不登校から難関大合格へ——「前例がない」が最大の武器になったCさんの話

不登校から難関大合格へ——「前例がない」が最大の武器になったCさんの話 五十嵐校長コラム

「校長先生、うちの子、高校にほとんど行けてないんです。でも大学に行きたいって言ってて……それって、無理ですよね?」

Cさんのお母さんが初めてスカイ予備校の扉を開けたのは、Cさんが高校2年の秋だった。声が震えていた。目が赤かった。おそらく、私に会う前から何度も泣いていたのだと思う。

私はその問いに、すぐには答えなかった。答える前に、Cさん本人の顔を見たかったからだ。


「前例がない」という言葉の重さ

Cさんは中学2年から不登校になり、高校は通信制に進んだ。しかし高校でも体調が安定せず、登校はほぼゼロに近い状態が続いていた。学習の空白は、3年以上に及んでいた。

お母さんが「無理ですよね」と言ったのには理由がある。それまで相談した塾や予備校に、ことごとく断られていたからだ。「うちでは対応できない」「学力的に厳しい」「まず高校の単位を…」。善意の言葉が、Cさん親子をどれだけ傷つけてきたか。

私はCさんに聞いた。「大学で何がしたいの?」

Cさんは少し間を置いて、こう言った。「心理学を学びたいです。自分みたいな子の役に立ちたいから」

私はその瞬間、決めた。この子を合格させる、と。


逆境——「3年分の空白」との戦い

Cさんの学力診断をすると、数学は中学1年レベル、英語は中学2年レベルからやり直す必要があった。受験まで残り1年半。客観的に見れば、確かに「無理」に見える数字だ。

しかし27年間で見てきた現場だからこそ断言できます。学習の空白と、学ぶ力の空白は、まったくの別物です。

Cさんには、際立った特性があった。一度腑に落ちると、驚くほど深く理解する。表面的な暗記ではなく、「なぜそうなるのか」を自分の言葉で説明できるまで考え続ける。不登校の期間中、彼女はずっと本を読み、考え続けていたのだ。その思考の筋肉は、同世代の誰よりも鍛えられていた。

私たちがやるべきことは、その思考力に「学校の知識」を乗せることだった。

最初の3ヶ月は、週3回・1回2時間の個別指導から始めた。教室に来ることが難しい日は、オンラインに切り替えた。「来られなかった」ことを責めるのではなく、「来られた日に最大限やる」。それだけを約束した。

お母さんからは毎週のように連絡が来た。「今週は調子が悪くて…」「また休んでしまって…」。私はそのたびに同じことを伝えた。「Cさんは前に進んでいます。ペースが違うだけです」


転機——「自分にしかない強み」に気づいた日

転機は、高3の夏に訪れた。

志望校の過去問を初めて解いたとき、Cさんは小論文の問題でほかの受験生とは全く異なる視点の答案を書いた。テーマは「現代社会における孤独」。模範解答的な構成とは程遠いが、当事者としての深い洞察が随所に光っていた。

私はその答案を読んで、正直に言う。鳥肌が立った。

「Cさん、これを書けるのはあなただけだよ」

彼女は目を丸くした。「でも、形式がバラバラで…」「形式は直せる。この中身は教えられない」と私は返した。

ここで一つ、本質的なことを言わせてほしい。不登校の受験生は「ハンデがある人」ではありません。「普通の受験生が持っていないものを持っている人」なだけです。

学校という場所で3年間を過ごした受験生は、ある意味で均質化される。同じ授業を受け、同じ試験を受け、同じ価値観の中で育つ。Cさんにはそれがなかった。だからこそ、彼女の思考は誰にも似ていなかった。面接でも、小論文でも、それは圧倒的な強みになった。


合格——そして「次の誰か」のために

Cさんは翌春、第一志望の大学・心理学部に合格した。

合格発表の日、お母さんから電話が来た。泣いていて、最初は何を言っているかわからなかった。しばらくして、「ありがとうございます」という言葉だけが聞こえた。私も、少し泣いた。

Cさんは合格後、私にこんなメッセージをくれた。「不登校でも大学に行けるって、次に悩んでいる子に伝えてほしいです」。だから今、私はこの記事を書いている。


Cさんの話から、私が伝えたいこと

毎年、Cさんと似た境遇の受験生がスカイ予備校を訪ねてくる。不登校、中退、学習の空白、発達特性、家庭環境——理由はさまざまだ。そしてそのほぼ全員が、最初にこう言う。「自分みたいな人間が受験していいのか、わからなくて」と。

いいに決まっている。

大学受験は、「正しいルートを歩んできた人のためのゴール」ではない。どこから来ようと、今日から走り始めた人間にも、ちゃんとゴールテープは用意されている。

私が27年以上・1万人超の受験生を見てきて確信していること。それは、「遅れた分だけ深く考えてきた人間は強い」ということだ。Cさんはその最もわかりやすい証明だった。

もしあなた、またはあなたのお子さんが「自分には無理かもしれない」と思っているなら、一度だけ私に話してほしい。無理かどうかは、私が一緒に考える。あなたが一人で決めることじゃない。

スカイ予備校では、不登校・学習の遅れ・通信制高校在籍など、さまざまな背景を持つ受験生の個別相談を随時受け付けています。まずは話すだけでも、構いません。

【五十嵐より追記】
(この記事を読んで思い出したこと、追加で伝えたいことをここに記入してください)
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