【推薦入試】都留文科大学 教養学部 地域社会学科(小論文過去問題解説)

推薦入試

記事の監修者:五十嵐弓益(いがらし ゆみます)

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都留文科大学 教養学部 地域社会学科の小論文対策

[令和5年度学校推薦型選抜(一般) 90分

設問 以下の課題文を読んで、あとの問いに答えなさい。なお、問いで指定された字数はいずれも句読点を含む字数である。

課題の要約文です。

「介護の社会化」の言説は、有償の介護労働を社会的に認識させるための戦略であり、90年代以降、この言説が日本の公的介護保険制度に影響を与えた。ただし、これが介護を十全に「労働」とみなすべきかは疑問であり、その労働性について考察が求められている。

言説の中で「介護の可視化」と同時に進行している「労働」の変容に注目し、介護労働の二重性を指摘している。介護には感情や態度の側面と労働の側面があり、これらの二重性は有償・無償を問わず存在している。アンペイドワークの場合、家族介護は内発的な愛情や気遣いに基づくものとされ、有償の場合でも同様の二重性が見受けられる。

有償の介護労働者は低賃金や労働条件の改善が求められつつも、ボランティア精神や福祉の心が強調され、専門職としての待遇が得られない現実が示されている。労働者は感情労働において、長期的な顧客との信頼関係を構築しながら、同時に雇用主との関係を維持する難しさに直面している。

介護労働者が感情労働として自らの感情と向き合い、同時に商品化のプレッシャーに対抗するためには、他の産業労働者とは異なるポジショニングが求められる。感情労働者は、労働を商品として扱うことが難しく、顧客との信頼関係を優先させることが強いられ、これが賃金や労働条件にも影響を与えている。

このように、介護労働は労働疎外を免れる特権性を持ちながらも、その特典がコストとして労働者に転化され、アイデンティティの構築に矛盾をもたらしている。感情労働に従事する者は、労働者としての階級的関係と対人サービス提供者としての関係によって不安定なポジションにあり、労使関係に顧客との関係が介在し、感情労働の特異性が現れている。

出典:渋谷望『魂の労働ネオリべラリズムの権力論』(青土社 2003年)より。出題にあたって原文の一部を改変した。

問1 下線部①について、「この二重性は依然として付きまとっている」とあるが、どういう意味か。課題文の記述を踏まえて、説明しなさい。(100字以内)

問2 下線部②について、筆者のいう「感情労働」とはどのような労働か。課題文の記述を踏まえて、説明しなさい。(100字以内)

問3 下線部③について、感情労働と産業労働との違いを説明し、それを踏まえたうえで、これからの介護労働のあり方について、あなたの意見を述べなさい。(600字以内)

ポイント

出題意図

課題分は渋谷望『魂の労働 ネオリベラリズムの権力論』(青土社、2003 年)の一部である。課題文は、介護労働の社会化について書かれたものである。日本は超高齢化社会を迎え、介護の問題が家族の問題から社会的な問題として介護を「労働」と捉え、家族だけではなく社会全体で取り組んでいかなければならない。しかし、介護が未だ一種の家事労働として考えられてしまう。その課題を「感情労働」という概念から産業労働と比較することによって、労働としての介護をあぶり出し、介護労働の社会化を訴えるものになっている。
設問は、現代の高齢化社会の重要な問題である介護を取り上げ、問1、問2において前後の文脈から読み取る読解力や要約力を問う。さらに問3において、上記の問題について、公民科でも扱う社会保障等の福祉の問題や労働問題、労働の疎外等の知識を駆使して、受験生の直面する社会問題に対する意見の論理力と自身の考えを提示する力を問う出題とした。
【評価のポイント】
問1
介護労働者に内包される「二重性」について、課題文の記述をふまえた説明を求める問題である。この二重性は、「対人関係的な愛情をともなった相互行為」と「単なる身体行為(労働)」を指し、その二つの要素が明確に区別されず、「ボランティア精神」や「福祉の心」へと翻訳され、労働としての側面が不可視化されてしまうことを記述することが求められる。それぞれのキーワードを適切にふまえることが評価において重要なポイントである。
問2
上記の二重性が内包された介護労働が共通性をもつ、「感情労働」とよばれる労働カテゴリーについて、課題文をふまえて的確に説明することを求める問題である。「感情労働」は、課題文中に記述されているように、「対面的な人間関係のなかで自己の感情管理を引き受ける労働」である。さらに、それを「商業的に利用する」こと、「日常生活全般における感情の自己管理と区別される」ことも重要なポイントである。

問3
この文章のキーポイントである感情労働と産業労働の違いを簡潔に説明したうえで、感情労働と産業労働のそれぞれの特徴を述べる。さらにそれぞれの長所と短所を明示して比較できると良い。それを踏まえて、介護の社会化の必要性を論じる。そして、最後に介護の社会化を果たすための自らの意見を論じられることが必要である。

【講評】

問1

課題文の前半の内容を理解し、上記のキーワードをふまえて解答した受験生が多かった。しかしなが

ら上記の二つの要素が「区別されない」、「労働としての側面が不可視化される」ことを明確に記述していなかった解答例もみられた。介護労働には、上記の二重性が「依然としてつきまとっている」という筆者の文意を正確にまとめた解答は多くなかった。
問2
課題文の中盤に記述されている内容の要約が中心となるが、上記のすべてのポイントをふまえた解答は少なかった。とくに「感情労働」が日常全般における感情の自己管理と区別されるという点について記述することは重要であったが、見落としてしまっていた回答がみられた。問1と同様に字数が限られている設問では、キーワードを並べるだけでなく、筆者の主張を端的にまとめる文章力が必要であった。
問3

評価のポイントでも示した通り、前段の「感情労働と産業労働の違いを簡潔に説明したうえで、感情労働と産業労働のそれぞれの特徴を述べる」ための文章の読み取りが不十分である解答が散見された。後段の「これからの介護労働のありかたについて、あなたの意見を述べなさい」とあるが、前段で述べたことを踏まえていない解答も多かった。介護の社会化という課題が感情労働という産業労働と比較して家事と混同され、労働としての社会的認知が未分化であるということが明確に読み取られていないことが原因のひとつであろう。後段は、決して独りよがりの意見や提案をせよということではなく、あくまでも与えられた文章を正確に読み取ったうえで、この文章における筆者の主張を踏まえての意見であるということを強調しておきたい。

都留文科大学の公開内容からの引用>

小論文過去問題解説


問1:課題文の中で「介護労働の二重性」として言及されている部分を探し、それに基づいて二重性の意味を説明する必要があります。介護労働において二重性が依然として付きまとっているとは、感情や態度といった人間関係の側面と、同時に労働としての側面が同居していることを指しています。この二重性が解消されずに残っていることが、介護労働の複雑さや特異性を示唆しています。

問2:課題文の中で「感情労働」として言及されている部分を見つけ、それに基づいて感情労働の意味を簡潔に説明する必要があります。感情労働は、労働者が他者との感情的な相互作用や人間関係を通じて、仕事を遂行する際に求められる労働のことを指しています。介護労働者は、顧客(介護を必要とする者)との信頼関係を築きながら、同時に雇用主との関係にもコミットすることが求められ、感情労働を行っています。

問3:感情労働と産業労働の違いを理解し、それを踏まえて将来の介護労働についての意見を述べる必要があります。感情労働は、他者との感情的な関わりが労働に直結する特殊な性質を持っています。産業労働との違いを考えながら、介護労働者の労働環境や待遇、社会的評価の向上などに焦点を当て、個人的な意見を慎重に展開することが求められます。

都留文科大学の所在地・アクセス

所在地アクセス
山梨県都留市田原3-8-1富士急行線「都留文科大学前駅」下車、徒歩5分

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都留文科大学の入試傾向

都留文科大学の入試傾向は、以下のような特徴があります。

都留文科大学の入試は、各学科ごとに異なる傾向があります。それぞれの学科では、異なる能力や知識が求められるため、対策も適切に選択する必要があります。

例えば、英文学科では英文読解力や英語表現力が重視されます。これに対処するためには、様々なジャンルの英文に触れ、リーディングスキルを向上させることが重要です。また、比較文化学科では政治・経済・社会に関する問題が出題され、論理的思考が必要です。これに対しては幅広い知識を身につけ、論理的な思考力を高めることが有益です。

国文学科では、現代文、古文、漢文の3つの分野から出題され、文学の理解と解釈が求められます。これに対処するには、日常的な読書や文学作品の鑑賞を通じて、豊かな言葉の理解を深めることが有益です。

国際教育学科では現代の社会問題に関する英文を理解し、論理的な英語表現力が必要です。これに対する対策としては、国際情勢や社会問題に関する幅広い知識を得つつ、論理的な英語表現を養うことが挙げられます。

学校教育学科や地域社会学科では小論文試験があり、文章の分析力や論理的な考察が問われます。これに対処するためには、幅広い教養や社会問題について理解を深め、文章力と論理的構成力を向上させることが必要です。

総じて、入試対策は単なる試験勉強だけでなく、幅広い知識と論理的思考力を養うことが不可欠です。日頃から積極的に学び、自分の考えを明確に表現できる力を養っておくことが、都留文科大学の入試での成功につながります。

都留文科大学の募集コース

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文学部(定員数:240人)

国文学科 (定員数:120人)

国文学第一演習IV(近世)で近世文学の多様性に触れる

近世文学とは基本的に江戸時代の文学を指します。国文学第一演習(近世)では、井原西鶴らによる連句『俳諧虎渓の橋』および竹田出雲等作の浄瑠璃『菅原伝授手習鑑』『寺子屋』の丁寧な注釈作業を通じて、近世文学作品研究のために必要な知識、調査の手順を身につけます。

英文学科 (定員数:120人)

World Englishes I・IIで各国独自の英語を理解する力を身につける

英語の歴史、現在の使用の状況、世界全体での変種の広がりなどについて知り、英語という言語を体系的に学びます。母国話者(英語を母国語とする人)を対象として書かれた資料を読み、「標準」英語とは何か、「母国話者」とは誰か、という根幹的な議論を行い、英語が主要な世界語とされる考えについても分析します。

教養学部(定員数:490人)

学校教育学科 (定員数:180人)

「教育原理」は学校教育学科の必修科目で、1年生全員が前期・後期にわかれて受講します。教育史に関する資料を自分で読み取り、解釈することを大切にしています。ロックやルソーなどの思想家がどう社会のあり方と関わり教育のあり方を構想したか、という視点で彼らの思想に改めて出会うことも授業の面白さのひとつです。

地域社会学科 (定員数:150人)

アクティブラーニングで4つの力を鍛錬する

さまざまな人々と一緒になって問題解決に向けて活動するためには、地域理解力、構想力、行動力、そして協働力が必要です。確かな力を育むため、1年次から実践的能力を重視し、グループディスカッションやディベートなど、アクティブラーニングも積極的に導入しています。

演習(自治体経営論)I~IVで地域の現状を自分の目で見て、課題と解決策を考え、実践につなげる

少子高齢化・人口減少が進む地方で持続可能な社会を築くためには、これまでの公と民のあり方を見直し、互いに連携し合って、私たち一人ひとりが社会へ主体的に参画していくことが必要です。「演習(自治体経営論)」では、対象となる地域を訪れ、自治体や市民と連携して実践していきます。

比較文化学科 (定員数:120人)

「共生社会論」では異なる文化の出会いの場を意味する「コンタクトゾーン」に着目し、異文化に属する人々が互いの存在を「了解」することがいかに可能かを、特に移民・外国人の視点から考えます。多文化共生がどのようなことを意味するのか、米国・ロサンゼルスの日系人移民社会や日本とブラジルの交流史などを学びます。

国際教育学科 (定員数:40人) 

「ATL」とは国際バカロレアの中で使われる用語であり、「21世紀スキル」と呼ばれるような、コンピテンシーや社会性スキルを、いかに教科教育の中にしみ込ませ、子どもたちに教えていくかというティーチングのノウハウを学ぶ授業です。アクティブラーニングを活用しながら様々なスキルを向上させるための授業を学びます。

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