記事の監修者:五十嵐弓益(いがらし ゆみます)
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都留文科大学 文学部 比較文化学科の小論文対策
[令和5年度 学校推薦型選抜(一般) 90分】
設問 次の課題文を読み、設問に答えなさい。
課題の要約文です。
新型コロナウイルス感染が拡大する中、アメリカでは特に子供たちの感染が増加しており、学校でのマスク着用についての論争が激しくなっています。共和党の知事が学校でのマスク着用を義務付けない行政命令を出し、これに反発する一部の学区が存在しています。ワクチン未接種の子供たちに対する学校でのマスク着用を支持する保護者と、共和党支持者の中での意見の分かれ具合が浮き彫りになっています。感染力が強まったデルタ株と12歳未満の子供たちの未接種が感染の増加要因となっています。
学校での対面授業を進めるCDCやAAPの意見と、最新のデルタ株の影響に対する状況が対立しており、また、マスクの効果や研究結果からは、マスクの徹底的な着用が感染者数を大幅に減少させる可能性が示唆されています。この論争は個人の自由と公共の利益の対立を中心にしており、一部の親たちはマスクの効果に疑念を抱きつつも、子供たちの肌トラブルや心理的な問題を懸念しています。
連邦政府と各州の意見対立が表面化し、バイデン政権は各州の教育政策に直接の影響力は持たないものの、マスクの着用を要請する動きが見られます。子供たちの安全を守るためには感染対策が必要であり、12歳未満の子供たちにはワクチンがまだ適用されていないため、マスクの着用が有効な手段とされています。全国的な一貫性のある対応が求められている状況です。
出典:Tara Haelle/三枝小夜子訳「個人の自由か公共の利益か 米、学校でのマスク論争激化」『ナショナルジオグラフィック日本版サイト』2021年9月1日公開より作成。
問1 課題文において述べられている「アメリカのマスク論争」の経緯と特徴を200字程度でまとめなさい。
問2 課題文が提起する「個人の自由と公共の利益」をめぐる問題について、具体的な事例を挙げながら、あなたの考えを字以内で述べなさい。なお、事例は新型コロナウイルス問題に限定しなくてもよい。
ポイント
出題意図
今年度は、課題文は1つで、Tara Haelle/三枝小夜子訳「個人の自由か公共の利益か 米、学校でのマスク論争激化」(『ナショナル ジオグラフィック日本版サイト』2021 年 9 月 1 日)を出題した。コロナ禍が収束しない中、各国ごとに公共の利益を理由としてどの程度個人の自由が制限されるのか議論が戦わされている。そのなかでアメリカの事情を取り上げた。今回は論述に際して踏まえる具体的な事例をコロナ禍問題に限定しないでよいとして解答しやすくした。長い文章を選び1つの課題文の出題に止めた。
【評価のポイント】
問一では、アメリカにおけるマスク論争の経緯と特徴の要約を求めている。経緯は、共和党知事のマスク着用禁止令とそれへの反発であり、特徴は自由と公共の利益が共和党と民主党との政治的対立の争点になっていることである。共和党は個人の自由を重視し、民主党は公共の利益を重視している。しかし共和党知事の州内でのマスクを着用しないようにという圧力に対しては、民主党はマスク着用義務化を重視しつつも、個人はマスクを着用する自由があるという主張もしている。そのため民主党もあくまで個人の自由と選択の権利を重視しつつ、相対的に公共の利益も時には重視するということである。この点で共和党=個人の自由、民主党=公共の利益と安易に断定することはできない。こういった細部までの目配りを求めた。
問二では個人の自由と公共の利益をめぐる問題について具体的事例をあげながら考えを展開できているかがポイントである。本文に即してコロナ禍の事例で回答する場合は、マスク着用禁止の圧力があるなかでマスクを着用する自由にも着目した解答などを期待した。
今回は、具体的事例はコロナ禍に限らないと明記して出題したが、コロナ禍以外では身のまわりのささいな事よりも社会性のある事例をあげることを期待した。その際に具体的に言及することが望ましく、一般論で終始する答案は高い評価をつけることができない。事例としては、ヘイトスピーチをする自由と禁止を求める声、プラスチックなどを廃棄することに対して環境のため禁止すべきという主張、積極的差別是正策での大学での特定人種への入試優遇制度の是非、ジェンダー平等指数と関連して掲げられる国会議員、会社幹部などでの女性枠などから、テロリズム犯罪者への拷問が許されるか否か、エイズが蔓延するなかでカトリック教会が避妊具着用を禁止したことの是非などを予測した。身近な事例としては校則での服装制限、携帯禁止などであるが、このような身近な事例を取りあげること自体は問題ないが、社会的な考察にまで広がらない解答はあまり望ましくない。
【解答の傾向】
問一について、アメリカにおけるマスク論争の経緯と特徴の要約を求めた。共和党知事のマスク着用禁止令とそれへの民主党支持者の反発が経緯であるため、ここで共和党と民主党との政治的対立に少し触れるが、それが特徴であると自覚した解答は少なかった。個人の自由と公共の利益との対立については触れるがそれぞれの具体的な意味内容を理解していない解答が多かった。民主党はここでは公共の利益を求めているが、根底においては個人の自由と選択の権利を重視していることに触れた答案はほぼなかった。
問二については、マスクの着用について述べた答案が目立ち、また公共の利益か個人の自由かの二者択一で論じるものが多かった。取り上げる事例はコロナを扱うものが多かった。ただコロナ以外の事例も少なくはなかった。ウクライナ戦争に関連した事柄が多く、日本国内でのロシア人への差別などが取り上げられていた。予測したとおりヘイトスピーチ、環境問題を取り上げる答案が一定数あった。さらに学校の制服規制、クラブ活動や女性専用車両をとりあげたものがあ ったが、議論をうまく展開できていた。事例として身のまわりのことを扱うことは問題ないが、社会的な考察にまで広がらない解答が多かった。ハローウィン、監視カメラ、コンサートでの声出しなどを取り上げた答案があった。
自由と公共の利益のどちらを優先するかについて、ディベート的に立場を明記した上で議論を
展開するかたちの論述が多かった。それ自体は問題ないが、自らが掲げる立場ではない側に対する考慮に欠ける論述も多く、それが論理の破綻につながっているものも少なくなかった。
ごくわずかではあるが、「自由か公共の利益か」という二項対立的な理解そのものを疑問視する論述や、こうした選択を個人に強いる「自己責任」社会のあり方について考察する論述が見られ、多角的かつ厚みのある論理展開を目指す解答があったが、これは大変高く評価できた。
受験生にとって、「自由」は当たり前のものとして与えられていることが前提になっていると見受けられ、「自由」を、「勝ち取る」もの・こと、「つかみとる」もの・こと、として語る答案がまったくなかったことが印象的であった。
常日ごろから紙媒体の新聞記事などを読む習慣をつけ、与えられた情報を吟味できるようになることが求められる。原稿用紙の使い方や段落の分け方はおおむね問題はなかった。誤字脱字は減点対象であるが、全体的には少なかった。中学、高校で学ぶ地歴・公民、現代社会などを学習するとともに、ニュースに関心を払って学んでいってほしい。
<都留文科大学の公開内容からの引用>
小論文過去問題解説
問1では、アメリカのマスク論争の経緯と特徴を200字にまとめる必要があります。この際、論争の背景や主なプレーヤー、異なる意見の衝突などを簡潔に説明することが求められます。課題文から得られる情報を元に、時系列や主要な出来事を整理し、語呂よくまとめることが肝要です。
問2では、「個人の自由と公共の利益」に焦点を当て、具体的な事例を挙げつつ自身の意見を述べる必要があります。まず、新型コロナウイルス問題以外の事例も許容されているとの指示があるため、他の社会問題や歴史的な出来事を思い浮かべることが重要です。選んだ事例を具体的に説明し、個人の権利と公共の福祉の対立点やバランスの重要性に触れることが求められます。また、自身の意見を簡潔かつ論理的に表現し、事例との結びつきを示すことがポイントです。
解答時には、情報を要約し、簡潔で明確な表現を心がけましょう。また、課題文との関連性を意識し、課題文から導き出されるキーワードやテーマに焦点を当てることが良い回答のポイントとなります。
都留文科大学の所在地・アクセス
所在地 | アクセス |
山梨県都留市田原3-8-1 | 富士急行線「都留文科大学前駅」下車、徒歩5分 |
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都留文科大学の入試傾向
都留文科大学の入試傾向は、以下のような特徴があります。
都留文科大学の入試は、各学科ごとに異なる傾向があります。それぞれの学科では、異なる能力や知識が求められるため、対策も適切に選択する必要があります。
例えば、英文学科では英文読解力や英語表現力が重視されます。これに対処するためには、様々なジャンルの英文に触れ、リーディングスキルを向上させることが重要です。また、比較文化学科では政治・経済・社会に関する問題が出題され、論理的思考が必要です。これに対しては幅広い知識を身につけ、論理的な思考力を高めることが有益です。
国文学科では、現代文、古文、漢文の3つの分野から出題され、文学の理解と解釈が求められます。これに対処するには、日常的な読書や文学作品の鑑賞を通じて、豊かな言葉の理解を深めることが有益です。
国際教育学科では現代の社会問題に関する英文を理解し、論理的な英語表現力が必要です。これに対する対策としては、国際情勢や社会問題に関する幅広い知識を得つつ、論理的な英語表現を養うことが挙げられます。
学校教育学科や地域社会学科では小論文試験があり、文章の分析力や論理的な考察が問われます。これに対処するためには、幅広い教養や社会問題について理解を深め、文章力と論理的構成力を向上させることが必要です。
総じて、入試対策は単なる試験勉強だけでなく、幅広い知識と論理的思考力を養うことが不可欠です。日頃から積極的に学び、自分の考えを明確に表現できる力を養っておくことが、都留文科大学の入試での成功につながります。
都留文科大学の募集コース
募集要項はこちら
入試情報はこちら
文学部(定員数:240人)
国文学科 (定員数:120人)
国文学第一演習IV(近世)で近世文学の多様性に触れる
近世文学とは基本的に江戸時代の文学を指します。国文学第一演習(近世)では、井原西鶴らによる連句『俳諧虎渓の橋』および竹田出雲等作の浄瑠璃『菅原伝授手習鑑』『寺子屋』の丁寧な注釈作業を通じて、近世文学作品研究のために必要な知識、調査の手順を身につけます。
英文学科 (定員数:120人)
World Englishes I・IIで各国独自の英語を理解する力を身につける
英語の歴史、現在の使用の状況、世界全体での変種の広がりなどについて知り、英語という言語を体系的に学びます。母国話者(英語を母国語とする人)を対象として書かれた資料を読み、「標準」英語とは何か、「母国話者」とは誰か、という根幹的な議論を行い、英語が主要な世界語とされる考えについても分析します。
教養学部(定員数:490人)
学校教育学科 (定員数:180人)
「教育原理」は学校教育学科の必修科目で、1年生全員が前期・後期にわかれて受講します。教育史に関する資料を自分で読み取り、解釈することを大切にしています。ロックやルソーなどの思想家がどう社会のあり方と関わり教育のあり方を構想したか、という視点で彼らの思想に改めて出会うことも授業の面白さのひとつです。
地域社会学科 (定員数:150人)
アクティブラーニングで4つの力を鍛錬する
さまざまな人々と一緒になって問題解決に向けて活動するためには、地域理解力、構想力、行動力、そして協働力が必要です。確かな力を育むため、1年次から実践的能力を重視し、グループディスカッションやディベートなど、アクティブラーニングも積極的に導入しています。
演習(自治体経営論)I~IVで地域の現状を自分の目で見て、課題と解決策を考え、実践につなげる
少子高齢化・人口減少が進む地方で持続可能な社会を築くためには、これまでの公と民のあり方を見直し、互いに連携し合って、私たち一人ひとりが社会へ主体的に参画していくことが必要です。「演習(自治体経営論)」では、対象となる地域を訪れ、自治体や市民と連携して実践していきます。
比較文化学科 (定員数:120人)
「共生社会論」では異なる文化の出会いの場を意味する「コンタクトゾーン」に着目し、異文化に属する人々が互いの存在を「了解」することがいかに可能かを、特に移民・外国人の視点から考えます。多文化共生がどのようなことを意味するのか、米国・ロサンゼルスの日系人移民社会や日本とブラジルの交流史などを学びます。
国際教育学科 (定員数:40人)
「ATL」とは国際バカロレアの中で使われる用語であり、「21世紀スキル」と呼ばれるような、コンピテンシーや社会性スキルを、いかに教科教育の中にしみ込ませ、子どもたちに教えていくかというティーチングのノウハウを学ぶ授業です。アクティブラーニングを活用しながら様々なスキルを向上させるための授業を学びます。