受験生の皆さんがいま向き合っている共通テスト。中でも「生物」は、知識だけでは立ち向かえない科目になりつつあります。かつてのように単語をひたすら暗記する時代は終わりを告げ、「考える力」「つなげる力」「読み解く力」が問われています。
この変化にいち早く対応できた生徒が、いわば“勝者”となる時代です。では、どうすれば生物で安定して9割を突破できるのか?
今日はそのための具体的な戦略を解説いたします。

記事の監修者:五十嵐弓益(いがらし ゆみます)
【全国通信教育】最短合格オンラインのスカイ予備校 校長
■小論文指導歴27年
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暗記から“思考”へ。生物は論理で解ける時代へ
共通テストの生物は、かつてのセンター試験よりも明らかに「知識をどう使うか」を重視した形式になっている。かつての「一問一答」型から脱却し、現在では実験考察・グラフ読解・資料分析など、実際の研究プロセスに基づいた出題が主流だ。
つまり、教科書に載っている用語や構造を知っているだけでは高得点は取れない。なぜその現象が起こるのか、どのように結果が導かれるのか、他の条件に変化があった場合どうなるのか、といった「論理的思考」が必要不可欠になっている。
また、生物は暗記量が膨大だが、すべてを丸暗記するのは現実的ではない。むしろ、「流れ」や「因果関係」を理解しながら学ぶことで、知識の定着と応用力を同時に高めることができる。
本記事では、共通テスト生物で9割を狙うための具体的戦略を、「出題傾向と設問形式の理解」「概念の論理的整理」「実戦演習と見直しの技術」という3つの柱に分けて解説していく。
■第1章:出題傾向と設問形式の理解
【1】実験考察型問題の増加
もっとも特徴的なのが「実験に基づく考察問題」の割合が高い点である。たとえば、「ある条件で酵素反応を行った場合の結果を予想せよ」「突然変異を起こした細胞の働きを説明せよ」といった設問が典型的だ。
これらは、事前知識を前提に、「何が変数か」「どの要素が結果に影響するか」を自分で論理的に読み解く力が問われる。したがって、実験の基本構造(対照群・変数・目的・結果)を正しく読み取るトレーニングが必要だ。
【2】図表・グラフ読解の比重
教科書や資料集では見慣れない形式の図表が出題されることもあり、「グラフの軸」「データの傾向」「例外の扱い」などを即座に判断する力が必要になる。
たとえば、「酸素濃度と呼吸速度の関係」「温度と発芽率の推移」など、実験データを正確に読み取って、問題文の指示に従って答えを導く必要がある。普段から“意味を持って図表を読む”意識を持つことが重要だ。
【3】選択肢の微妙な違いに注意
共通テストの選択肢問題は、「すべて正しく見える」ような選択肢が並び、わずかな論理のずれや知識の誤りを見抜く力が問われる。
たとえば、「DNA合成の際にRNAプライマーが必要である」といった記述は正しいが、それを「DNAポリメラーゼが直接合成開始できる」と誤って表現されるケースがある。このような“ひっかけ”に気づくには、用語の定義だけでなくプロセス全体の理解が必要だ。
【4】設問文の読解力も重要
問題文には、条件や制約が細かく記述されており、それを正確に把握する読解力が不可欠である。「〜ただし」「〜に限る」「〜と仮定する」などの文言に注意しなければ、正答率は上がらない。
文章を“問題の一部”として読む訓練を、過去問や模試で意識的に行おう。国語力と科学的思考力が融合して初めて、共通テスト生物における高得点が可能となる。
■第2章:概念の論理的整理
【1】“単語”を覚えるのではなく“つながり”を覚える
たとえば「細胞小器官」という分野では、ミトコンドリア、リボソーム、ゴルジ体などの名称を丸暗記するだけでは不十分だ。それらがどのように相互に関わり、どの順序で情報や物質を処理しているかという“流れ”を把握しておくことで、応用問題にも柔軟に対応できる。
【2】因果関係で整理する
「○○が増えると××が起きる」というように、生物では多くの現象が因果関係で説明される。たとえばホルモンの単元では、視床下部が下垂体に命令を出し、それが末梢の内分泌器官を刺激するという“階層構造”を理解することが大切である。
これらの関係性をフローチャートや因果マップなどで整理しておくと、複数の情報を同時に扱う問題にも強くなる。
【3】頻出テーマを重点的に論理整理
共通テストでは、遺伝、生態、細胞、酵素、恒常性といった分野が特によく出題される。これらの分野は“流れ”と“条件分岐”が多く、論理的な整理が得点に直結する。
たとえば遺伝分野では、「対立遺伝子の組み合わせ → 表現型 → 検定交雑の結果予想」といった思考プロセスが明確に存在する。練習の段階から、この流れを意識して図に書き出す癖をつけよう。
【4】用語の定義を“操作に落とし込む”
たとえば「浸透圧」という言葉を聞いたとき、「水が移動する力」と答えるのは知識の確認としては正しいが、それを「どのような場面でどの方向に水が動くか」「どんな細胞に影響があるか」という操作レベルに落とし込めてこそ、実戦で使える理解になる。
第3章:実戦演習と見直しの技術
【1】問題演習は“理由づけ”まで必ず行う
ただ正解するだけでは足りない。間違えた問題はもちろん、正解した問題でも「なぜこの選択肢が正しく、他が違うのか」を言語化することで、知識と論理の定着が進む。
【2】記述式で解くトレーニングも有効
選択肢問題の対策だけでは思考力は十分に鍛えられない。時には、グラフを読み取って「結果から得られる考察を記述する」「仮説を立ててそれを説明する」といった練習を取り入れるとよい。
【3】実験考察問題はプロセスごと解き直す
単に正解するのではなく、「①目的 → ②方法 → ③予想される結果 → ④実際の結果 → ⑤考察」といったプロセス全体を辿る癖をつけるとよい。
【4】時間配分を意識した演習をする
本番では、複数の図表、複雑な設問文、設問数の多さによって、焦りやすくなる。だからこそ、過去問・予想問題を“時間制限付き”で解く練習が不可欠である。
【5】誤答の分析は「何が足りなかったか」で記録する
間違えた問題については、「知識不足」「図の読み違え」「条件の見落とし」など、原因を分類し、ノートやアプリで記録すると学習の質が上がる。
まとめ:思考と構造化が未来を切り開く
共通テストの生物で9割を取るためには、単に教科書の内容を覚えるだけでは不十分である。問われているのは「知識の量」ではなく、「知識の使い方」と「論理的な考察力」だ。
地道に積み上げた論理と理解がそのまま得点に直結する、非常に“努力が報われやすい”科目である。あなたの努力が、結果として実を結ぶことを心から願っている。