「どこにも受からない」と泣いていた彼女が、指定校推薦でGMARCHに合格するまで

「どこにも受からない」と泣いていた彼女が、指定校推薦でGMARCHに合格するまで 五十嵐校長コラム

「先生、私、どこにも受からないと思います」

Aさんが私の前でそう言ったのは、高校3年生の7月だった。目を赤くして、制服の袖をぎゅっと握りしめながら。成績表を机に置いて、俯いたまま動かない。私はその瞬間、彼女の顔ではなく、その成績表をじっと見た。

数字だけ見れば、確かに厳しかった。評定平均は3.4。GMARCHの指定校推薦枠を狙うには、一般的に3.8〜4.0以上が必要とされている学校が多い。「難しいかもしれない」と思いかけた。しかし私はすぐにその考えを打ち消した。27年間、受験の現場を見てきた経験から、私は一つのことを確信している。数字は現時点のスナップショットに過ぎない。問題は、そこからどう動くかだ。

しばらく沈黙が続いた後、私はAさんに一つだけ聞いた。「Aさん、あなたは本当に大学に行きたいの?それとも、周りに言われたから来たの?」彼女は顔を上げ、少し間を置いてから言った。「行きたいです。経営を学んで、お母さんの仕事を手伝いたいんです」。その瞬間、私の中で何かが決まった。この子は動ける。あとは方向を示すだけだ。

Aさんのお母さんは個人で小さな雑貨店を営んでいた。娘が経営を学んで店を継いでくれることを、ずっと夢見ていたという。しかし面談の席では「先生に無理と言われたので、もう一般入試の準備をさせようと思っています。本人も諦めかけているみたいで……」と、声を落として話していた。お母さん自身も、どこかで娘の可能性を信じきれなくなっていた。その表情が、今でも忘れられない。私はそのとき、正直に言った。「お気持ちはわかります。でも、私はまだ諦めていません」と。

なぜ「評定が足りない」だけで諦めてしまうのか——本質的な原因

毎年、同じ光景を見る。7月になると、指定校推薦を諦めた生徒が一般入試の準備を始める。その理由のほとんどが「評定が足りないから」だ。しかし私はここで、一つの問いを立てたい。「評定が足りない」という判断は、本当に正しいのか?

まず数字の話をしよう。確かに、GMARCHの指定校推薦枠には評定平均3.8〜4.0以上を求める大学・学部が多い。これは事実だ。しかし重要なのは、指定校推薦の合否を決めるのは大学ではなく、高校の校内選考だという点だ。大学が「評定4.0以上の生徒を送ってほしい」と言っていても、高校が「この生徒を推薦したい」と判断すれば、その生徒が枠を得る。大学側は、高校が推薦した生徒を原則として受け入れる。つまり、戦う相手は大学ではなく、自分の高校の中にいる数人の競合相手だ。

ここに、多くの生徒と保護者が陥る根本的な誤解がある。「指定校推薦=評定点数の高い順に枠が配られる」という思い込みだ。実際には、校内選考の基準は学校によって大きく異なる。評定平均を一次スクリーニングに使う学校もあれば、面談・志望理由書・生活態度・部活実績・課外活動を総合的に評価する学校もある。私がこれまで関わってきた生徒の中で、評定3.5前後でGMARCHの指定校推薦枠を手にした生徒は、少なくとも12名以上いる。逆に、評定4.2を持ちながら校内選考で落ちた生徒も見てきた。

では、なぜ「評定が足りない」という言葉が一人歩きするのか。理由は二つある。一つは、担任の先生が「安全な助言」をしようとするからだ。評定が基準に届いていない生徒に「挑戦してみなさい」と言って、もし校内選考で落ちたとき、その先生は責任を感じる。だから無意識に、リスクを避けた言葉を選ぶ。これは先生を責めているのではない。人間として自然な反応だ。しかし、その「安全な助言」が生徒の可能性を早期に閉じてしまうことがある。

もう一つの理由は、生徒自身が「数字=自分の価値」だと思い込んでいるからだ。評定3.4という数字を見て、「私はそういう人間だ」と結論づけてしまう。しかし評定は過去の行動の記録であって、これからの行動の限界値ではない。27年間の現場経験から言い切れる。評定が低い生徒が指定校推薦で逆転するケースの共通点は、「諦めなかった」という精神論ではなく、「諦める前に動いた」という事実だ。

逆境——「指定校推薦なんて無理」と言われた生徒

Aさんは地方の公立高校に通う、どこにでもいる女子生徒だった。部活はバドミントン部。3年生になってから受験を意識し始めたが、1・2年生のうちに定期テストをおろそかにしてきた代償は大きかった。評定平均3.4という数字は、正直に言えばそのツケだ。

彼女の高校には、明治大学と法政大学の指定校推薦枠があった。しかし担任の先生には「あなたの評定では厳しい」と言われていた。保護者のお母さんも、面談で「先生に無理と言われたので、もう一般入試の準備をさせようと思っています」と私に話していた。

私はそのとき、正直に言った。「お気持ちはわかります。でも、私はまだ諦めていません」と。なぜか。指定校推薦は、評定平均だけで決まるわけではないからだ。多くの高校では、校内選考において「評定平均+その他の要素」で候補者を決める。その「その他の要素」に、まだ伸びしろがあると私には見えていた。

落ちた生徒と受かった生徒——二人の対比が教えてくれること

Aさんの話をする前に、もう一つのエピソードを紹介したい。同じ年、私が関わった別の生徒Bさんの話だ。BさんはAさんとは対照的に、評定平均4.1を持っていた。GMARCHの指定校推薦枠を狙うには、数字の上では申し分ない。しかし彼女は、校内選考で枠を逃した。

Bさんは「評定があれば大丈夫」という自信を持っていた。志望理由書の準備を始めたのは9月に入ってからで、進路指導の先生のところにもほとんど顔を出さなかった。私が「早めに動いた方がいい」と伝えたとき、彼女はこう言った。「でも、評定は一番高いので、たぶん選ばれると思います」。その言葉に、私は嫌な予感を覚えた。

校内選考の結果、Bさんは枠を得られなかった。選ばれたのは、評定3.8の別の生徒だった。後から進路指導の先生に聞いた話では、「Bさんは成績は良いが、なぜその大学で学びたいのかが伝わってこなかった。もう一人の生徒は、自分の言葉で志望理由を話せていた」という評価だったという。

一方、Aさんはどうだったか。7月から9月にかけて、彼女は変わった。定期テストの結果は、正直に言えば劇的ではなかった。評定平均は3.4から3.6に上がった程度だ。数字だけ見れば、まだ「推薦をもらえるライン」には届いていなかった。しかし彼女が変えたのは、数字ではなく姿勢だった。

進路指導の先生のところに週2回足を運び、大学で学びたいことを自分の言葉で話し続けた。志望理由書の下書きを何度も持ってきた。私のところにも毎週来て、「なぜ自分がその大学で学ぶ必要があるのか」を一緒に掘り下げた。

この二人の違いは何か。Bさんは「数字が自分を選ばせる」と思っていた。Aさんは「自分が選ばれるために動く」と決めていた。指定校推薦の校内選考は、成績優秀者への自動的な報酬ではない。先生が「この生徒を大学に送り出したい」と思う気持ちが形になったものだ。その気持ちを動かすのは、数字だけではない。

Bさんはその後、一般入試で別の大学に進んだ。本人は納得していたが、あの7月に少し早く動き始めていたら、結果は違っていたかもしれない。私はBさんのことを思い出すたびに、「早く動くこと」の価値を改めて感じる。受験において、後悔のほとんどは「もっと早く動けばよかった」という形をしている。

転機——「評定を上げる」ではなく「学校に選ばれる生徒になる」

私がAさんに最初に言ったことは、「評定を上げよう」ではなかった。

「Aさん、あなたが明治や法政の指定校推薦をもらうために必要なのは、点数を上げることじゃない。あなたの高校の先生に『この子を推薦したい』と思ってもらうことだ」

彼女は少し驚いた顔をした。当然だ。多くの受験生は、指定校推薦=評定点数勝負だと思い込んでいる。しかしそれは半分しか正しくない。

指定校推薦の校内選考は、担任・学年主任・進路指導の先生方が関わる。彼らが見るのは数字だけではない。「この生徒は大学に行って恥ずかしくない行動をしてくれるか」「推薦状を書いてあげたいと思える生徒か」という、人間的な信頼感も大きく影響する。27年間で見てきた現場だからこそ断言できる。評定が多少低くても、先生方の信頼を勝ち取った生徒が推薦枠を取ることは、決して珍しくない。

私はAさんに、具体的な行動を提案した。まず、3年生の1学期の定期テストで過去最高の点数を出すこと。評定3.4から劇的に上がらなくても、「直近で本気を出した」という事実が先生の印象を変える。次に、進路指導室に自分から足を運んで、先生と話す機会を作ること。そして、志望理由書の準備を人より早く始めること。

Aさんは黙って聞いていた。そして「やってみます」と言った。あの日の彼女の声のトーンは、今でも覚えている。小さかったが、震えていなかった。

保護者の皆さんへ——「諦めさせること」が親切ではない理由

ここで少し、保護者の方に向けて話をさせてほしい。Aさんのお母さんのように、「先生に無理と言われたから」という理由で子どもに諦めを促してしまう親御さんは、決して少なくない。その気持ちはよくわかる。子どもに無駄な努力をさせたくない。傷つけたくない。だから早めに現実を見せてあげようとする。これは愛情から来る行動だ。

しかし、私はここで一つのことをお伝えしたい。「早めに諦めさせること」は、子どもを守っているのではなく、可能性を奪っていることがある。

よくある間違いは、担任の先生の言葉を「最終判断」として受け取ることだ。担任の先生は、その生徒のことをよく知っている存在だ。しかし指定校推薦の戦略に精通しているかどうかは、別の話だ。「評定が足りない=諦めなさい」という助言は、リスクを避けた安全な言葉であって、可能性を精査した言葉ではないことが多い。

正しい行動は何か。まず、担任の先生の言葉を参考にしながらも、それを唯一の情報源にしないことだ。進路指導の先生に直接話を聞く。塾や予備校の指定校推薦に詳しい人間に相談する。その上で、「本当に可能性はゼロなのか」を冷静に判断する。

次に、子どもの「やりたい」という気持ちを否定しないことだ。Aさんのお母さんは最初、「無理だから諦めなさい」と言いかけていた。しかし私との面談の後、方針を変えた。「やれるだけやってみなさい。お母さんは応援する」と娘に伝えた。その言葉が、Aさんの背中を押した一つの要因だったと、後から本人が教えてくれた。

保護者の役割は、子どもに正確な情報と、挑戦できる環境を与えることだ。「無理」という言葉は、子どもの口から出る前に親の口から出てはいけない。それだけは、27年間の経験から確信を持って言える。

スカイメソッド——指定校推薦で逆転するための具体的な3つのアドバイス

では、具体的に何をすればいいのか。スカイ予備校で実践している指導の中から、特に効果が高い3つのアプローチを紹介する。

① 「先生との接触頻度」を意図的に上げる

指定校推薦の校内選考において、先生の「印象」は無視できない要素だ。しかし多くの生徒は、先生と話すのを待っている。自分から動かない。スカイ予備校では、指定校推薦を目指す生徒に対して「週に最低2回、進路指導の先生か担任の先生と話す機会を作りなさい」と指導している。話す内容は何でもいい。「最近、〇〇大学の学部について調べました」「志望理由書のここが上手く書けなくて……」という小さな相談でいい。重要なのは、先生の記憶に「この生徒は自分から動いている」という印象を刻むことだ。選考の場で先生の頭に浮かぶ顔は、自分から来た生徒の顔だ。

② 志望理由書を「7月中に第一稿を書く」

多くの生徒が志望理由書の準備を9月以降に始める。しかしスカイ予備校では、指定校推薦を目指す生徒に対して「7月中に第一稿を書き上げること」を求めている。完成度は問わない。荒削りでいい。なぜ早く書くのか。理由は二つある。一つは、早く書くことで「自分がなぜその大学を志望するのか」を早期に言語化できるからだ。言語化した内容は、先生との会話でも使える。もう一つは、第一稿を先生に見せることで、先生が「この生徒は本気だ」と感じるからだ。Aさんも、7月末に第一稿を進路指導の先生に持っていった。先生は驚いた顔をしながら「こんなに早く書いてきたの?」と言ったという。その瞬間から、先生のAさんへの見方が変わり始めた。

③ 「なぜその大学でなければならないのか」を3つの理由で言えるようにする

校内選考の面談や、大学側の面接において、最も問われるのがこの質問だ。「なぜ明治大学なのか」「なぜ法政大学の経営学部なのか」。この問いに対して、多くの生徒は「雰囲気が好きだから」「オープンキャンパスで良いと思ったから」という漠然とした答えを返す。それでは弱い。スカイ予備校では、この問いに対して「①その大学・学部でしか学べない具体的な内容」「②自分の将来の目標との接続」「③その目標を持つようになった原体験」の3層構造で答えられるよう指導している。Aさんの場合、「母の雑貨店の経営を学術的に理解し、持続可能な形で継承したい」という軸を作り、そこから法政大学経営学部のカリキュラムと接続させた。この軸があったからこそ、校内選考の面談で先生の心を動かすことができた。

合格——彼女が手にしたのは「枠」ではなく「自信」だった

9月の校内選考の結果が出た日、Aさんから電話がかかってきた。

「先生、法政大学の推薦、もらえました」

声が震えていた。今度は、嬉しくて。

後から進路指導の先生に聞いた話では、選考の場で「Aさんは自分から動いてきた。大学でもやっていける」という声が上がったという。評定だけで見れば他に上の生徒もいたが、「推薦したい生徒」として選ばれたのはAさんだった。

私はこのとき、改めて確信した。指定校推薦は「成績優秀者に与えられる褒美」ではない。「この生徒を大学に送り出したい」という先生の意志が形になったものだ。だから、先生に「この子を推したい」と思ってもらえる生徒が、枠を手にする。

合格の電話を切った後、私はお母さんにも連絡した。お母さんは電話口で泣いていた。「先生、あのとき諦めさせなくてよかったです」と言っていた。私は「お母さんが応援し続けたからですよ」と返した。それは本当のことだった。

この話から、受験生に伝えたいこと

Aさんのケースは、決して特別ではない。私がこれまで見てきた中で、同じような逆転劇は何度もあった。評定が足りないと言われた生徒が推薦をもらった。「あなたには無理」と言われた生徒がGMARCHに進んだ。その生徒たちに共通していたのは、「諦めなかった」という精神論ではない。もっと具体的なことだ。自分が選ばれるために何をすべきかを考え、動いた。それだけだ。

指定校推薦でGMARCHを目指す生徒に、私は必ずこう言う。「評定を上げることと、先生に信頼されることを、同時に進めなさい」と。どちらか一方では足りない。両方が揃ったとき、初めて枠が見えてくる。

そして、もう一つ。指定校推薦は「楽な道」だと思っている受験生が多い。確かに、一般入試と比べれば試験の形式は違う。しかし「楽」ではない。校内選考という、ある意味で一般入試より見えにくい競争がある。そこで勝つために必要な準備を、早い段階から始めた生徒が合格をつかむ。

Aさんは今、法政大学で経営学を学んでいる。先日、近況報告のメッセージが来た。「ゼミの発表で先生に褒められました」と書いてあった。私は読みながら、7月のあの日、泣きながら成績表を持ってきた彼女の顔を思い出した。そして、あのとき「難しい」という言葉を飲み込んで、「まだ諦めていない」と言った自分の選択が正しかったと、改めて感じた。

人は、動けば変わる。数字は、行動の前では絶対ではない。それだけは確かだ。

スカイ予備校では、指定校推薦の対策も一緒に考えます

スカイ予備校では、指定校推薦を目指す生徒の相談を随時受け付けています。「評定が足りるか不安」「志望理由書の書き方がわからない」「校内選考に向けて何をすればいいか」——そういった具体的な悩みに、現場の経験をもとに一緒に向き合います。

一度、話しに来てください。Aさんと同じように、あなたの話を聞くところから始めます。評定の数字を見て諦める前に、まず私に会いに来てほしい。その一歩が、すべての始まりになります。

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