評定2.8でも国公立大学に推薦合格できた――Fさんが使った「逆転の戦略」とは

評定2.8でも国公立大学に推薦合格できた――Fさんが使った「逆転の戦略」とは 五十嵐校長コラム

「先生、私って推薦受けられないですよね……」

Fさんが初めて私の前に座ったのは、高校3年生の6月のことだった。うつむき加減で、手の中でシャーペンをくるくると回しながら、絞り出すようにそう言った。

評定平均2.8。

確かに、世間一般の「推薦入試のイメージ」からすれば、厳しい数字だ。多くの受験生が「推薦は評定が高い人のもの」と思い込んでいる。Fさん自身もそう思っていた。だから相談に来るのをずっと迷っていたと、後から教えてくれた。

私はその数字を見て、正直に言えば「簡単ではない」と思った。しかし同時に、27年間で見てきた現場だからこそ断言できることがある。評定が低いことと、推薦で合格できないことは、まったく別の話だ。

「評定が低い=推薦は無理」という思い込みを壊す

推薦入試には大きく分けて、学校推薦型選抜と総合型選抜(旧AO入試)がある。前者には確かに「評定平均◯以上」という出願条件が設けられているケースが多い。しかし総合型選抜においては、評定の条件がない、あるいは非常に緩やかな国公立大学が存在する。

Fさんはそのことを知らなかった。いや、知らなかったのはFさんだけではない。毎年、この塾に来る受験生の半数以上が「推薦=評定が高い人のもの」という誤った前提を持ったまま、一般入試一本に絞って疲弊していく。

これは情報の問題だ。そして情報は、戦略に直結する。

私はFさんに、まずこう伝えた。「あなたが受けられない推薦があるのは本当。でも、あなたが受けられる推薦も、確かにある。今日はそっちの話をしよう」

Fさんの目が、初めて前を向いた。

Fさんの「武器」を掘り起こす作業

総合型選抜で評価されるのは、評定だけではない。志望理由、これまでの活動実績、そして「この大学でなければならない理由」を語れるかどうか、だ。

私がFさんと最初にやったのは、徹底的な「棚卸し」だった。

「部活は?」「3年間、ボランティア部で地域の高齢者施設に通ってました」「何をしてたの?」「レクリエーションの企画とか、話し相手とか……」「何人くらいのお年寄りと関わった?」「延べで言うと、たぶん200人以上は」

私はここで、ピンと来た。

Fさんは自分の活動を「たいしたことない」と思っていた。しかし3年間で延べ200人以上の高齢者と直接関わった経験は、大学の面接官の目線で見れば十分に「語れる実績」になる。問題は実績の大きさではなく、そこから何を学び、何を考えたか、という「思考の深さ」を言語化できるかどうかだ。

さらに掘り下げると、Fさんには明確な志望動機があった。施設での活動を通じて「認知症の方のコミュニケーション支援」に強い関心を持ち、福祉系の学部で専門的に学びたいという気持ちが芽生えていたのだ。

これは強い。評定2.8など、吹き飛ばせる強さだと私は確信した。

志望校の絞り込みと「出願戦略」の設計

次に行ったのは、志望校の選定だ。Fさんの条件を整理すると、①評定の出願要件がない総合型選抜を実施している、②福祉・社会福祉系の学部がある、③国公立大学である、という3点に絞られた。

全国の国公立大学の入試要項を丁寧に調べると、条件を満たす大学がいくつか浮かび上がった。その中からFさんの志望理由と研究内容が最もフィットする大学を第一志望に設定した。

ここで私が強調したいのは、「受かりそうな大学を探す」のではなく、「自分の話が最も活きる大学を探す」という発想の転換だ。総合型選抜は、大学と受験生の「相性」を問う入試だ。どれだけ自分の経験と大学の教育理念が重なるかが、合否を分ける。

面接・小論文の準備――「語れる自分」をつくる3ヶ月

出願書類の準備と並行して、面接練習と小論文対策を始めた。

最初のFさんの面接は、正直、聞いていてつらかった。声が小さく、目線が泳ぎ、「えーと」「なんか」という言葉が頻繁に挟まる。内容は悪くないのに、伝わらない。もったいない、と私は思った。

しかしこれは才能の問題ではない。練習量の問題だ。

週2回の面接練習を積み重ね、8月には志望理由書を完成させた。9月に出願し、10月の面接試験を迎えた。

面接当日、Fさんは緊張で手が震えていたと後から言っていた。それでも、練習通りに話せた。「認知症の方が笑顔になった瞬間を、今でも鮮明に覚えています」という一言が、面接官の表情を変えたと本人は感じたそうだ。

11月、合格通知が届いた。

もう一人の事例――評定2.5から地方国立大学の教育学部へ

Fさんの話と合わせて、もう一つのケースも紹介したい。

2年前、同じような状況で相談に来たGさん(男子)がいた。評定平均は2.5。「担任の先生に推薦は無理だと言われた」と、半ば諦めた顔でやってきた。

GさんはIT系の専門学校を目指していたが、話を聞くうちに「本当は教師になりたい」という本音が出てきた。親に反対されるのが怖くて、誰にも言えていなかったという。

私は率直に伝えた。「それが本音なら、そっちを目指すべきだ。評定2.5でも、総合型で教育学部に出願できる国立大学はある」

Gさんの保護者の方も最初は半信半疑だった。面談の席で「本当に大丈夫なんですか」と何度も確認された。私は「保証はできません。でも、戦略と準備次第で十分に勝負できる、とは断言します」とお伝えした。

Gさんは見事に合格した。今は教員採用試験に向けて頑張っていると、年賀状で知らせてくれた。

低評定の受験生が推薦で合格するために、本当に必要なこと

27年間で1万人以上の受験生を見てきた私が、ここではっきり言う。

評定が低い生徒が推薦入試で不合格になるのは、評定のせいではない。「どうせ無理」と思い込んで、情報収集も戦略立案も諦めてしまうからだ。

評定は過去の結果だ。変えられない。しかし、これからの3ヶ月から6ヶ月で何をするかは、今この瞬間から変えられる。

総合型選抜で問われるのは、あなたがどんな人間で、何を考え、この大学で何をしたいのか、だ。その問いに誠実に向き合い、言語化し、練習を積んだ受験生が合格する。評定が高いかどうかは、その後の話だ。

Fさんは今、大学で福祉を学んでいる。先日、近況を教えてくれるメッセージが届いた。「先生、ゼミでやりたいこと全部できてます」という一文が、私には何よりの報告だった。

評定2.8から国公立大学へ。この事実は、戦略と準備があれば現実になる。

もしあなた、またはお子さんが「評定が低いから推薦は無理」と思っているなら、一度スカイ予備校に相談しに来てほしい。あなたの状況を聞いた上で、正直に、使える戦略があるかどうかをお伝えする。背中を押すだけでなく、地図を一緒に描く場所でありたいと、私はいつも思っている。

【五十嵐より追記】
(この記事を読んで思い出したこと、追加で伝えたいことをここに記入してください)
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