記事の監修者:五十嵐弓益(いがらし ゆみます)
【全国通信教育】最短合格オンラインのスカイ予備校 校長
■小論文指導歴25年
これまでに指導した生徒は4000人以上、独自のSKYメソッドを考案で8割取る答案の作り方を指導。
スカイ予備校を高崎市内に開校し、2021年4月から、完全オンラインの大学受験予備校となり1年目から、国公立大学に27名の合格者を輩出。スカイ予備校の指導方針は、「大人になっても役に立つ勉強法の習得」です。「自分の人生は自分で切り拓く」教育をします
☆知らないと損する「小論文やっていはいけないNG動画」を無料プレゼント中!
北九州市立大学 外国語学部 国際関係学科の小論文対策
[令和5年度 学校推薦型選抜 90分]
問題 次の2つの文章を読んで以下の問いに答えなさい。
【資料1を要約】
キャンセルカルチャーの特徴として、以下の3つの点が挙げられます。まず、リベラリズムの規範と結びついており、社会的弱者を支持する一方で特権的な立場の者を非難し、古い価値観や権力構造に反対する志向があります。ジェンダーやエスニシティ、障害に関連し、人権侵害を行った者が主な対象となります。第二に、不寛容性があり、リベラリズムの規範に反する行為に対して厳しい処罰が求められ、情状酌量や量刑の考え方が抜本的に欠如しています。第三に、過去の行為が問題化され、時効の考え方が存在せず、昔の行為が掘り返されて糾弾されることがあります。これらの特徴のうち、第二と第三の点がキャンセルカルチャーの批判理由となっており、不寛容性と過去の行為の問題化が特に問題視されています。しかし、これらの特徴はリベラリズムの規範から見ると合理的で一貫しているとも主張されています。不寛容性は多様性を守るために不寛容な者に対して不寛容であるというカール・ポパーの議論に基づいて正当化され、過去の行為の問題化は価値観の変化を示すために必要とされています。この論理から、キャンセルカルチャーは道理をわきまえずに行動するのではなく、むしろ合理的で一貫した行動であるとの立場が取られています。
出典:伊藤昌亮著『炎上社会を考える自粛警察からキャンセルカルチャーまで』による。 ただし、 出題に際して原文の一部を改めた。
【資料2の英文を要約】
リンダ・ブラウン、ボブ・スミス、ミミ・ヤングのキャリアが順調に進んでいたが、ソーシャルメディアの影響で過去の問題が露呈し、それぞれの生活が損なわれた。キャンセル文化はソーシャルメディアの力を背景に急速に広まり、社会の分裂や不正義に対処しようとするものである。キャンセル文化は、議論の場で意見を抑制し、表現の自由を脅かす可能性がある。しかし、ポジティブな側面もあり、社会的運動を促進し、社会正義を向上させる可能性がある。新型コロナウイルス感染症の影響で不平等が浮き彫りになり、文化への依存を減少させる必要がある。
出典:Dino Sossi, “Can we cancel ‘cancel culture?’,” (The Conversation , July 21, 2021)
問1 資料1の下線部「むしろ合理的で 貫した行動」が意味するところを、250字以上300字以内の日本語で説明しなさい。
問2 キャンセルカルチャーが社会に及ぼす影響について、資料2の筆者がどのように整理しているかを説明し、あなた自身はその影響をどのように捉えるかを、資料2の具体例を必ず用いて、700字以上800字以内の日本語で述べなさい。
ポイント
出題意図
学校推薦型選抜の小論文は、資料 1 として伊藤昌亮『炎上社会を考える自粛警察からキャンセルカルチャーまで』(中公新書ラクレ、2022 年)を、資料2として Dino Sossi, “Can we cancel ‘cancel culture?’,” (The Conversation , July 21, 2021)を、それぞれ抜粋・変更して出題を行った。いずれの文献も、最近のいくつかの出来事を通じて(肯定的な意味でも否定的な意味でも)耳にすることが多くなった「キャンセルカルチャー」に関する議論を整理し、それが持つ問題点にも言及しており、分断が進むとされる世界の今後を考えるうえで示唆的な内容となっている。
<北九州市立大学の公開内容からの引用>
小論文過去問題解説
【求める能力】
問1は、資料1の最後にある記述の意味するところを書かせるもので、文章全体を読み取れているかどうかを確認している。単なる要約問題ではなく、筆者の展開する論理を正しく追う必要があるため、受験生の論理的な思考力と読解力を見ている。また、字数の関係で表現に一定の工夫を凝らす必要があることから、受験生の判断力と文章表現力を試すものでもある。
問2は、資料 2 の内容を簡潔にまとめたうえで、筆者の示す具体例に言及しながら、自分自身の見解を述べさせる問題である。ここでは第一に、英文を正しく読めるかどうかを問うている。第二に、2つの資料で示唆される寛容のあり方、自由と正義とが対立する局面への対応という困難な問題について、英文で示された具体例に即して受験生自身がどう考えるかを、正しい日本語で論理的に述べさせようと考えた。思考力・読解力に加えて、論理的な文章表現力を試す問いである。
解説(解法)
問1 では、筆者が導き出したキャンセルカルチャーの合理性・一貫性を、論旨に従って説明しなければならない。合理的でも一貫的でもないように見えるものがなぜ肯定的に評価できるのかを、正しく記述することが求められる。キャンセルカルチャーは不当な人権侵害を糾弾するものであるが、ともすれば寛容性を欠くことがある。特に過去の行為をやり玉に挙げることと、社会の寛容を保つことの間にある矛盾を、筆者がどのように論じているのかを読み解き、社会の変化・価値観の変化に言及しながら解答すればよい。受験生の解答を見る限り、読解に関してはおおむね問題なかったが、文章表現についてはある程度の差が見られた。
問2は、英文資料で整理されている議論をまとめ、そこで扱われた事例に即して自身の見解を述べるものである。キャンセルカルチャーは差別的な態度の抑止に効果があるものの、言論の自由に制約を課すことになるため、評価が難しい場合がある。筆者は、ネット上での議論になることから個々のケースによる調整が困難なこと、相互に敬意を持った対話がしづらい環境が広がりつつあること、単独では実現できない広範な社会運動に道を開く可能性があることなど、キャンセルカルチャーの特徴を指摘している。筆者の挙げている個々の事例は、いずれも過去の行為が現在のキャリアに影響を与えたものである。以上の内容をバランスよくまとめ、それにのっとって自分なりの結論を書くことができればよい。論理的な議論が展開されていれば、筆者の見解に対する賛否は得点に影響しないが、いずれの立場であれ、その根拠を説得力ある文章で表現しなければならない。
なお、注意事項にあるように、改行しないことを見落としているものや規程の字数に満たないものが散見された。いずれも減点対象となるので、問題文はもとより、注意事項もよく読んで解答しなければならない。また、問1・問2を通じて単純な表記ミス(誤字、文法上の誤りなど)もあった。
こうしたミスが致命傷になることもあるので、注意してほしい。
<北九州市立大学の公開内容からの引用>
北九州市立大学の所在地・アクセス
所在地 | アクセス |
北方キャンパス 福岡県北九州市小倉南区北方4-2-1 | 北九州モノレール「競馬場前(北九州市立大学前)」駅下車、徒歩約3分 |
ひびきのキャンパス 福岡県北九州市若松区ひびきの1-1 | JR「折尾」駅からバス(約20分)、 「学研都市ひびきの」下車、徒歩2分 |
【北九州市立大学】のHPはこちら
北九州市立大学の入試傾向
北九州市立大学の入試傾向は、以下のような特徴があります。
- 学力試験: 北九州市立大学では、学力試験として記述式の問題を出題しています。一般教養や基礎学問、論理的思考能力などが評価されます。
- 適性試験: 北九州市立大学では、学部や学科によって異なる適性試験が実施されます。例えば、外国語、数学、英語、理科、社会科学などの試験があります。試験内容や重視される科目は学部ごとに異なる場合があります。
- 英語力の重視: 北九州市立大学では、多くの学部・学科で英語力の重要性が強調されています。英語の適性試験や面接によって、英語の理解力やコミュニケーション能力が評価されることがあります。
学校成績と推薦入試: 学校の成績や推薦入試によって入学を希望する場合、成績優秀者や学校の推薦を受けた個別の入試方法が用意されています。推薦入試では、学校の成績や推薦状に加えて、面接やエッセイなどが行われることがあります
北九州市立大学の募集コース
募集要項はこちら
入試情報はこちら
外国語学部(定員数:265人)
英米学科 (定員数:135人)
英米学科では、1・2年次に英語集中プログラムを設け、留学に必要な語学力の育成を目指す。2年次からの専門教育では、Language and Education Program、Society and Culture Program、Global Business Programの3つのコアプログラムが導入される。専門科目の多くを英語で学ぶことによって、英語の実践力を高めると同時に、専門知識を身につける。加えて、留学などの単位化を充実させ、実践力を備えた人材を養成する。
中国学科 (定員数:50人)
中国学科では、少人数クラスと段階的・集中的な教育システムによって、中国語の修得を目指す。また、中国の文化や社会についても理解を深め、語学力、幅広い見識、そして行動力を備えた人材を育成する。3・4年次はゼミで専門について深める。
国際関係学科 (定員数:80人)
国際関係学科では、国際問題、とりわけ東アジア・北米地域の政治・外交問題に強く、英語を駆使できて、さらに中国語・朝鮮語に優れた国際人の養成を目指す。
また、国際関係領域(国際政治経済・国際機構・国際協力など)と、地域研究領域(東アジアやアメリカの政治・外交、経済など)の2科目群によって、国際人として必要な専門知識を身につけることができる。
経済学部(定員数:284人)
経済学科(定員数:142人)
経済学科では、経済理論と簿記・統計の修得を二本の柱に据え、経済学の高度な知識と応用能力を備えた、理論と実践を統合できる人材の育成を目指す。1年次には専門基本教育を徹底して行い、2年次以降は、応用経済学系と地域・産業系の2つの応用領域を設け、グローバル化・SDGsなど、時代や地域に対応したカリキュラムを設定している。
経営情報学科(定員数:142人)
経営情報学科では、経営学、会計学と情報科学とを統合した教育システムによる人材育成を図る。経営学の総合力と、会計学、情報科学の専門能力の両者を身につけることで、現実の組織や企業の戦略策定に関わることができる問題解決型の人材を養成する。
文学部(定員数:222人)
比較文化学科(定員数:142人)
比較文化学科では、文学、思想、歴史など、日本や欧米、アジアを中心とした国や地域における文化全般にわたって比較研究を行う。専門科目には、文学、芸術、メディアなどの生成や発展・変容を学ぶ文化資源領域科目と、文化の多様性を学び、異文化や他者への理解を深める文化共生領域科目がある。充実した語学教育とともに専門科目の修得を通して、国際人としての教養を身につけることができる。
人間関係学科(定員数:80人)
人間関係学科では、現代社会の諸問題を深く体系的に教育・研究し、人間と社会をトータルに理解する。心理学、社会学、社会福祉学、環境学、人類学、生涯教育学、生涯スポーツ学などの専門科目が開講されており、総合科学的な方面から学習することができる。2年次から実験、実習のほか、調査、フィールドワークなどの実践的教育が中心となる。
法学部(定員数:253人)
法律学科(定員数:177人)
法律学科では、現代社会における法律問題を解決し得る法知識と法理解(リーガルマインド)を持った人材を育成する。公務員・法曹資格者(裁判官・検察官・弁護士)など、学生のキャリアプランに応じて履修コースを選択できるので、それぞれが、必要な知識・理解を修得し得るような体系的なカリキュラムを設計している。
政策科学科(定員数:76人)
政策科学科では、地域・国家・国際レベルで生じている諸問題を発見・分析し、主体的に政策を構想・立案・実行できる「実践的能力」を養成する。そのため、4年間にわたり、コミュニケーション、ディスカッション能力など、政策能力を身につけるカリキュラムを幅広く提供している。また、少人数教育を重視し、ゼミナール(演習科目)でこれらの能力をさらに磨いていく。
地域創生学群地域創生学類(定員数:120人)
「地域の再生と創造」という時代の要請に応え、幅広い教養と地域に関する総合的な理解を身につける。カリキュラムは5つの科目群から構成されており、少人数演習のほか、福祉施設やスポーツイベントなどの現場実習がある。
地域活性化に活躍する人材を育成する地域マネジメントコース、社会福祉士やパラスポーツ指導員等の資格取得を目指すスポーツ・福祉コースの2コース制。
国際環境工学部(定員数:255人)
エネルギー循環化学科(定員数:45人)
エネルギー循環化学科では、環境問題の解決に向け、自然・環境と調和した化学技術とシステムの開発を学ぶ。
機械システム工学科(定員数:45人)
機械システム工学科では、環境・エネルギーの視点から機械工学の基礎、創造性、応用力を養い、「ものづくり」技術を通して「豊かな社会」と「持続可能な社会」を実現する方法を学ぶ。
情報システム工学科(定員数:70人)
情報システム工学科では、人間社会や環境におけるさまざまな課題について、電子・情報・通信技術の本質を捉えた解決法を提案するために、人工知能やロボット制御、画像処理、センサー技術など、最先端の情報技術を学ぶ。
建築デザイン学科(定員数:50人)
建築デザイン学科では、資源・エネルギーやエコロジー関連の研究分野と実践領域を統合し、建築学を基本に建築・地域システムと環境の共生を学ぶ。
環境生命工学科(定員数:45人)
環境生命工学科では、便利で環境にやさしい材料・製品の開発のためのバイオテクノロジー、またそれを環境・生態系に配慮し、社会で生かすためのマネジメント手法を学ぶ。