3浪の果てに気づいた「たった一つの真実」―Bさんが最後に変えたこと

3浪の果てに気づいた「たった一つの真実」―Bさんが最後に変えたこと 五十嵐校長コラム

「校長先生、俺、もう終わりですよね」

Bさんが私の前に座ったのは、3度目の不合格通知を受け取った翌週のことだった。目の下には濃いくまがあり、声には力がなかった。机の上に置かれた手は、かすかに震えていた。

私はしばらく何も言わなかった。27年間この仕事をしていると、この沈黙の使い方がいかに大切かがわかってくる。焦って言葉を埋めると、本当に伝えなければならないことが届かなくなる。

Bさんは、地方の国立大学の医学部を目指していた。現役、1浪、2浪と受け続け、そして3浪目もまた結果は出なかった。家族の期待、周囲の目、そして何より自分自身への失望。それらが積み重なって、彼を押しつぶそうとしていた。

「努力していないわけじゃない」という地獄

Bさんが特別に勉強していなかったわけではない。毎日10時間以上机に向かい、問題集は何冊も使い込んでいた。模試の偏差値も、決して低くはなかった。それなのに、結果が出ない。

これが最も残酷な状況だと私は思う。「努力が足りない」と言われれば、まだ納得できる。しかしBさんの場合は違った。やるべきことをやっている。それでも届かない。この矛盾が彼を内側から蝕んでいた。

「模試ではB判定まで出るんです。でも本番になると崩れる。毎年同じことが起きる」

私はその言葉を聞いて、ある確信を持った。これは学力の問題ではない。

私が見抜いた「本当の問題」

Bさんと話し込んでいくうちに、一つのパターンが浮かび上がってきた。彼は受験本番の前夜、必ず「最悪のシナリオ」を頭の中で繰り返していた。「また落ちたら家族になんて言えばいい」「4浪になったら就職はどうなる」「そもそも自分に医師が務まるのか」。

試験当日の朝、会場に向かう電車の中でも、その思考は止まらなかった。問題用紙を開く前から、すでに頭の中は「失敗後の世界」で埋め尽くされていた。

27年間で見てきた現場だからこそ断言できます。成績が伸びているのに本番で崩れる受験生の多くは、「思考の使い方」を間違えている。知識は十分にある。しかしその知識を引き出すべき瞬間に、脳が別のことで占領されている。

Bさんに足りなかったのは勉強量ではなかった。「今、ここにいる」という感覚だった。

転機は「一枚の紙」だった

4浪目に入ったBさんに、私は一つだけお願いをした。

「今日から毎朝、紙に一行だけ書いてください。『今日の自分にできることを、今日やる』と」

Bさんは怪訝な顔をした。そんなことで変わるはずがない、という顔だった。私はその表情を見て、少し嬉しくなった。懐疑的であるということは、まだ本気で考えている証拠だからだ。

「これは気休めじゃありません。訓練です」と私は続けた。「毎朝この一行を書くことで、あなたの意識を『未来の不安』から『今日という現実』に引き戻す。それだけでいい」

最初の一ヶ月、Bさんは半信半疑でそれを続けた。しかし2ヶ月目に入ったある日、彼から連絡が来た。「なんか、問題を解くときに集中できるようになってきた気がします」

気がする、ではない。実際にそうなっていた。その月の模試で、彼の得点は過去最高を記録した。

本番、Bさんに何が起きたか

4浪目の入試当日、Bさんは試験会場に向かう前に私にメッセージを送ってきた。

「今日の自分にできることを、今日やります」

たった一行。しかし私はそのメッセージを読んで、胸が熱くなった。この子は変わった、と直感した。

結果は合格だった。目標としていた地方国立大学の医学部ではなく、同じ国立大学の別の学部への合格ではあったが、Bさんはそれを「自分の答え」として受け入れた。「医師になることよりも、今の自分にできることをやり切ることの方が大事だとわかった」と彼は言った。

私はこの言葉を聞いて、長年この仕事をしてきた意味を改めて感じた。

逆説:3浪は「時間の無駄」ではありません。「本質に気づくまでの時間」なだけです

世間は3浪、4浪という経歴を「失敗」として見る。しかし私はそう思わない。

Bさんが3浪を経て学んだことは、どんな教科書にも書いていない。「自分の思考をコントロールする」という能力は、受験の場だけでなく、医療現場でも、人生のあらゆる局面でも必ず生きる。彼が医師を目指した理由の根っこにあったもの——人の役に立ちたいという気持ち——は、別の形で実現されていく。

浪人は失敗ではありません。「まだ気づいていないことがある」というサインなだけです。

もう一人、別の生徒の話をさせてほしい。Cさんは2浪の末にある国立大学の工学部に合格した女性だが、彼女の転機もまた「勉強法の変更」ではなかった。彼女が変えたのは、「誰と話すか」だった。それまで一人で抱え込んでいた不安を、初めて私に話してくれた日から、彼女の成績は上がり始めた。

孤独な受験は、人を消耗させる。知識ではなく、精神が先に限界を迎える。Cさんはそれを体で知っていた。

最後に、あなたへ

今この記事を読んでいるあなたが、浪人中であれば、一つだけ聞いてほしいことがある。

「あなたは今、どこを見ていますか?」

合格発表の日のことを考えているか。落ちたときの言い訳を考えているか。それとも、今日解くべき問題に向き合っているか。

Bさんが最後に変えたのは、参考書でも勉強時間でもなかった。「意識を今に置く」という、たったそれだけのことだった。しかしそのたった一つが、3年間届かなかった扉を開けた。

スカイ予備校では、学力だけでなく「受験生としての思考の使い方」まで一緒に考えていきます。もし今、成績は出ているのに本番で崩れるという悩みを抱えているなら、一度話しに来てください。あなたの話を、まず聞かせてください。

【五十嵐より追記】
(この記事を読んで思い出したこと、追加で伝えたいことをここに記入してください)
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