記事の監修者:五十嵐弓益(いがらし ゆみます)
【全国通信教育】最短合格オンラインのスカイ予備校 校長
■小論文指導歴27年
これまでに指導した生徒は4000人以上、独自のSKYメソッドを考案で8割取る答案の作り方を指導。
2020年4月から、完全オンラインの大学受験予備校となる。過去3年間で国公立大学合格85名。
高1から入会者は国公立大学合格率93%
高2から入会者は国公立大学合格率86%
高3の4月から入会者は国公立大学合格率73%。
スカイ予備校の指導方針は、「大人になっても役に立つ勉強法の習得」です。「自分の人生は自分で切り拓く」教育をします
1. デジタルデバイドとは
デジタルデバイドとは、情報通信技術へのアクセスや活用能力に差が生じることで、社会的格差が拡大または固定化されてしまう現象を指します。この概念は、インターネットやコンピューターなどのデジタル技術が日常生活やビジネス、教育、行政サービスなど、あらゆる分野で重要な役割を果たすようになった現代社会において、非常に注目されています。
具体的には、高速なインターネット回線を利用できる地域とそうでない地域、パソコンやスマートフォンを使いこなせる人と機器そのものを持たない人、さらにはデジタル知識を教育や研修で得られる層とそうでない層の間に深まる溝が「デジタルデバイド」として問題視されています。この格差は、単に技術を使える・使えないだけでなく、その結果として得られる情報・知識の量や質の差をもたらし、それが生活の質や就労機会、さらには地域間や国際的な経済発展にも影響します。そのため、デジタルデバイドは現代社会において克服すべき重要な課題となっているのです。
★私も、デジタル技術を日々使用していますが、高齢者と若者においての分断が明確だと感じます。これらはなぜ誕生してしまったのか、誕生したことによって何に影響していくのか、どうやったら解決されるのかを見ていきましょう。
2. デジタルデバイドの誕生
デジタルデバイドが表面化したのは、インターネットやパソコンが普及期を迎えた1990年代後半から2000年代前半にかけてです。もともと新興技術は、まず経済的に豊かな層や先進地域で受け入れられ、徐々に広がる傾向があります。そのため最初期には、高価な機器やインターネット回線を手に入れられる人々と、そうでない人々の間に情報アクセスの格差が生まれ始めました。
その後、スマートフォンやタブレットなどのモバイル機器が普及し、ウェブ上のサービスが多様化するにつれ、アクセス手段や利用スキルの差が拡大・再生産される状況が明確に見え始めたのです。また当初は先進国と途上国の間に顕著な差がありましたが、時間が経つにつれ、同一国内でも都市と地方、若者と高齢者、一定の教育を受けた層とそうでない層など、複数の軸で格差が折り重なるように存在することが明らかになっていきました。こうして「デジタルデバイド」という概念が、多様な文脈で語られるようになったのです。
3. デジタルデバイドが引き起こすことによる影響
デジタルデバイドが進行すると、単に情報を得るスピードや量に差が出るだけでなく、それが教育・就職・医療・行政サービスなど社会的インフラへアクセスする機会そのものの不均衡につながります。たとえば、オンライン授業への参加が困難な学生は、対面教育が受けられない状況下で学習機会を逃してしまいます。同様に、デジタル化が進んだ職場では、ITスキルが十分でない労働者が職を得にくくなったり、スキル差による昇進格差が拡大したりします。
また、オンライン申請が中心となった行政手続きが利用しづらいと、福祉や補助金申請から取り残される人々が生まれる可能性もあります。これらは国や地域全体の社会的公正性を損ねるだけでなく、経済発展のペースを鈍化させ、市場機会の不均衡や社会的対立を生み出すことも考えられます。こうした負の連鎖は、結局のところ国際的な競争力をも左右し、多くの人々にとって暮らしにくい環境をもたらしてしまうのです。
4. 具体的な課題
デジタルデバイドをめぐる具体的な課題は多岐にわたります。まずインフラ面では、ブロードバンド回線やモバイルネットワークの整備状況が地域間で大きく異なり、都市部では高速通信を前提としたサービスが当たり前に利用できる一方、地方や離島部では基本的なインターネット接続すら難しい場合があります。次に経済的要因として、情報端末の購入・維持費用や、IT教育を受けるためのコストが、低所得層には大きな負担となりがちです。
また、年齢や障がいの有無など、ユーザーの特性によってデジタル技術への適応に困難を抱えるケースも珍しくありません。さらには、教育環境でのIT活用が不十分な場合、学校での基礎的なデジタルリテラシー形成がままならず、社会に出た際にITスキル不足が機会損失につながってしまいます。これらの課題は複雑に絡み合い、単純な対策では解決が困難なため、多角的な取り組みが求められるのです。
5. 解決策
デジタルデバイドへの解決策としては、まずインフラ整備が不可欠です。公共事業や民間企業の参入促進によって、地方や過疎地においても高速インターネットを利用できる環境を整えることが求められます。加えて、低所得層や高齢者、障がい者などの多様なニーズに応じた支援策が必要です。例えば、補助金制度や端末貸与、低価格プランの提供などによって、経済的ハードルを下げることが考えられます。また、教育分野では、ITリテラシー教育を初等教育段階から実施し、使い方だけでなく、情報を批判的に評価し、活用する力を育むことが大切です。さらに、行政手続きや公共サービスのオンライン化においては、誰もが直観的に利用できるユーザーフレンドリーな設計が不可欠となります。これら複数のアプローチを総合的に進めることで、デジタルデバイドの解消につなげることができるのです。
6. 具体例①
一つの具体例として、地方の小規模学校でのオンライン教育環境整備が挙げられます。山間部に位置する過疎地域の小中学校では、従来、学習機会が都市部と比べて限定的でした。しかしブロードバンド回線の整備やタブレット端末の無償貸与により、遠隔地からでも質の高いオンライン授業が受けられるようになれば、地理的ハンデを大幅に軽減できます。実際に、自治体や NPOが連携して、IT活用を積極的に推進するモデルケースも存在します。そこでは、遠隔地の専門家やネイティブ講師がオンラインで授業を行い、都市部の学校に負けない教育水準を維持・向上する取り組みが進んでいます。また、テクニカルサポート体制を整え、教師自身のデジタルスキル向上や保護者の理解促進も並行して行うことで、持続的な学習環境が生まれます。このような事例は、教育分野でのデジタルデバイド解消の有効性を示し、全国的な模範となり得るのです。
7. 具体例②
もう一つの事例として、高齢者向けのデジタルサポートプログラムがあります。近年、オンライン行政手続きやデジタル決済サービスが拡大する中、高齢者がこれらを利用できない場合、生活の質が低下したり、必要な福祉・医療サービスへのアクセスが遅れることがあります。この問題に対して、地域の公民館やNPOが主導する「高齢者IT教室」や訪問サポートサービスが有効です。そこでは、基本的な機器の操作方法や安全なパスワード管理、オンライン詐欺への注意点など をわかりやすく教えることで、高齢者が安心してデジタル世界に参加できるようになります。
さらに、家族や地域コミュニティとの交流もオンラインツールを使って活性化し、社会的孤立の軽減にもつながります。こうした地道な取り組みの蓄積が、結果として高齢者層のデジタルデバイド解消に寄与し、全世代が情報社会の恩恵を享受できる環境づくりを支えているのです。
8. 今後の展望
今後、デジタルデバイド解消の取り組みは、さらに多様な方向へと展開していくことが期待されます。5Gや衛星インターネットなど新たな通信技術は、従来アクセスが難しかった地域へも高速で安定した接続環境を提供する可能性を秘めています。加えて、人工知能(AI)を活用した翻訳や音声認識、視覚支援技術が進歩すれば、言語や身体的制約を越えて情報利用がしやすくなるでしょう。
また、グローバルな視点では、国際的な連携や技術協力により、途上国をはじめとした環境整備が進むことも期待されます。こうした動きが相互に作用することで、デジタルデバイドは徐々に緩和され、より包括的で公平な情報社会が育まれるでしょう。最終的には、誰もがデジタル技術をストレスなく使いこなし、自らの生活や学び、仕事、地域コミュニティの活性化に活かせる世界の実現が目指されているのです。