奨学金という名の借金 ―大学進学を決める前に親子で話し合うべき数字

五十嵐校長コラム

「奨学金=お得な支援」と思っていませんか?その先に待つ現実を、今日正直にお伝えします。

私、五十嵐が30年間この教育現場で見てきた中で、最も心を痛めることの一つが、奨学金返済に苦しむ卒業生たちの姿です。大学進学への憧れと現実のギャップに、多くの若者が直面しています。高校時代には「大学に行けばなんとかなる」と楽観的に考えていた生徒たちが、社会に出た途端に厳しい返済の現実に打ちのめされるケースを、私は何度も目の当たりにしてきました。

今回のコラムでは、奨学金を「借金」として正面から捉え、進学前に親子で必ず確認しておくべき数字と選択肢について、できるだけ具体的にお話しします。決して大学進学を否定するつもりはありません。しかし、正しい情報を持たずに進学を決めてしまうことのリスクを、皆さんにはしっかり理解していただきたいのです。

奨学金は「借金」である事実と向き合う

奨学金の多くは、れっきとした借金です。日本学生支援機構の貸与型奨学金を利用する学生の平均借入額は約300万円。これは卒業と同時に背負う「社会人生活のスタートライン」なのです。

「奨学金」という言葉の響きに惑わされてはいけません。英語圏では「scholarship」といえば返済不要の給付金を指しますが、日本の奨学金制度の大部分は「student loan」、つまり学生ローンそのものです。利子がつくタイプの第二種奨学金に至っては、金融機関からお金を借りるのとほぼ同じ構造です。

私の教え子の中にも、月々3万円の返済を20年間続ける子がいます。新卒の手取り20万円から3万円を引くと17万円。家賃、食費、光熱費を払えば、手元にいくら残るでしょうか。「あのとき、もっと真剣に考えておけばよかった」と、卒業して数年後に連絡をくれる教え子が少なくないのが現実です。

さらに注意すべきなのは、奨学金の返済を延滞した場合のペナルティです。延滞が3か月以上続くと、個人信用情報機関に登録される可能性があります。いわゆる「ブラックリスト」に載ってしまうと、クレジットカードの作成や住宅ローンの審査にも影響が及びます。22歳で社会人になったばかりの若者が、すでに信用情報に傷をつけてしまう。これがどれほど重いことか、想像してみてください。

現実のシミュレーション:数字で見る厳しさ

具体的な例を見てみましょう。私立大学4年間で奨学金300万円を借りた場合のシミュレーションです。

  • 月々の返済額:約1万4千円(20年返済の場合)
  • 新卒平均年収:約250万円(手取り約200万円)
  • 返済が月収に占める割合:約8%

一見「たった8%」と思うかもしれません。しかし、これが20年間続くのです。結婚、出産、住宅購入…人生の重要な局面で、常にこの返済が重くのしかかります。

もっとリアルに考えてみましょう

手取り月収20万円の新卒社会人が、一人暮らしをする場合の月々の支出を見てみます。

  • 家賃:6万円
  • 食費:3万5千円
  • 光熱費・通信費:2万円
  • 交通費:1万円
  • 保険・医療費:5千円
  • 日用品・衣服:1万円
  • 奨学金返済:1万4千円

合計で約15万4千円。残りは約4万6千円です。ここから交際費、趣味、自己投資、突然の出費に対応しなければなりません。貯金に回せるお金はほとんど残らないというのが現実です。

さらに深刻なのは、希望する職につけなかった場合です。非正規雇用や転職を繰り返すと、この返済はより一層厳しいものになります。厚生労働省の調査では、大学卒業後3年以内の離職率は約30%。つまり、3人に1人は最初の会社を辞めているのです。転職活動中に収入が途絶えれば、奨学金の返済はたちまち生活を圧迫します。

また、借入額が500万円を超えるケースも珍しくありません。私立大学の薬学部や医療系学部など、6年制の学部に進学した場合、奨学金の総額が600万円から800万円に膨れ上がることもあります。この場合の月々の返済額は3万円を超え、返済期間も20年以上に及ぶことがあります。

奨学金に頼る前に知っておくべき選択肢

借金としての奨学金を検討する前に、まず以下の選択肢を徹底的に調べてください。

1. 給付型奨学金(返済不要)

国の制度だけでなく、企業や財団の奨学金も多数存在します。成績優秀者だけでなく、特定の分野を志す学生向けもあります。2020年度からスタートした「高等教育の修学支援新制度」では、住民税非課税世帯やそれに準ずる世帯の学生に対して、授業料等の減免と給付型奨学金がセットで支給されます。この制度を知らないまま貸与型奨学金を借りている家庭が、実は少なくありません。

2. 授業料減免制度

多くの大学で、家計状況に応じた減免制度があります。私立大学でも半額免除を受けている学生は珍しくありません。大学によっては入学後の成績に応じて2年次以降の学費を減免する制度もあります。入学前に各大学の学生支援課に問い合わせることを強くお勧めします。

3. 特待生制度

入学試験の成績次第で、4年間の学費が大幅に安くなることもあります。偏差値が少し下の大学であっても、特待生として入学すれば学費負担を大幅に減らせるケースは多いです。「大学名のブランド」と「経済的な自由」のどちらを優先するか、冷静に考える必要があります。

4. 新聞奨学生・企業提携制度

新聞配達をしながら学費を賄う新聞奨学生制度や、特定の企業が将来の入社を条件に学費を支援する制度も存在します。生活は忙しくなりますが、卒業時に借金がゼロという大きなメリットがあります。

5. 地方自治体独自の支援制度

お住まいの市区町村や都道府県が独自に設けている奨学金や学費補助制度も見落としがちです。Uターン就職を条件に返済を免除する自治体もあります。地元の教育委員会や市役所の窓口で確認してみてください。

「大学名」と「コスパ」を冷静に考える

私がいつも生徒たちに問いかけるのは、「その大学で本当に300万円の価値を得られるか?」ということです。

有名私立大学に800万円かけて進学するか、国公立大学に250万円で進学するか。就職後の収入差を考えても、550万円の差を埋めるには相当な時間がかかります。

もちろん、お金だけが全てではありません。大学で得られる人脈、経験、専門知識は金額に換算できない価値を持つこともあります。しかし、それは本当にその大学でなければ得られないものでしょうか。国公立大学や学費の安い私立大学でも、素晴らしい教育環境を提供しているところはたくさんあります。

特にお伝えしたいのは、大学のブランド名だけで就職が決まる時代はとっくに終わっているということです。企業が求めているのは、大学名ではなく「その人が何を学び、何ができるのか」です。高い学費を払って有名大学に入っても、目的意識なく4年間を過ごしてしまえば、就職活動で苦戦することは珍しくありません。

逆に、明確な目標を持って地方の国公立大学で学び、専門性を磨いた学生が、大手企業から複数の内定を得るケースも数多く見てきました。借金を背負ってまで進学する価値があるかは、必ず親子で真剣に話し合ってください。

「進学しない」という選択肢も否定しない

これは非常にデリケートな話題ですが、あえて触れます。全ての人に大学進学が必要なわけではありません。

専門学校で実践的なスキルを身につけて就職する道、高卒で公務員試験に挑戦する道、職業訓練校を経て手に職をつける道。どれも立派な選択肢です。「大学に行かなければ人生終わり」という考え方は、もはや時代遅れです。

大切なのは、お子さん自身が「なぜ大学に行きたいのか」を明確に言語化できるかどうかです。「みんなが行くから」「なんとなく」では、300万円以上の借金を正当化する理由にはなりません。

今こそ家族で「お金の話」をしよう

「お金の話は汚い」「子どもには関係ない」そんな考えは捨てましょう。進学費用について家族で透明性を持って話し合うことは、お子さんの人生設計において極めて重要です。

家計の状況、奨学金の仕組み、卒業後の返済計画。これらを全て家族で共有し、現実的な進学プランを立てましょう。具体的には、以下の項目を親子で一緒に確認することをお勧めします。

  1. 家庭として大学進学に充てられる資金の総額
  2. 志望校ごとの4年間の総費用(学費+生活費+教材費等)
  3. 不足分を奨学金で補う場合の借入額と月々の返済額
  4. 卒業後に想定される職種と年収の目安
  5. 返済が生活に与える具体的な影響

この5つの項目を紙に書き出して、実際の数字を入れてみてください。数字を「見える化」することで、漠然とした不安が具体的な判断材料に変わります。

私はこれまで数千人の生徒を見送ってきましたが、最も幸せそうな卒業生は、身の丈に合った進学をして、借金に縛られることなく自分らしい人生を歩んでいる子たちです。無理をして有名大学に入った子よりも、自分の経済状況を理解した上で堅実な選択をした子の方が、卒業後にいきいきとした人生を送っています。

スカイ予備校としてできること

スカイ予備校では、学力向上だけでなく、進学にまつわる経済的な相談にも対応しています。志望校選びの段階から、学費や奨学金の情報を含めた総合的なアドバイスを行っています。

「この大学に行きたいけれど、お金が心配」という悩みを一人で抱え込まないでください。私たちと一緒に、お子さんにとって最善の道を探しましょう。特待生を狙える大学の選定、給付型奨学金の申請サポート、費用対効果の高い進学プランの設計など、具体的なお手伝いが可能です。

大学進学は確かに素晴らしい経験です。しかし、その後の人生がより大切です。賢明な選択をして、希望に満ちた未来を手に入れてください。その第一歩が、今日から始まる家族での率直な対話なのです。

進学は人生の通過点であり、ゴールではありません。お金に振り回されるのではなく、お金を味方につけた進学を実現しましょう。スカイ予備校は、そのための知識と戦略を全力で提供します。

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