮影機器に偏ったデータで訓練されたモデルは、異なる集団に対して著しく精度が低下するという「データバイアス」の問題が指摘されている。2019年にScience誌に掲載された研究では、米国の主要医療機関で使用されていたアルゴリズムが、同程度の医療ニーズを持つ黒人患者に対して白人患者より低いリスクスコアを付与していたことが明らかになり、医療AIの公正性に対する社会的関心が急激に高まった。このような問題は、技術的な精度指標だけでは測れない倫理的・社会的次元の課題を浮かび上がらせるものであり、AI開発の現場において多様なデータの収集と継続的な評価が不可欠であることを示している。
こうした状況のなかで、放射線技師の役割はいかに変容するのだろうか。一部では「AIが放射線技師の仕事を奪う」という悲観的な見方もあるが、より慎重な分析は別の方向性を示している。放射線技師の業務は画像の撮影・管理のみならず、患者への説明・体位のとりかた・造影剤の適切な使用・被曝線量の最適化など、高度なコミュニケーション能力と状況判断力を要する実践的スキルを多く含む。AIが代替できるのはあくまで「画像の解析」という工程の一部であり、患者と直接向き合い、個々の状態に応じた撮影条件を決定し、検査全体の安全性を管理するという専門的役割はむしろ重要性を増すと考えられる。世界保健機関(WHO)も2021年の報告書のなかで、AIは医療専門職を代替するのではなく、その能力を拡張・支援するツールであるとの見解を示している。
放射線技術科学の教育においても、AIリテラシーの涵養は喫緊の課題となっている。将来の放射線技師には、AIが出力した診断支援情報を批判的に読み解き、その限界や誤差を適切に評価できる能力が求められる。すなわち、AIを「使いこなす」ための技術的知識と、その結果を患者の利益に結びつけるための倫理的判断力の両方が不可欠である。東北大学をはじめとする医療系大学では、画像工学・情報科学・医療倫理を横断するカリキュラムの整備が進んでおり、次世代の医療専門職がAIと協働できる人材として育成される基盤が形成されつつある。技術の進歩が人間の専門性を凌駕するのではなく、技術と人間が相互補完的に機能する医療体制を構築することこそが、現代の放射線医療が目指すべき理想の姿である。AIの急速な発展は、医療従事者に単なる技術習得を超えた、社会的責任と倫理的感受性の涵養を強く促している。
設問
問1 本文中で述べられている「データバイアス」とはどのような問題か、100〜150字以内で説明しなさい。(100〜150字以内)
問2 筆者は放射線技師の役割についてどのような見解を示しているか。AIとの関係に触れながら200〜300字以内でまとめなさい。(200〜300字以内)
問3 AIと放射線技師が協働する医療の実現に向けて、放射線技術科学を学ぶ者として何を大切にすべきか。本文の内容を踏まえつつ、あなた自身の考えを600字以内で述べなさい。(600字以内)
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