「共通テストの古文で高得点をとるためにやるべきこと」(全10回)の第9回は、和歌を読むについて書きたいと思います。
記事の監修者:五十嵐弓益(いがらし ゆみます)
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第9回 和歌を読む
いよいよ、古文最後の難関、和歌の読解についてです。和歌の読解に苦手意識をもっている受験生は少なくないでしょう。
まずは、和歌に関する修辞について学んでいきましょう。
1、枕詞
ある語を導くために用いられる修辞の句のこと。主として五音からなる。現代語訳しない。
〈例1〉あしびきの山鳥の尾のしだり尾の長々し夜をひとりかも寝む
「あしび(ひ)きの」→「山」を導く
〈例2〉春過ぎて夏来にけらししろたへの衣ほすてふ天の香具山
「しろたへの」→「衣」を導く
2、序詞
ある語を呼びおこすためにその語の前に述べることばで、主として七音以上からなる。即興的な連想ゲームに近い性質をもつ。原則現代語訳する。①「~のように」、②「~その~ではないが」と訳すことが多い。
〈例1〉比喩的なパターン
あしびきの山鳥の尾のしだり尾の長々し夜をひとりかも寝む
(訳)(独り寝をするという)山鳥の長く垂れ下がった尾のように長い秋の夜を、一人寂しく寝ることになるのか
「あしびきの山鳥の尾のしだり尾の」といえば「長い」という連想による。「あしびきの山鳥の尾のしだり尾の」が序詞に該当する。
〈例2〉同じ音の連続から連想するパターン
時鳥鳴くや五月のあやめ草あやめも知らぬ恋もするかな
(訳)ホトトギスが鳴く五月に菖蒲(あやめ)が咲いた、その「あやめ」ではないが、私は物の分別も分からなくなるほど、夢中な恋もすることよ。
「時鳥鳴くや五月のあやめ草」が「あやめ(文目)」につながる。
〈例3〉掛詞によるパターン
風吹けば沖つ白波たつた山夜半にや君がひとり越ゆらむ
(訳)風が吹くと沖の白波が立つ、その立つではないが、たつた山をこの夜中にあなたは一人で越えているのだろうか。
「風吹けば沖つ白波」が「立つ」を連想させ、そこから地名の「龍田山」を掛詞によって導いている。
3、掛詞
同音異義を利用して一つのことばに二つ以上の意味を持たせる技巧。原則現代語訳する。
〈例1〉花の色はうつりにけりないたづらに我が身世にふるながめせしまに
「ふる」=「降る」「経る」、「ながめ」=「長雨」「眺め」
〈例2〉山里は冬ぞさびしさまさりける人目も草もかれぬと思へば
「かれ」=「離れ」「枯れ」
4、縁語
意味のうえで関係の深い語を用い、連想によって面白みをもたせる技巧。現代語訳しない。
〈例1〉山里は冬ぞさびしさまさりける人目も草もかれぬと思へば
「草」の縁語は、「かれ(枯れ)」である。
〈例2〉あづさ弓春たちしより年月の射るがごとくも思ほゆるかな
「弓」の縁語は「春」と「射る」である。(「春」は「張る」と同音なので縁語になったと推測される)
5、本歌取り
昔の有名な和歌からことばや趣向を取り入れることで、歌の情趣をより一層深める技巧。
〈例〉玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることのよわりもぞする
本歌は、「たえはてばたえてはてぬべし玉の緒にきみならんとは思ひかけきや」
6、折り句
ある物の名前を各句の頭に置く技巧。
〈例〉唐衣きつつなれにしつましあればはるばるきぬる旅をしぞ思ふ
各句の頭は「か・き・つ・は・た(かきつばた)」である。
7、物の名(隠し題)
和歌の意味とは無関係に物の名前を詠み込む技巧。
〈例〉仕うまつる男、長月許に梅のつくり枝に雉をつけて奉るとて、
わがたのむ君がためにと折る花は時しもわかぬものにぞありける
とよみて奉りたりければ、
「時しも」の「ときしも」に「雉」が隠れています。
修辞技巧の紹介は以上です。序詞・掛詞は現代語訳にダイレクトに影響しますので、ぜひ場数を踏んでください。それでは実際に、和歌の解釈の手順です。
①品詞分解をする
②現代語訳
③適宜ことばを補う どこかで見た手順ですね。第7・8回の記事で紹介したものと全く同じです。ただ、和歌は掛詞と③の処理が大変なのです。苦手意識をもたず、まずはしっかりと直訳をつくるところからはじめましょう!